たいやき姫のひとり旅

アニメ感想など…

響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章 前編(その2)

ネタバレ全開ですので、閲覧ご注意ください。

はじめに

ユーフォ小説の第二楽章前編を読み直して、改めてこの作品の面白さをしみじみ実感。

第二楽章後編の発売は10月5日。その前に、前編を読み直して、感想、考察、後編の予想などの気持ちを一旦整理しておきたい。

アニメに引けを取らない、登場人物の内面描写と掛け合いの面白さ

私は、ユーフォはアニメオンリーでした。しかし、第二楽章にとうとうアニメを待てず、初めてユーフォの小説を読みました。

正直に言うと、アニメの情報量の多さに慣れていたため、小説ではその密度感は出せるのかな?という疑念があった。

実際に小説を読んでみると、感情の高ぶりやその場の空気が、丁寧かつ的確に文字で表現されている。そして、リアルタイムに克明に小気味好いテンポで場面場面が進む。通して読み終わってみると、かなりのキャラの思いが、アニメにも劣らないほどの密度の情報量で溢れ出していた、という感じでした。

特に久美子という視点で対峙するキャラがプロファイリングされ、それまでの行動・振る舞いが見事に論理的に説明されていく。その過程が気持ち良い。

また、久美子が対話する相手とのやりとりは、リアルタイム性を持った掛け合いで、どんな言葉が最適か考えたり、時に間髪入れずに攻撃的に言葉を発したり。そのやりとりは一つ間違えば相手を傷つけたり、こちらが見下されたり、取り返しのつかない致命的な失敗に繋がる可能性を含んでいる。

このドキドキ感、ハラハラ感は、例えるならカンフー映画の格闘シーンの様なもので、この真剣な対話のやり取りこそが、ユーフォ小説の醍醐味だと思う。

様々なキャラは、それぞれの性格を持ち、それぞれの行動は理解できるもの。(一部のキャラはその行動原理をわざと謎にしていると思われますが)その意味で、武田先生は恐ろしく人間観察に優れた人では無いかと思いました。

第二楽章前編を読みながら、こんな事を感じていました。

各キャラごとの感想・考察・予想

月永求

彼の伏線回収は全て後編に持ち越された。ざっと箇条書きするとこんな感じ。

  • 「月永」と呼ばれる事を嫌がる
  • まるで美少女みたいな小柄な美少年
  • 男らしくなりたい、見られたい
  • 聖龍中学出身
    • 聖龍中一年の時に「リズと青い鳥」を演奏した経験あるがボロボロ
    • マーチングの際はガード、旗、それ以外の何かをやっていた
    • コンバスは独学
  • 聖龍学園
    • 昨年度、聖龍学園吹奏楽部に新しい先生が二人、特別顧問は「源ちゃん先生」
    • 聖龍学園吹奏楽部の雰囲気は和気あいあい
  • 姉が好き
  • 奏とは仲が悪い

求の問題と言うのは、緑輝以外の人に無気力無関心な事だろうか。緑輝依存度が高い。

求はなぜ、吹奏楽を、コンバスを続けているのか?

中学時代からコンバスを選んでいたのは、小さで華奢な体に対からくる男らしく見られたいコンプレックスからか? 男らしく見られたいのは、もしかしたら男兄弟がおらず美少女扱いで周囲がちやほやする事を疎ましく思ったから?(全くの妄想です)

何度もキーワードが出てくる聖龍学園の源ちゃん先生。求の北宇治転校と無関係とは思えません。名前から察するに男性だと思われますが、敢えてちゃん付けで苗字を隠しているところから苗字は「月永」と想像、厳しい面も持ちつつ全体的には優しい実力のある人気者の先生なのでしょう。身内が居たくらいで転校はしないと思いますが、よっぽど反発して飛び出したのか?

それから、「月永」が音楽の名門家なら、求がコンバスを独学で弾く理由が分かりません。この辺りは現段階では不明。

求はサンフェスで聖龍学園の様子を見に行ってるところから想像すると、聖龍学園の知り合いに会いに行ったのでしょう。なので昔の吹部仲間とは上手くやれて居たのではないかと想像。

いずれにせよ、求のコンバスが続けているのは、「姉」がキーワードだと思われますが、現時点では詳細は不明です。

ところで、緑輝は「月永」の事をある程度知って居る様に思います、それも結構なところまで。「月永」が音楽の名門なら源ちゃん先生についても知ってて不思議はありません。それから、もし求の姉の年が近いなら、聖女中の生徒で面識があった可能性があるかも。

求は緑輝の事を恋愛対象としては見ていないときっぱり言っています。緑輝も音楽最優先なので、その様には見ていないと思われます。でも、緑輝も女子ですので、何らかのきっかけで求の事を惚れてしまうと言うほろ苦い展開もほんの少しだけ期待しています。まぁ、後編はそれ以外の伏線が盛りだくさんなので、そんな所を膨らませる余裕はあまり無いとは理解していますが。

今のところ、求については伏線があるにも関わらず、確実な所は少ない。後編での、求、源ちゃん先生、姉、緑輝の4人の関係に注目です。

小日向夢

引っ込み思案で前に出ない性格を変えたい、と思わせる夢。

その気持ちが中学時代のショートカットから現在の片側三つ編みの髪型の変化にも現れているのかも知れない。

北中時代に夢は久美子に少なからず自分と重なる所を感じていたのでしょう。昨年度、久美子が全国大会の演奏で自信に満ちて演奏する姿に、変われる可能性を感じたのだと想像。

演奏技術が確かなら、自信を持てるはずなのになぜ自信なさげなのか?他人に遠慮する性分なのか?なら、なぜ、その性分から変わりたいのか?

夢と対象位置に存在するキャラが麗奈。自信に満ち溢れている。衝突か?助け舟か?また、この時の久美子の立ち位置はどうか?何らかがあると思いますが、この辺りはまだまだ不明。

前編でネタを仕込んでいる以上、後編で何もないはずはなく、何らかのドラマは確実にあると思います。

ここは、夢、麗奈、久美子の関係ですかね。

鎧塚みぞれと傘木希美

みぞれのオーボエは北宇治吹部の要。みぞれと希美の問題は北宇治吹部の問題。

この二人を見ていると、どうしてお互いに相手の事を思いやらないのか?自分本位なのだろうか?という風に描かれる。

みぞれは希美だけが友達、希美と一緒に居られればそれでいい。吹奏楽は希美と一緒にいるための理由でしかない。ここに希美の幸せを思う気持ちは無い。

希美は相手に対する気遣いが無い。相手の気持ちになって考える事がない。無自覚というにはあまりにも乱暴なくらいに。

今回、希美の感情で明確に分かったのは、新山先生の音大進学バックアップに関してのみぞれに対する嫉妬心。そして希美の音大に行くという発言を追っかける形でみぞれの「私も」を聞き「えっ」と言った時、自身がみぞれに影響与えている事の自覚の無さを浮き彫りに。

希美はみぞれが居なくても生きて行けるが、みぞれは希美が居なければ生きていけない。

全国大会終わるまで、二人とも順調に音大への駒を進められれば、北宇治吹部は安泰ではあるが、必ず何らかの問題になるのだと思う。希美の学力が不足してて音大を諦めるとか。その時のみぞれへの対応があまりに辛辣で二人の関係が最悪になるとか。ある程度の妄想はあるけど、そんな簡単じゃ無いように思う。

しかも、その場合、どのようにみぞれと希美の問題を収集するのか?

本質的には、久美子と麗奈のように相手を思いやる気持ちが大切だと思うが、みぞれと希美の問題は、それに気づかなければ、一生治らない病気だと思う。

「リズの青い鳥」に習うなら、リズ=希美が、青い鳥=みぞれを突き放して独り立ちさせるという流れになるが、その心境に希美が達するのに何が必要なのか?優子部長がけしかけるのか?それとも、オーボエの後輩の梨々香が飛び道具を出すのか?久美子の相手の弱点に対しての畳み掛け攻撃なのか?

いずれにせよ、後編の表紙を飾るこの二人、台風の目なのは間違いないけど、決着方法が検討もつかない。

その意味で、後編はとても楽しみ。

久石奏

奏の問題は、前後編の配分から考えると、前編で殆ど決着している様にも思えてきた。

ただし、「利己的なふり」をする、自分をよく見せる性格の根本は変わっていない。前編では夏紀先輩とのわだかまりは久美子の「頑張ってる」の言葉で消えたとしても。その辺りの癖のあるキャラの味は後編でも存分に発揮して欲しい、と願ってる。

印象に残ったのはオーディション前日にファミレスで久美子と一緒にジャンボパフェを食べるシーン。

久美子がストローの袋を蝶々結びにして奏で渡すシーンは、会話の応酬をビジュアル化したものだと思うが、対して奏が出してきたさくらんぼのヘタを口の中で蝶々結びして出すシーンと言うのが、奏の負けず嫌い感が出ていて面白かった。

そしてこのとき、まだ奏はオーディションで手抜きする事は明確に判断して居なかったように思う。でも、久美子の「夏紀先輩と仲良くなってほしい」の言葉にどんどん混沌としてゆく。奏と久美子がどんどん食べ進めるにつれぐしゃぐしゃに混ざってゆくパフェの色は、奏の混乱する心に重なる演出だと思えた。彼女はこの後、悩んで八百長を決めたのだと思う。

後でわかる奏の対応。久美子の言葉が後輩を追い込む、と言う怖さ。普段はチクチクと毒を吐く事もあるけど、奏でもまた、悩みを抱える可愛い後輩だったと言う事。一読後に改めて分かるそうした心情が一層味わい深いものに感じた。

剣崎梨々香

奏と梨々香の関係が気になっている。互いに軽口を聞いて親友という。その実、実際に互いに好いていて互いに思っている感じがあるのが面白い。

梨々香が中川先輩の事をどう思いますか?と久美子に聞いたのも、奏のわだかまりをほぐすためのものだったかも知れない。聞いた所で直接解決に結びつくかは分からないが、久美子に対するシグナルだったのかも。梨々香は意外と人の事を見ているし、そう考えると思った以上に思いやりのある人間かも、と思わせる。

いずれにせよ、一年生の中で影響力のある二人という事で、久美子も一年生に対する情報提供する心強い部下としての活躍に期待。

そういえば、梨々香のオーディション結果はどうだったのか?Aか?Bか?自由曲の「リズの青い鳥」はオーボエ要な所もあり、オーボエ2名の可能性もあるかも、とも思ったが、普通に考えればBチームか。

後編での、梨々香とみぞれのやり取りが見られるか?その辺りも楽しみ。

加部友恵

加部ちゃん先輩は、良いシーンが多かった。

友恵は決して人前で泣き言を言わない。絶えず明るく振る舞う。

でも、階段踊り場で、久美子の手を握り「念を送った」あのシーンだけは、自分の悔しい思いと、久美子の気遣い有難うの感謝を込めたのだと勝手に思ってる。最後まで泣き言は言わなかったけど、そう感じた。このシーンは前編で二番目好きなシーンです。

少なくとも滝先生と久美子と優子部長は友恵の顎間接症の事を知っていると思うが、夏紀は友恵の病気の事を知っていたのだろうか?明確に知っている描写はなかったと思う。

夏紀の男前っぷりは相変わらず気持ちが良いが、私が支えたいのは優子だけじゃない、という友恵の台詞がカッコ良過ぎた。このシーンが前編で一番好きなシーンです。

前編のクライマックスは、奏で夏紀のオーディション直後の言い合いのシーンだと思うが、個人的には、こちらの友恵のシーンで泣き過ぎるくらいに良かった。

加部ちゃん先輩最高。

高坂麗奈

あがた祭りの大吉山の演奏シーンが印象的だった。

昨年度は白いワンピースで久美子と初めて気持ちが結ばれた。いわば結婚式。

今年は久美子は秀一と二人であがた祭りに遊びに行った。そして今年は黒のワンピース。この対比で普通に葬式を連想した。麗奈という人間はこういう気持ちや形には拘るタイプだと思う。

麗奈は久美子が麗奈の家に来るとは本気では思っていなかったと言った。これは、久美子が秀一に取れれてしまう事をイメージしていたのか?そして久美子が大吉山に現れた時に秀一に「借りができた」と独り言を言った。

そして、話題は将来の話になり、プロを目指す事で久美子と離れ離れになる不安をぶちまけた。

そう考えると、もしかしたら麗奈の旅立ちは卒業を待たず、すぐにでも訪れる問題なのかもしれない。それこそ全国大会を待たずしてとか。

ここでも、「リズと青い鳥」の話が絡む。

久美子を秀一に譲るという意味では、リズが麗奈で青い鳥が久美子。麗奈が久美子を縛り、久美子を集団である秀一の元に戻す話。

それとは逆に久美子は、少し前までは久美子が友達として麗奈を独占していた、という意味では、リズが久美子で、青い鳥が麗奈。麗奈はいろんな友達を作り、プロの道を目指し、羽ばたく。

どちらも、部分的に物語に当てはまると思う。

久美子が「リズの青い鳥」の第3楽章の「愛ゆえの決断」を麗奈にリクエストしたのは、どこまで理解していたのか?演奏した麗奈は、久美子との別れも辞さないつもりで吹いたのか?麗奈の力強い演奏は、いろんな可能性を想像させる、余韻を残すシーンだと思った。

久美子の麗奈離れ、麗奈の久美子離れ。第二楽章ではみぞれ、希美の問題と重ね合わせられるように、久美子と麗奈の関係にも触れられるのかも知れない。

最後に

とりあえず、今思っている事は、全て吐き出した。

10月5日の後編発売、とても楽しみに過ごします。待ち遠しい。

以上