たいやき姫のひとり旅

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響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章 後編

ネタバレ全開です。閲覧ご注意ください。

総括

後編では、オーディション以後、京都府大会、お盆休み、合宿、関西大会、そしてその後の文化祭、植物園での演奏会を経て、最後に来年度に向けてのチーム黄前発足までを駆け抜けた。

みぞれの希美離れ、まさかの関西大会ダメ金、そして、麗奈→久美子←秀一の構図がそのまま北宇治吹部の新体制になった、その1ページ1ページを味わいながら読めた。

前編では泣けたのに、不思議と後編では涙は出なかった。久美子が関西大会のダメ金で泣かなかったのと同様に、私もドライに受け止めてた。(2度目に読むと泣いているかもしれないけど)

そして、来年度の北宇治吹部を任された二つ返事でOKした久美子の覚悟と、両脇を固める秀一、麗奈の来年度の活躍も妄想できる余韻を含めて、心地よく読み終える事ができた。

ブレず迷わず一直線な麗奈

今回の麗奈はいくつもカッコいい所あった。

合宿の夜、希美の演奏と息が合ってない!みぞれにもっと最高の演奏を聞きたい!、と訴えるところ、震えた。

後、夢をファーストに持ってくるべき、と主張し優子部長に食いつくシーンとか。

久美子じゃ無いけど、麗奈は1年前と比べて変わった。前は他の人や他のパートの事も含めて吹部の事を最高にしようとは考えてなかった。何せ、自分は特別でありたい!だったから。

それが、先輩達や優子やいろんな人にふれ、滝先生の悲願でもある全国大会金賞に向けて、他人を巻き込んで邁進している。

それから、水着を選ぶとき、躊躇しないで即断即決がカッコ良いとか。

いきなり、ベン図を書いて久美子に友情と恋愛の説明をしだすシーンや、パトロンの話をする際は、お勉強もしてるのよ、的な雰囲気とか。

そんな、麗奈の姿をみて、いちいち、良いな、惚れるな、と思った。

根気強く待ち続ける秀一

秀一の相手のペースに合わせる忍耐強さ、というのは表彰物だと思う。

久美子だけでなく、他の人間関係に置いても、この忍耐強さを発揮して信用を得ているのだろう。

優しすぎて忍耐強い。

そんな、秀一の姿を見て、男前すぎるな、惚れるな、と思った。

麗奈と秀一が、あまり親しく無い、というのも来年度の新体制を考える上で、ちょっと面白い、と思った。

慎重で丁寧な対応の久美子

後輩指導などの際に見せる、久美子の対話の慎重さが好きである。一つ間違えると、悪い結果になってしまうので、間違えないように、考えながら進める。

今回、久美子は麗奈が数学で割り切れるところを、感情で割り切れない、としたシーンがあった。

一般的に言えば、麗奈が男性的で理系、久美子が女性的で文系なイメージか。

久美子のそうした普通な部分が、ニュートラルな感じが、良いな、と思いながら読み進めてた。

特別な強さを持つ人間では無い、等身大の主人公。

次年度の吹部新体制

来年度は部長が久美子、副部長が秀一、ドラムメジャーが麗奈。

麗奈→久美子←秀一の構図は、普段の久美子に重なる。前編であがた祭りの日、秀一とデートし、その後、大吉山で麗奈のトランペットを聞いた。

秀一が久美子をサポートするのは、まぁ当たり前なんだけど、2年生になって久美子が麗奈の世話を焼くことは少なくなっているように思う。逆に麗奈が久美子の手助けをしている。京都駅のベン図の下りとか。

もう、久美子の世話も、北宇治吹部の世話も、公私共々、秀一と麗奈によろしくという感じ。なんか、もう、これだけでニヤニヤしてしまう。頑張れ、久美子。

それにしても、優子部長が麗奈をドラムメジャーに押すのは良くわかる。しかし、秀一の人選に関しては、優子も夏紀も基本的に久美子の彼氏と知っての人選だったのか?いや、知ってるに違いないのだが、劇中そのような気配を出さずに来ていたので、お見通しな部長副部長コンビに脱帽という感じ。

台風の目、みぞれと希美

昨年度から繋がるみぞれと希美の問題。

希美と一緒に居られればそれでいい。希美が居ないと死んでしまう、と言わんばかりのみぞれ。

みぞれの希美離れは描かれるべきと思い続けて来て、後編でついにその核心に触れた。

初めての自己主張、大好きのハグ

前編でもさつきと美玲がやっていた、南中の大好きのハグ。みぞれは昔からそれが嫌いだったのに、最後に自分で自分の殻を破って、希美に大好きのハグをした。

今まで希美のいう通りに振舞って来たみぞれの初めての自己主張。希美からの脱却の第一歩。

そして、その希美離れの現場には、久美子、夏紀、優子、(と麗奈)が証人として立ち会った。

まだ、完全に巣立ったわけではない。でも、確実に一歩を踏み出した。その安心感が、みぞれファンとしては嬉しい。

興味深いのは、希美の事を信用できない、と言ってたところ。心を支配されているのに、信用はできない。それは、いつ目の前から居なくなるか不安だから。完全に自覚ある依存症なのに、その事に対する疑念も対処もない。彼女は常に与えられて生きて来たのか?だからこその、自分で踏み出す第一歩の意義は大きい。

個人的には、もっと激しくぶつかり合い、大泣きして滅茶滅茶になる破壊の後の構築みたいな展開を予想しちたが、実際には実にしっとり、スッキリした感じで希美離れを描いて来たが、上記の内容で十分、納得できる展開だと思った。

希美が好き、みぞれのオーボエが好き

今まで、思考回路不明なキャラとして描かれて来た希美。

みぞれにとっては希美は特別。希美にとってみぞれは大勢いるうちの友達の一人。一年前、みぞれの前から姿を消してみぞれが拒否症になったのも知らず、ふらふらと吹部に戻って来てみぞれのメンタルに穴を開けそうになった希美の行動に、無自覚の恐怖とされて居た。

しかし、今回の後編で、希美の性格が描かれてたのが良かった。

みぞれの思いの強さは、希美にとってはあまり重要じゃなかった。目の前の子が寂しそうにしてたから、話しかけた。こういう所は素直な子。

最終的にはみぞれの才能に嫉妬した。

音大に一緒に行く約束をしたのに、自分一人でその約束を破った。最初は、単純な憧れだったけど、現実が見えてきて、そうも行かない事が分かってきて、見栄を張ってた部分もあって、言い出せなくなって、こんな形に。そして、それを誰かに叱って欲しい。そんな思いが描かれた。

希美はいわゆる良い子過ぎたのかもしれない。愛想の良い、良い子が、間違いを犯した時に取り戻しがつかなくなっても、そのまま素知らぬ顔で誰かを傷つける。それで今まで生きてきてしまった。その事もまた、実は病気なのかもしれない。

久美子は、希美をヒドイと思った。普通の感覚だと思う。でも、誤解を恐れずに書くなら、希美のような病気の人も世の中には結構いるとと思うし、その気持ちが分かっただけでも良かったし、この後編は希美を救済してくれた、と思う。

みぞれのオーボエが好き、という台詞は強烈である。みぞれ本人の事を好きとは言っていない。この嫉妬の感情を認めて、みぞれの事を純粋に好きとは言えない。意外と馬鹿正直な性格である。退部騒動の事も含めて、この辺りは不器用な人間なんだな、と思う。

そうした、人間臭い弱点みたいなのが、後編での希美の魅力だったと思う。

みぞれオーボエ無双

合宿でのみぞれオーボエ無双シーン、最高に鳥肌がたった。

リズの気持ちは分からないと、すれば青い鳥の気持ちで吹けば良いという、新山先生のロジックが凄い。目から鱗だった。なんという天才。

この演奏の後、滝先生が10分の休憩を挟む際、さりげなく目元を拭ったと書いてある。滝先生の涙というのはこれまで見たことがない。滝先生を泣かせたみぞれ相当の大物です。

ところで、新山先生の好きだった人というのは、まぁ滝先生を想像させるけど、ここは大穴狙いで、滝先生の奥さん説を上げておく。

まさかの関西大会ダメ金

今回の山場は、やっぱこのシーンだったと思う。読者も全国大会に行けないと予想していた人は殆ど居なかったのでは無いかと思う。完全に予想を超えた。

周りが泣いていたけど、久美子は泣いてなかった、というのがなんとなく良かった。真意は不明だけど、久美子というのは、意外と肝心なところで冷静に見ているのだと思った。

漫画「頭文字D」で、主人公の父親が、今の主人公に必要なのは、負ける事だ、というシーンを連想した。強さ故の慢心を戒める必要がある、という事であるが、武田綾乃先生の一筋縄では行かない、ビターな感じが良いな、と感じた。

ひとときの安らぎの風景

実は、全国大会の緊張の後の、低音パートで先輩後輩が仲良く演奏練習するシーンが非常に好きである。

コンクールという戦いがメインの話の中で、こうした緩いシーンが印象に残った。

最後に

今回、丁寧に淡々と読んでしまった感じはあるが、第二楽章は最高に面白いユーフォ作品。この作品が読める幸せを噛み締めながら、もう少し時間をかけて、感想や気づきをまとめたいな、と思った。

ただただ武田綾乃先生と本作を出版まで導いてくれた方々に感謝です。