たいやき姫のひとり旅

アニメ感想など…

ヴァイオレット・エヴァーガーデン 6話 『「どこかの星空の下で」』

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感想・考察

ユースティティア天文台 シャヘル天文本部

下界から隔離された天界

今回の出張先は、ケーブルカーで登った先の山頂のシャヘル天文本部。宇宙と雲海の間で天体を観測し、天体関連蔵書多数の図書館を併設。そこで働く者は男ばかり。ドールたちの到着に沸き立つ写本係の姿がそれを表している。

ここは、男ばかりで恋愛も無く、下界の賑わいからも離れた、研究に集中できる場所。世捨て人には好都合な場所という意味があったと思う。

天文学的な悠久の時間

天文台が舞台になったのは、もう一つ意味があると思う。

星空というのはいつの時代も変わらない。永遠の時間。そして壮大な時間の周期。

200年周期で訪れるアリー彗星も、400年前のアリー彗星の文献のように、記された情報が未来永劫受け継がれる書物も永遠の時間を感じさせる。

別れてしまって二度と会えない人は、その人の心の中にその時の姿かたちで生き続けるのも、無限の時間だと思う。

そうした大らかすぎる時間軸の中で、リオンとヴァイオレット、そして二人とアリー彗星は、偶然の一瞬の巡りあわせで輝いた。

壮大な時間の中の、一瞬のきらめき。それを描くのにふさわしい場所と思えた。

リオン・ステファノティス

生い立ち

父親は、シャヘルの文献収集係だったが、様々な地方に赴き途中で消息不明となった。元旅芸人だった母親は、偶然出会った父親と恋に落ちて結婚した。

しかし、父親が行方不明になり捜索が打ち切られた2年後に、父親を捜しに旅に出て、母親もまた消息不明になった。

母親は息子と父親を天秤にかけ、父親を追いかけてしまった。

母親に見捨てられた思いから、母親に対する憎悪を抱えて、人を狂わせる恋愛そのものを嫌ってしまう。

そして、人との関りを拒み、山の上のシャヘル天文本部に籠る生活を選んだ。

本人の性根の部分にあるのだろう、その突っかかった物言いに、周囲と衝突する事も合ったのだろう。ここでも陰口を叩かれ、その事にも慣れていた。そうして、長い時間ここで生きてきた。

ヴァイオレットへの恋心と寂しさについて

到着したドールに苛立ちを見せたリオン。恋愛への嫌悪感からかチャラチャラした女性っぽい女性が気に入らないという、ガキっぽさが出ていた。

そんな中でペアを組んだヴァイオレットは、そうした女々しさを全く感じさせず、いつも寂しげな表情をしている。仕事は優秀、孤児として育ったという共通点もあり、しだいに惹かれ始め、一気に恋をしてしまう。

デートに誘いアリー彗星を二人で見ながら語るシーン。

リオンというのは母親に捨てられ恋愛を嫌い一人で生きる「寂しさ」を抱えていた。

しかし、ヴァイオレットは最愛のギルベルト少佐を想い続けて、ずっと会えずにいる「寂しさ」を抱えていた。

リオンの問いかけに、自動手記人形という仕事や依頼人よりも、ギルベルト少佐が大切であり、命にかけても愛を貫く姿勢という回答を聞き、リオンは完全に片思いからの失恋を理解した。

同じ「寂しさ」でも恋愛をしない「寂しさ」と恋愛をしているからの「寂しさ」は質が違う。

好きになったヴァイオレットの「寂しさ」に母親の姿を垣間見て、母親を許せるようになったのかも知れない。また、自分の「寂しさ」の中に母親への愛が存在していた事に気付いてしまったのかも知れない。

天界の引きこもり→下界の移動生活

ヴァイオレットと別れる日、ケーブルカーの駅で、文献収集係になり大陸中を移動する決意を表明するリオン。

ヴァイオレットも父親も母親も常に移動を伴う仕事をしていた。リオンは今までの嫌悪して逃げる生活から、180度方針転換して、旅をして出会いを求めるエモーショナルな生活をする事を宣言した。旅を選んだのはは遺伝的なものだったのだろう。

引きこもる(=受動的)から移動する(=能動的)というリオンの心境の変化は、自分自身も片思いという恋愛を経験し、素敵な家族、素敵な恋人、出会いを能動的に行う、という意思表明。

もう少し突っ込んで言えば、もう一度、ヴァイオレットに会いたい、という未練がましい気持ちも多少含まれていたと思う。

ヴァイオレットがケーブルカーで離れて行く姿を見届け、失恋を爽やかに受け入れるリオン。

今回もなかなかに奇麗な物語だった。

ヴァイオレット・エヴァーガーデン

5話Cパートとの繋がり

シャヘル天文本部に到着したとき、ルクリアから具合を心配されたのは、5話のラストのディートフリート大佐の再会が原因なのだろうか?

普通に考えたらあの台詞で会話が終わるはずもなく、ギルベルト少佐の事や何やら会話しててもおかしくないわけで、その負の感情を浴びせつけられて、ヴァイオレットが沈んでいたという事なのかも知れない、などと妄想。

今回は殊更に「寂しさ」を強調された回だったと思うので、このエピソードの並びは作為的なのかも知れない。

様々な代筆を経験し「とても特別で素晴らしい事だと思えるようになりました」という台詞。人と人を言葉でつなぐという手紙が起こす奇跡。3話のローダンセ教官の教訓が染みついて、成功体験を繰り返してきたヴァイオレットの想いが息づいている。

しかし、その直後の「果たして私はそのような素晴らしい仕事にふさわしいのでしょうか?」という台詞。これは、ディートフリート大佐がヴァイオレットに何かを言った事を受けての迷いなのだろうと想像。

人を殺傷してきた過去を持ちながら、人を結ぶ仕事に喜びを覚える。いつか、この迷いにも結論を出さなければいけない。

ルクリアとの再会

ルクリアの活躍が殆どなかったのは、少し残念なところ。

ヴァイオレットのお昼休みも一人ぼっちで過ごしていたりせずに、ルクリアと一緒に食べるシチュエーションもあったとは思うのだが、今回の話がリオンとヴァイオレットの孤独、寂しさにフォーカスしているため、ルクリアの活躍が無いのだと想像。

話の全体のバランスから考えると、致し方ない。

「孤独」「寂しさ」

振り返ってみると、今回のポイントは「孤独」「寂しさ」だと思った。

似たもの同士と思われた二人も、恋愛に関しては全く似ていなかった。

ギルベルト少佐の事を想い、寂しさを募らせるヴァイオレット。

恋愛嫌い、ひいては人間嫌いで孤独なリオン。

この二人の今回の等価交換。

ヴァイオレットはこの感情が「寂しさ」という事を教えてもらい、リオンはヴァイオレットに恋をして恋愛の力と良さを知った。

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