たいやき姫のひとり旅

アニメ感想など…

ヴァイオレット・エヴァーガーデン 7話 『「        」』

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感想・考察

オスカー・ウェブスター

問題は、娘の死別を受け入れられない事

人気劇作家だったオスカー。妻を早くに亡くし娘との二人暮らしをしていたが、その娘も病気により他界する。大切な人が一人も居なくなった悲しみで、執筆も出来なくなり、酒におぼれ、片付けもせず、無精ひげを伸ばし、ささくれだった生活を送っていた。

恐らく、オスカーは娘の死を受け入れられず、彼の時計はそこで止まってしまったのだと思う。短命すぎる娘の人生に関して自らを責めていたのだろう。

ヴァイオレットが日傘をさし風が吹いた瞬間、元気だった娘を思い出し、ヴァイオレットに「止めてくれ!」というシーンがある。早死にした娘の無念。彼はこれまで十分すぎるほど自分を責め、今もなお責め続けている、という事だと思う。

解決策は、オリーブの物語を完成させる事

執筆出来ないこの停滞状況を打開するためにオスカーが考えたのは、娘に語っていた「オリーブの物語(仮)」をを完成させる事。

主人公のオリーブは精霊使いの少女で、当然娘のオスカーをイメージしたものだったのだろう。冒険活劇で、船に乗って精霊の世界にやってきた。オリーブは幾多の困難を乗り越え、最終的に父親の待つ元の世界に戻ってきて、誰もがハッピーエンドとなる事を目指していた。それこそが、娘の死別を受け入れ乗り越える事を意味していたのだろう。

ここで、親元に帰ってくるという主人公のオリーブと、死別した娘のオリビアの重なりが示さている。

リビア、オリーブ、ヴァイオレットの一体化

7話では、この3者のイメージが重なり合いを見せた。

  • 「オリーブの物語(仮)」は娘に言い聞かせていた未完の物語。主人公のオリーブは娘のオリビアをイメージしていた。
  • 昔、娘のオリーブに言い聞かせた物語を、今、ヴァイオレットに代筆のために言い聞かせている。
  • ヴァイオレットは代筆中、一読者として物語にのめり込んだ。主人公のオリーブの気持ちになって感情移入した。

オスカーは、自分のため、亡くなった娘のために、主人公のオリーブの物語を紡ぐ。

ヴァイオレットは、オスカーの代わりにタイプして、オリビアの代わりに物語を聞き、イメージを掴むためオリーブの代わりに日傘をさした。

ヴァイオレットでなければ成しえない、ヴァイオレットだからこその後述の軌跡が起こせた。

いつかきっと、湖面の落ち葉の上を歩く事

リビアが好きだったのはフリルの付いた日傘と水鳥。

リビアが水鳥が湖面を滑空するように湖面の落ち葉の上を歩きたいと言ったとき、傘さして風を利用すれば出来るかもしれない、とオスカーは楽しませるために言った。

「私が湖を歩くところ、いつかきっと見せてあげるね」

いつかきっと、は約束。でも、これは当然、物理的に無理なので、果たせなかった約束。

オスカーを立ち直らせた奇跡

物語の完結にはオリーブが元の世界の父親の元に帰還する必要があり、その手段を傘をさして、最後の風の精霊の力で戻ってくる着想を思い付いた。そして、ヴァイオレットが超人的な身体能力で実際に湖面を嬉しそうに3歩以上歩いた。

この奇跡はオスカーの目には、オリビアが果たせなかった約束を守り、冥界から帰還し、微笑んでくれたように映った。

リビアに楽しい人生を与えられず、自分を責め続けたオスカー。彼はこの幻影を見て、オリビアが、もう自分を許してもいいんだよ、と言ってくれたように思えた。

これにより、オスカーは娘の死別を受け入れ、歩き始める事が出来る。この奇跡がオスカーの魂を救った。

全てが終わった後、オリビアがお気に入りだった傘はヴァイオレットにプレゼントされた。オスカーの心からの謝礼だったのだろう。

そして、感想

5話以降、ゲストの物語については秀逸というレベルを超えている。今回も非常に美しい完結した物語だと思う。

はじめ観たとき、情報量が多すぎて整理が付かなかった。多分、落ちぶれた劇作家に関して感情移入するのに慣れていなかったからだと思う。

何度も観て、映像的にも、台詞的にも噛みしめて、どのように物語が機能しているか分かってくるとその精密さに驚く。

ヴァイオレット・エヴァーガーデン

物語の主人公への感情移入

ヴァイオレットはタイプしながら一読者として物語にのめり込んだ。他人事なのに主人公の感情に重なってワクワクドキドキするというのはヴァイオレットにとってこれまであまり経験が無かったのかも知れない。

このシーンで感じたのは、ヴァイオレットの精神年齢は4話くらいまではまだ赤ちゃんで、7話くらいでようやく10歳くらいになったのではないか?という事。

娘のオリビアの身代わりの意味もあるとは言え、その物語を聞く態度が小学生くらいと思えたから。知識はある。だけど精神年齢はまだ子供。罪を背負うには幼すぎるのかも知れない。

人殺しの罪を背負う咎人

アヴァンの「赤の悪魔」のラストの台詞。

帰りの汽船の中で「燃えています」

そして、その罪を一人で抱え込んでしまうヴァイオレット。

赤ちゃんは自身を責める事は無いだろうが、少しづつ大人になるにつれ過ちを理解し、反省を重ねる。今後、楽天家になるとも思えないヴァイオレットを見ていると、どんどん息苦しくなり、ストレスを与えられる。

今後、ヴァイオレット自身が、オスカーのように自分自身を責めないで済むような日はくるのだろうか?誰が、ヴァイオレットの罪を許してくれるのだろうか?それが出来るのは、はやりギルベルト少佐だけなのではないだろうか?

ギルベルト少佐の死別

ギルベルト少佐の生死については、明確に描かれていない。今回のホッジンズの話でも状況的には絶望的でも、死体が無いので正確な生死は判断できない。

それにしても、ヴァイオレットはこういう所は人の発言を真に受け、疑う事が無い。6話でも自分では嘘が付けない、と言っていた。そこも勉強が必要な所だとは思うが。

今回、オスカーが娘のオリビアとの死別の話をしたときに、ヴァイオレットは初めて涙をこぼした。他人の悲しさに触れられたからだ。

しかし、今回ホッジンズにギルベルトの死を問いただし、理不尽さに駆け出したのは、今回オスカーが娘の看取ったのと同じだったのかも知れない。今回のオスカーの件が、しっぺ返しのようにヴァイオレットに覆いかぶさる皮肉。

今週の等価交換。

  • ヴァイオレットがオスカーに与えたのは、娘の幻影を見せ、自分を責めないようになった事。
  • オスカーがヴァイオレットに与えたのは、理不尽な死別の悲しみの感情。
  • オスカーがヴァイオレットに与えたのは、娘が使っていた水色の日傘。

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