たいやき姫のひとり旅

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ヴァイオレット・エヴァーガーデン 12話

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感想・考察

主張の異なる軍人達のぶつかり合い

先の大戦で戦ってきた軍人・兵士達の、それぞれの持ち味が違う主張のぶつかり合い、せめぎ合いのドラマだったと思う。

ディートフリート海軍大佐、メルクロフ准将、ヴァイオレットの3人の戦争への想いを紐解きながら話を進めたい。

ディートフリート・ブーゲンビリア

立ち位置と信条

ライデンフャフトリヒ海軍大佐。ギルベルト少佐の兄。猛獣だったヴァイオレットを海軍で引き取り戦争の道具として仕立てギルベルトに託した。

ディートフリートは強い。大切な人を守るためには、他者を殺傷するのも必然。「非情な強さ」の象徴として描かれていた。

ディートフリート視点のギルベルト

ギルベルトは、ヴァイオレットに対し道具としてではなく人間として名前を付けたり、不本意ながらヴァイオレットを戦場に送る事に罪の意識を持っていた。

ギルベルトは、ディートフリートの非常な強さに対して、人情の弱さ、優しさが対比されていた。

その意味では、ディートフリートは弟のギルベルトの弱さに不甲斐なさ、歯がゆさを感じていたのかも知れない。

そして、ギルベルトは守るべき大切な人だった。ギルベルトへの兄弟愛は強く、戦争でギルベルトを失った悲しみは人一倍大きかった。

ディートフリート視点のヴァイオレット

ディートフリートは、ヴァイオレットを道具として、もっと言うと「武器」として仕立てた。

彼の信条を考えれば、戦場では非情な強さこそが有効で、感情を持たない戦闘人形としてのヴァイオレットこそが存在価値があると考えていたと思う。

感情に曇りを見せるヴァイオレットは、整備不良の拳銃と同じで、戦場で調子が悪い武器を使っていたら、それこそ命とりになる。

ディートフリートは、ヴァイオレットの感情を取り除き武器として仕上げた側の人間だからこそ、ヴァイオレットがギルベルトを守れなかった事、人殺しを拒む事に、激しい憤りを感じたに違いない。

だからこそ、ヴァイオレットの事を「命令が欲しいだけの道具」とか「ギルを守れなかったのだから、お前も死ね」とか厳しく当たっているんだと思う。

ディートフリートにとってヴァイオレットは拳銃と同じ「武器」としての働きを期待している。武器が悩んで調子が悪かったりしたら、それこそ命取りになる。今の心の曇ったヴァイオレットは、まさにそんな感じに見えているのだろう。

メルクロフ准将

立ち位置と信条

ガルダリク帝国軍人。

インテンス要塞攻略戦にて要塞を守り切れず苦渋の撤退。その際、そのまま敵に利用されないように可能な限りインテンス要塞を破壊した。

大義名分の為に戦い消耗した兵士達を、今度は平和になった途端に兵士を拒絶した社会に対して復讐の戦いを挑む。

和平反対の反乱分子を統率して南北和平調停をぶち壊し、再び戦争勃発を企てる。

メルクロフが戦っている相手

大義名分のため多数の部下の命を犠牲にしながら、彼は戦場の中で必死に戦ってきた。

しかし、大戦が終結し社会に平和が訪れようとしたとき、兵士はお払い箱となり、それどころか厄介者として世間から煙たがれた。一体、誰のため何のために苦しい戦いを続けてきたのか?これでは、戦死した兵士も、生き延びた兵士も浮かばれない。

メルクロフ准将は、そんな世間からの兵士への扱いに怒りを覚え、同志を募り和平をぶち壊す、というのが彼の口から語られた行動原理だった。

メルクロフ准将は、平和を望み和平を推進する大勢そのものに、復讐のために戦っていた。

同志が集まるという事は、相当のカリスマ性があり部下からの信頼は厚く、ずば抜けた行動力もあったのだろう。

しかし、これは想像でしかないが、大戦中にメルクロフ准将の何らかの作戦で戦犯としての罪を問われて、有罪になれば人生終わりだから、それを逃れるために同志を集め和平反対勢力として束ね謀反を起こした、とかの何らかのキッカケがあっての、反発じゃないか、と想像する。

個人的には、メルクロフ准将は言うほど奇麗ごとばかりの人物では無いと思う。

戦争と兵士の負の連鎖

大戦が終わり、世間から厄介者扱いを受け、社会的に受付られず拒絶される兵士達が生きられるのは戦場しかないという理屈。しかし、その兵士を作ったのは戦争そのもの。

戦争は大量の兵士を消耗し、兵士にも家族にも深い悲しみだけを残す。

戦争が兵士を生み、兵士が生きるために戦場を求めて戦争を起こす、という絶望的な負の連鎖。それ象徴するのがメルクロフ准将だと思う。

ヴァイオレット・エヴァーガーデン

立ち位置と信条

大戦中は感情を持たない道具として、ギルベルト少佐に忠誠を誓い、圧倒的な戦闘能力で戦果を上げ、ギルベルト少佐を守り続けてきた。

しかし、インテンス奪還作戦でギルベルト少佐は未帰還兵に、ヴァイオレットは少佐と両腕を失い戦後を迎える。

その後、自動手記人形として社会復帰し感情を取り戻す事と引き換えに、自分自身が戦場で殺してきた兵士達とその家族に対する罪を背負い生きている。

11話で戦死した兵士と家族の悲しみを受け、「不殺」を誓う。

理想論でしかない「不殺」というスタイル

殺せば戦死者と家族に深い悲しみを残す。愛する人が死ぬ悲しみを繰り返したくない。この命題を背負って悩みぬいた結果の行動が「不殺」だった。

メルクロフ准将が象徴する、戦争が戦場でしか生きられない兵士を作り、兵士が生きるために新たな戦争を起こす、という負の連鎖。「不殺」はその負の連鎖を断ち切る事が出来る唯一の手段かも知れない。

しかしながら、愛する人を守るためには、非情となり敵を殺す強さがなければ到底困難。

ヴァイオレットの「不殺」は自身を守ることも出来ない程の「弱さ」としてディートフリートが怒りを込めて主張した。

12話の構図としては、

  • ディートフリートの、愛する人を守るために非情となり敵を殺す=「強さ」
  • ヴァイオレット(≒ギルベルト)は、愛する人の死の悲しみを繰り返さないための不殺=「弱さ」

という二人の対比で終わった。

もともと、ヴァイオレットが超人的な殺傷能力を持った存在であったからこそ、この「不殺」による行動の制限の苦しみが重くのしかかる。殺してしまう方が守りやすい。でも、殺してしまう事の罪の大きさにも耐えらえない。この葛藤こそがヴァイオレットを苦しめるという重いドラマ。

哲学とも禅問答ともとれる、戦争という大きな命題。

果たして、ヴァイオレットの「不殺」はヴァイオレットの心を救えるのか?というのが13話の見所になると思う。

13話見所予想

ディートフリートとギルベルトは死別したが、ギルベルトの「生きろ」の意思を引き継いだヴァイオレット自体が手紙となり、死別したギルベルトの心をディートフリートに届ける事が出来れば、物語としては美しく決まる、と思う。

命令が欲しいだけの道具に感情など不要と思い込もうとしているディートフリートも、ヴァイオレットの感情が芽生えている事に気が付いている。そのヴァイオレットの感情を、ギルベルトの愛した人の感情を認められるか?

そして、もう一つの命題の戦争について。

「不殺」が世界を救うというのは理想論では分かるが、それが出来るほど世界は甘くないとも思う。こちらの決着は付かず、俺たちの戦いは続く的な味わいになると予想しているが、どうか。

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