たいやき姫のひとり旅

アニメ感想など…

荒野のコトブキ飛行隊 1話「月夜の用心棒」

f:id:itoutsukushi:20190114204038p:plain f:id:itoutsukushi:20190114204240p:plain

荒野のコトブキ飛行隊 1話「月夜の用心棒」

感想・考察

大胆な1話の構成

1話では、キャラの顔見せ後、空戦にたっぷり尺をとり、臨場感たっぷりの空戦を体験させる反面、物語とドラマは極力削るという大胆な構成になっている。

きっと、2話以降では、普通に物語とドラマを描き、空戦の尺は短くなるのだろう。

1話では、本作の物語とドラマをまだ知る事は出来ないが、SHIROBAKOの水島勉監督と、横手美智子シリーズ構成なので、その部分に全く心配はしていない。

最大の見所、空戦シーン!!

空戦シーンについて

本作の最大の目玉は、太平洋戦争時代のレシプロ機による空戦である。

まず、SNSでも話題になっているのは、音響の良さ。レシプロエンジンの爆音、機銃掃射音、被弾した際の音、それらがリアリティがあり、気持ちよい。

でも、どちらかというと私は演出や絵コンテの素晴らしさに驚いてる。

月夜の雲海の上で繰り広げられる空中戦だが、良くある工夫だとは思うが、雲があるお陰で戦闘機の旋回の軌跡が明確に分かりやすく、かつスピード感を伴った映像になっていた。

さらに、これらのシーン内のカットの繋ぎは、リアルな時間経過を感じられる、リアリティある演出だったと思う。

例えば、コトブキ飛行隊が出撃し、旋回して方向転換し、ハゴロモ丸をすり抜けて敵機に向かうシーンなどは、レシプロエンジンの爆音とともに、旋回Gを感じさせつつ反転し、巨大な飛行船をすり抜ける、というのをキャノピー越しの1カットとしている。これで、操縦者がどのような速度感、時間で、飛行しているのか?というのを視聴者に体験させてしまっている。

また、緊迫した空戦シーンも、自機をなめて後続に敵機が食らいついてくるカット、敵機の照準器が自機を中心に捉えるカット、スロットルを絞り機速を落とし、操縦桿を左に思いっきり倒すカット、自機がバレルロールするカット、と一連の手順をパッパッと繋ぐのにも、その時間軸がジャンプする事無く、そのリアルタイムを共有しているので、その点で非常にリアルに感じる。

要するに、必殺技の名前を叫び、角度を変えて3回カットを見せる、という事はしない、非常にストイックな戦闘シーン作りになっている、と思う。

これらの空中戦いついて「敵味方が良く分からなかった」という敷居の高さを感じる人も居るかもしれないが、是非とも作品に歩み寄り、、航空機の基本的な予備知識を調べてみるだけでも、俄然、面白さ倍増して見えてくる作品だと思う。

戦闘機について

太平洋戦争時代の陸軍、海軍のレシプロ機を使ってる。詳細は公式HP参照。

現時点では、敵機の蛇印の「零式艦上戦闘機32型」の記載がないため、下記を参照。

少しググるといろいろとガチなサイトが出て来て凄い時代だな、と思うが、隼のコックピットの詳細や発信手順などを記載したHPがありここは凄い。機内で操縦桿などを操作するシーンが良く出てくるので、この辺りの知識もあると、楽しみが増す。

空中戦闘機動について

私も戦闘機に関しては素人寄りでしたが、この辺りの基礎知識があると、分かりやすく、世界が広がります。

  • 空中戦闘機動
  • マニューバ

    • バレルロール

      • ザラが追尾してくる敵機を1回転ロールして逆に敵機の後ろを取るシーン。凄く綺麗。
    • インメルマンターン

      • 敵編隊と遭遇し、エンマ、ケイト、キリエの3機が宙返りで旋回するシーン。通常の宙返りよりも早く反転できる。180度反転の定番。
    • ロー・ヨー・ヨー

      • 航空機は、重力加速度により、上昇すると機速が低下し、下降すると機速が増す。エンマが敵機に追いつくために、一旦下降&フルスロットルで加速し、機速が増した状態で進んで接近し、上昇する。燃料消費とのトレードオフ
    • スナップロール(スローロール?)

      • 終盤でキリエが追尾してくる蛇印に対してスナップロールで蛇印の後ろを取ろうとするも、敵に読まれて振り切れず、キリエが被弾。
        • 分からない事だらけでいろいろ調べていますが、キリエがやったのこちらのサイトに記載されているスローロールという技の様です。キリエはここに記載されている複雑な手順を約3秒で完了させています。スローロールと言われている映像をいくつか見ても、バレルロールみたいなのもあり、良くは分かりませんでした。ちなみに、こちらの昔の米国海軍のSLOW ROLLの教科用映像に、操縦方法が解説されていて、この辺りを見ても面白いです。

本作は、この辺りの細かな説明は省略していますが、映像でキッチリ見せきるというストイックさです。

空戦の流れ

空戦の概要は、こんな感じ。★マークは撃墜。

  • 出撃時
    • 空賊×12機(1機は蛇印の零戦32型、残り11機は零戦21型)
    • サリン飛行隊×5機(紫電
    • コトブキ飛行隊×5機(隼1型)
  • 序盤(ナサリン飛行隊×5機 vs 空賊×4機)
    • サリン飛行隊は、5機撃墜
    • 空賊は、1機撃墜(フェルナンド内海★)
  • 中盤戦A(コトブキ飛行隊×2機(レオナ、ザラ) vs 空賊×3機)
    • コトブキ飛行隊は、撃墜無し
    • 空賊は、3機撃墜(レオナ★★、ザラ★)
  • 中盤戦B(コトブキ飛行隊×3機(エンマ、ケイト、キリエ) vs 空賊×5機)
    • 双方、撃墜無し
  • 終盤戦(コトブキ飛行隊×5機 vs 空賊×6機)
    • コトブキ飛行隊は、撃墜無し
    • 空賊は、5機撃墜(エンマ★、ザラ★?、ケイト★、キリエ★★)
  • 最後の決闘(キリエ vs 蛇印の零戦32型)
    • 双方、撃墜無し
  • 帰還時
    • コトブキ飛行隊×5機
    • サリン飛行隊×0機(全機撃墜)
    • 空賊×1機(蛇印の零戦32型)
      • 出撃時は12機、撃墜は9機、帰還は1機で、2機数が合わない?

空賊は9機撃墜を確認しているが、残り2機の撃墜が未確認。画面外で撃墜された?

あと、気になる点としては、蛇印は中盤戦まで雲海に姿をくらましていた点。消耗待ち?

謎多き、世界観

世界観のナレーション

ED直前のキリエのナレーション。

その昔、世界の底が抜けて、そこから色々な物が降ってきた。
いい物も悪い物も、美しい物も汚い物も、いろいろな物がった。
そして今、再び世界は閉じられて、私たちは、色々な物を失いながら、生きている。

何となく、SFっぽくもあり。でも、全く本題ではいのかな、みたいな感じを受ける。ガルパンの特殊カーボン素材と同じ、嘘を嘘に感じさせない巨大な嘘設定。

飛行船+貨物船+航空母艦

コトブキ飛行隊は、オウニ商会の輸送船ハゴロモ丸の、女社長マダム・ルゥルゥの雇われ用心棒。

ハゴロモ丸の貨物が何かは不明。ガソリン?依頼されれば、何でも運ぶ?

空賊対策用に戦闘機の発着甲板があり、空路輸送中にも戦闘機を出撃させる事が出来る、実質、空母。

これもまた、ガルパンの学園艦同様、嘘を隠すための、巨大な嘘設定。

現時点で見える物語

チカについて

公式HPには、チカというキャラクターがおり、次回予告でも登場する。

しかし、1話では、以下の理由によりチカは死亡していた、と想像している。(違うかもしれませんが)

  • コトブキ飛行隊出撃後、レオナの台詞。

    • 「では例の如く二人一組、…じゃなくて今日は2,3か」
    • 「チカだって調子に乗ったから、ああいう事になったんだ」
  • キリエがラストで誰かの墓参り。多分、チカのお墓?

多分、キリエとチカはペアだったのだけど、撃墜され死亡した?1話は、チカとの死別からまだ日が経っていなかったのではないだろうか?

そして、チカを撃墜したのは、そろらく、蛇印の機体のヤツだったから、キリエはムキになって深追いした?、のだと想像している。

2話では、チカが登場し、甲板に並ぶ隼は6機あるので、恐らく、2話は過去に戻って話をスタートするのだと思う。

また、1話の状況は、コトブキ飛行隊、というよりキリエとしては問題を抱えた状態だと思うので、その問題を克服する必要があると思う。この事から考えると、1クールの中盤くらいには、この1話の時間軸に戻ってくるのではないか?と想像している。

用心棒の死について

本作の世界観では、空戦で人は死ぬ。そこがガルパンとの大きな違いでもあると思う。

1話の用心棒の死の描き方は、戦闘機が撃墜され、雲海に落ちて、そのまま画面からフェードアウトしてゆく、という描き方。それは、空戦だからこその死に際とも言える。仲間は煙を吹きながら墜落してゆく機体を見るしか出来ない。死に対する、血なまぐささは描かない。

ちなみに、最後の方で、着陸したオレンジ色の複葉機から担架で人が運ばれるカットがあり、おそらく、奇跡的にナサリン飛行隊の中の生存者が救出され、トラックで病院に搬送されるものと思われるが、やはり、墜落≒死亡だと思われる。

この戦闘で、ナサリン飛行隊は5機撃墜、空賊も少なくとも9機撃墜している。今回の戦闘でも10数人の命の消耗があったのだろう。

Aパートの酒場で見せた通り、ラスト付近の3人娘の台詞通り、戦闘機乗りは、いつ死んでもおかしくない高リスク高リターンの職業で、虚勢でも張っていないとやっていられない、という事なのだろう。この世界では、主人公側の味方さえも、無慈悲に死んでゆく。

キリエが墓参りした時に、最後に笑顔で「よーし、また来る」という態度は、本来、辛気臭い死について、カラっとした描き方で、意外と思うと同時に、水島勉監督と横手美智子脚本の、明るいテイストを目指す心意気のようなものを感じて、とても良かった。

西部劇テイストという設定もまた、ガルパンの戦車道以上の、巨大な嘘設定なのだと思う。

Twitterのつぶやき