荒野のコトブキ飛行隊 5話「華麗なるアレシマ」
感想・考察
キャラクター
天上の奇術師イサオ
もう、初登場でキャラが濃すぎるので、とりあえず今回有った事を箇条書き。
- 乗用車で事故りそうになったが、相手が無事だと分かると手品を披露して立ち去る
- ブユウ商事トップ(会長)
- イケスカの次期市長候補(ちなみにアレシマはイケスカ派の町)
- 空賊による治安悪化、エネルギー問題を大会社の資本と人脈を使って解決しようとうたっている正義のヒーロー、カリスマ
- 提唱するのは、国家統一連合構想、共通の利益、正義と安全と義務と権利
- 皆が好き勝手にやったら、結局誰も得しないから、ルール決めが必要、という主張
- 流星を操り、空賊の零戦52型や四爆を華麗に撃墜
- かつて、イケスカ所属の飛行隊に所属。通称、天上の奇術師。
- 8年前のリノウチ大空戦で1回の出撃で12機撃墜。
柄にもなく暴走したレオナ
借りは必ず返す、という律義なレオナ。普段は手堅くチームの連携を最重視するレオナだが、昔は敵を見たらまっしぐら、一心不乱のレオナだった事を、ザラが語った。
8年前のリノウチ大空戦で撃墜されたが、レオナが今生きているのはイサオのおかげ。そのイサオを空賊から守るという任務で、我を忘れて突っ走った。イサオがレオナの事を覚えているか否かは不明。
借りを返す話と、コトブキ飛行隊の安全を確保する話と、天秤に乗せたら後者が優先だと思うが、レオナは借りを返す事で思考停止を起こした。そうした人間的な弱みはキャラの魅力にもなるが、隊長という立場のレオナが、肝心な部分での暴走をするという事の重大さも気になる。
今後のドラマで、レオナのイサオへの気持ちがどのようなモノか?どのように気持ちが変化するのか?一つの注目ポイントだと思う。
キリエの幼さ純粋さ
今回のキリエは、レオナとの対比して描かれていた様に思う。
いつもはキリエがコトブキの中の連携せずにスタンドプレイする側だったのに、今回はレオナが連携を取らずに勝手に行動した。その事を咎めるのがキリエだったのが興味深い。
ここの所、キリエがまだ精神的に子供だという描写が多い気がする。アレシマのパンケーキ屋に吸い込まれてしまう際の駄々っ子の様な言い訳。イサオとユーリアの対談をラジオで聞いている中、「ルール反対」と叫んだりするのも駄々っ子っぽかった。
2話でレオナに怒られて、チカも同罪なのに、と言ってしまうシーンに代表されるように、叱られる際に自分だけおこられると拗ねる、というのは叱られている内容を真摯に受け止める事よりも、叱られてふて腐れているという、子供の心理である。
また、レオナがコトブキ飛行隊のみんなに合意を取る事無く、アレシマ警護の仕事を請けた事について、レオナがイサオに恋に落ちたから?というリリコの推測を受け、「恋愛で横暴になるものなのか?」とナサリンのオジサンに質問したり。少なくとも、キリエはまだ初恋もしていない雰囲気を出していた。
逆に言えば、キリエは子供の様に純粋。大人の様な打算的な事には慣れていない。
ケイトがレオナの身代わりに撃たれた時、レオナに苦言を呈したキリエの言葉の拙さと相まって、キリエの純粋さがにじみ出ていたと思う。
キリエは、そこがまだ可愛くもあり、当然そこが伸びしろでもあり、キリエの成長が物語の軸にあるように感じている。
あと気になったのは、イサオの手品を見て、チカは喜んでいたが、キリエは怪訝な顔をしていた。直感で胡散臭いものを感じるのか?キリエはキリエの頭で納得いかない事に関して、頑固であり、心を閉ざすのか?ここについては、今後の芝居でまた解答が見えてくるのだろう。
世界観
会談におけるイサオとユーリアの主張
会談での主張を整理するとこんな感じ。
- イサオ(ブユウ商事トップ、次期イケスカ市長候補)
- この世界に平和と秩序をもたらすルールを決めたい
- ユーリア(ガドール評議会議員)
- 自由であり、平等であるべき
- ルールや権利を悪用される可能性があるのでルール決めは反対
一応、イサオもユーリアも、どちらの主張も一理ある形。
ここで言うルールが、国家権力から国民を守る「憲法」なのか、国民を制限する「法律」なのかで、ニュアンスが変わるが、イサオは「憲法」の整備で、ユーリアは「法律」で縛るイメージなのかなと。
これだけだと、話がまだ分かりにくいが、イサオ=社会主義、ユーリア=資本主義という切り口で考えると理解しやすい。
ユーリアのルール決めを嫌うというのは、人が決めたルールを嫌うのであって、自由競争の結果、栄枯盛衰が生まれるという資本主義が、ユーリアの主張に近い感じがする。過去の共産圏の社会主義が独裁者によって国家が疲弊して社会主義国家が消滅していった事を考えれば、イサオのそれを良しとは単純には言えない。
実際には、社会主義 vs 資本主義という事ではなく、下記だと考える。
- イサオが提唱する、管理社会(仮)
- ユーリアが提唱する、自由平等社会(仮)
面白いのは、キリエがコトブキ飛行隊のメンバがアレシマに飛行届を申請する義務が発生していた事に対して「管理社会だ」と批判していた事。ラジオ放送の会談を聞いたときは、ユーリアの主張に賛同し、ルール反対を唱る。キリエは間違いなく、自由平等主義者。
これに対し、レオナは規律が飛行隊メンバの安全と命を守ると考えて、ここまでコトブキ飛行隊を引っ張ってきたので、管理主義寄りの考え方を持つと思われる。
管理社会と自由平等社会は民意でも分かれているのが、現状なのだと想像。
あと興味深いのは、4話でエリート砦に長距離移動中に自由に空を舞ったコトブキ飛行隊のシーンでの台詞。
- ザラ「空は青くて自由で。そんな自由な空だから私たちは飛べるって事」
- レオナ「自由はタダじゃないけど」
- ザラ「だから尊いのよ」
コトブキ飛行隊の彼女たちは、今ある自由を、守り、勝ち取るために戦うのだろう。
アノマロカリス
チカがアレシマの町で購入したぬいぐるみ?のアノマロカリスは、古代カンブリア時代の海中の生物の中で食物連鎖の頂点に立っていた生物と言われている。
なぜ、わざわざ、アノマロカリスが本作にぬいぐるみとして登場するのか?という点にひっかかって、ぼんやり考えていた。
このイジツの世界では、地上に点在する町は、資源が無ければどんどん過疎化し、下手をすれば、人類が絶滅しかねない状況なのかも知れない。
しかし、今のこの世界では、西部劇よろしく弱肉強食でなければ生き抜けない、という雰囲気を描いている所もある。
かつて、弱肉強食の強者として君臨したアノマロカリスも環境の変化に伴い死滅した。それは、イジツの世界でいくら強者として君臨しても、環境に適応できなければ、結局は死滅するという、比喩にも思う。
このイジツの世界で弱肉強食という生存競争もあるが、人類が絶滅するかも知れないという危機感を持って考えると、今いる人類の中で争うのではなく、協調するべきところは協調が必要なのかも知れない。
まだ、明快な解はないが、そうした何らかの暗喩があるのではないかと勘ぐっている。
空戦
空戦シーンについて
今回は、アレシマを襲撃する空賊からアレシマの町とイサオ、ユーリアを守る事が任務。状況開始時は、以下布陣。
おとり部隊(北西から飛来)
- 空賊は6機
- アレシマ側は、評議会警備隊、アレシマ私立警備隊で確認できた機影は14機
本隊(南東から飛来)
おとりはそれっきり空戦シーンはなく、空戦シーンは本隊のみ。空戦シーンの流れは下記。
<レオナが我を忘れる>
- ナサリン飛行隊の2機が4機ずつに追われ、すれ違いざまに敵機が2機正面衝突で自爆(ナサリン★★)
- ナサリン追撃中の敵機を先行したレオナが撃墜(レオナ★)
- レオナが太陽に向かってインメルマンターン後に敵機を1機撃墜(レオナ★)
- レオナが逃げる敵機を追いかけて上昇。下降してくる敵機3機とすれ違うが敵機と重なってて撃たれない。そのまま上昇中の敵機を撃墜(レオナ★)
- レオナがインメルマンターンで小さく反転してすれ違った敵機3機のうち1機を下降しながら撃墜(レオナ★)
- レオナが敵機2機のうち1機を追撃するも敵機がバレルロールで回避(レオナ★)
- コトブキ5機に対し6時方向から敵機3機。散会するコトブキ。
- レオナが四爆に斜め後方上から攻撃するも側面機銃掃射あり、ケイトが身代わりで右翼に被弾。
- ケイトの後方の敵機をキリエが撃墜(キリエ★)
- ケイト離脱
<キリエがレオナに説教し、レオナ我に返る>
<アレシマの町から流星が上がる>
今回は、戦闘機に護衛された爆撃機を撃墜する側の空戦シーンだったので、また違った迫力があった。1話で羽衣丸を襲った空賊も、このような対空砲火の恐怖の中で戦闘していたのだろうか。
最後は、イサオの流星が全部持って行った。ヘラヘラ手品してるだけの男に見せかけて、凄腕の艦上攻撃機機乗りだった。というか艦上攻撃機で、戦闘機を軽々と撃墜するとか、凄腕過ぎる。
戦闘機について
毎度ながら、まだ公式HPには記載されていないので、今回登場の戦闘機等を下記に列挙。
-
- 2機の四爆の護衛として、アレシマを攻撃した空賊が使用(20機)
-
- アレシマを攻撃した空賊が使用(2機)
空中戦闘機動(マニューバ)について
今回もマニューバはさりげなくてんこ盛り。今回は空戦シーンの箇条書きを細かく書いてはみたものの、リンク張るのが面倒なので、下記に空中戦闘機動についてのWikiを記載しておくだけとします。
Twitterのつぶやき
#コトブキ 5話
— 伊藤つくし (@itoutsukushi) 2019年2月10日
資本力で牛耳ろうとするイサオと真っ向勝負でタイマンをはるユーリア。
珍しく心乱したレオナとカバーするキリエ達。ムキになったレオナのイサオへの借り。最後は凄腕のイサオが美味しいとこ持ってった。混沌のこの世界の奇術師は救世主か?詐欺師か?
#コトブキ 5話
— 伊藤つくし (@itoutsukushi) 2019年2月10日
アレシマのイサオは新興の急成長勢力で、その力がユーリアなどの他の勢力と手を組む事を良く思わない、別の勢力が今回の会談の邪魔をした。近年の空賊の戦闘機の質、量ともに充実してきている背景。敵はバラバラの空賊を組織化出来る何か。敵の本質が分かるまでもう一歩。
#コトブキ 5話
— 伊藤つくし (@itoutsukushi) 2019年2月12日
会談での主張を整理するとこんな感じ。
イサオ(ブユウ商事トップ、次期イケスカ市長候補)
この世界に平和と秩序をもたらすルールを決めたい
ユーリア(ガドール評議会議員)
自由であり、平等であるべき
ルールや権利を悪用される可能性があるのでルール決めは反対 pic.twitter.com/Gm2E9Nz5V8
#コトブキ 5話
— 伊藤つくし (@itoutsukushi) 2019年2月12日
一見、イサオもユーリアも一理ある感じになっている。個人的にはユーリアの不安に共感している。実際には違うがイサオ=社会主義、ユーリア=資本主義に置き換えると分かりやすい。かつて社会主義国家が権力者のルールで疲弊し衰退し国家消滅した経緯を考えると一概に良いとは言えない。
#コトブキ 5話
— 伊藤つくし (@itoutsukushi) 2019年2月12日
もちろん、秩序は必要なので無法が良いとも思わない。構図としては下記の様に思う。
イサオ=社会主義(仮)
ユーリア=自由平等主義(仮)
#コトブキ 5話
— 伊藤つくし (@itoutsukushi) 2019年2月12日
キリエはアレシマの飛行届申請を「管理社会だ」と批判したし、イサオとユーリアの会談の放送を聞いて「ルール反対」と唱えたので、「自由」を重視し、自由平等主義。
一方、レオナは組織の中での役割やチームの連携を重視している手前、社会主義より、と思われる。
#コトブキ 5話
— 伊藤つくし (@itoutsukushi) 2019年2月12日
4話Aパート冒頭の下記の台詞。
ザラ「空は青くて自由で。そんな自由な空だから私たちは飛べるって事」
レオナ「自由はタダじゃないけど」
ザラ「だから尊いのよ」
おそらく、コトブキ飛行隊の彼女たちは、今ある自由を守り、勝ち取るために戦うのではないか?と思う。