感想・考察
総括
毎回期待以上の空戦シーン
最終回を迎えてしまったけれど、とにもかくにも、見事な空戦シーンに終始痺れっぱなしだった。しかも、途中でダレる事無く、高いクオリティを維持し続けて。
この作品を見て、旧陸軍、旧海軍の戦闘機の事、空中戦闘機動やマニューバの事、ネットで調べ漁り、動画を見て勉強し、色々理解した。水島監督作品の罠に今回もハマってしまった。
楽しかった空戦シーンを作ってくれたスタッフに感謝!
西部劇に徹するための勧善懲悪とコトブキ飛行隊のテーマ
イサオと穴が消えた後、人々は、世界は、イサオの縛りから解放されたかの様だった。
本作は、イサオを勧善懲悪の大悪人とする事で、空戦アクションの目的を明確にして物語を進めてきた。
実際には、求心力のあるイサオが居なくなったことで、イジツの世界が混乱を極める事は目に見えている。イサオが作った独裁社会は、それはそれで秩序ではあった。イサオが欲していたのは穴であり、穴に関わらなければ、民を平等にコントロールしていたかもしれない。
その辺りを悩んでいたら、折角の空戦アクションが冷めてしまうから、このようなディレクションになっていると思う。この辺り、脚本や演出は相当苦労したのではないかと思う。矢継ぎ早に繰り出される台詞も、繋がりのある台詞の途中で場所(シーン)を変えるのも、詰め込んで、考えさせる暇を与えないためだと思う。
例えば、敗戦後の日本も、ある種の束縛からの解放感があったのだと思うが、明日はどうなっているか分からない、だけど、自分には自由がある。そうした、心の開放のような、清々しさをラストで感じた。そのような演出だったと思う。
生きる目的は皆それぞれ。でも、生き残る事が出来た。
「寿」は様々な良い事を示す言葉。コトブキ飛行隊も憎しみのためでなく、気持ちよく、ハッピーを信条に飛ぶ。
自由、幸福。それが、テーマだと感じた。
キャラクター
キリエとイサオ
キリエは11話時点で、サブジーを撃ったイサオへの憎しみに溺れた。しかし、その憎しみが、サブジーの本位では無い事を最後に気付く。そして、その憎しみを、肩から降ろす事が出来たとたんに、イサオに銃弾を食らわす事が出来た。錐揉みを利用した機体の失速でオーバーシュートさせた。
その時に、幼少期のキリエの様に、本当に穏やかな表情になる。まるで、観音様の様な。
一方、イサオは、穴を誰にも渡すまいと、収縮する穴に飛び込み消えた。
キリエが掴んだものは無欲な自由。イサオが追いかけたものは強欲。そんなところか。
レオナとザラ
ザラがレオナに言った、このまま逃げようとか、絶対にやらなければいけない事なんか無い、という台詞は、ある意味プロポーズなのだが、この台詞が出るという事は、レオナが潰れる予感がしたからだろう。
しかし、レオナがYes、と言わなかった時点で、コトブキ飛行隊としてのチームの立ち位置で皆を頼れば良い、というザラの返答になる。こちらは、ある意味、ザラは今回はフラれた事を受け入れた、今がその時ではないと。レオナにフッた意識は無いのだろうけど。
ザラは戦闘中、レオナを援護し続けた。執事のクレーン振り子攻撃に墜落した時に、「サイアクー」という台詞は7話のナンコウで撃墜された時と同じで、生きてる感じがしていい。本当にいい女だと思う。
レオナは逆にイサオについて、吹っ切ってた。ザラが心配するほど真面目過ぎる。でも、コトブキ飛行隊で頼り頼らるという関係でいい事を理解した。多分、今までもザラに泣き言をいう事も無かったのだろうが、今度はザラに甘える事が出来る。
12話の時点では、そこまで描かれないが、将来的な予感を残しているところが心地よい。
チカ
チカの名場面は、海のウーミを引き合いに、キリエに憎しみの沼にハマらないで、という意味の台詞。キリエの事が大好きで、普段の口の悪さとは裏腹に、コトブキで一番やさしいキャラなのだと思う。
エンマ
空賊やイサオのような悪人を前にすると常に怒っているエンマだけど、何機か撃墜した後、自分が撃墜された時に、スッキリしたっていう台詞が良かった。
ストレスばかり溜めてるイメージだったけど、その台詞があって、ちょっと安心。
12話では、改めて操縦技術の高さを認識。コトブキはみな凄腕。
その他大勢
ナオミにプロポーズしたアドルフォ山田。神父のフェルナンド内海が祝福を捧げるの上手い。なのだけど、これで、ナサリン飛行隊は一人になるのか?内海の将来も気になる。
穴に爆破しようとする羽衣丸。ドウドウ船長と、サネアツ副船長が乗っていたわけだけど、舵輪が二つあるので、ドウドウ船長も舵輪握っていたのが可笑しかった。ドウドウ船長、飛行船を操舵できるのか!器用だな。最後は赤とんぼで脱出していたので、その後もルゥルゥについて行くのだろうけど、絶対にコントロールされて好きと言わせてもらえない副船長がある意味不憫でもあり。
ショウト自警団のカミラ。自分以外は全員撃墜されていたが、ショウトの町を再興すると息まいていたのが印象的。
ガドール警備隊の双子。ブリッジクルーのマリアとユリア、アディとベティとシンディ。もう少し見たかったキャラもいたけど、これで幕引き。
空戦
空戦について
今回の空戦は、イケスカ市にふんぞり返るイサオを仕留める事。穴を破壊する事。ちょっと、整理する事が出来なかったので、大まかな流れだけ書いておく。
本命部隊をコトブキ飛行隊とし、それ以外の全機を陽動作戦に当てる。コトブキ飛行隊は、イケスカ市中央の湖に浮かぶイケスカ島(仮)の中央にそびえるイサオタワーに居るはずのイサオが最終目標。イケスカ市近くの上空に開く穴を渡さないように。
コトブキ飛行隊は、隼一型の馬力、速度のハンデキャップを補うため、障害物が多くて小回りで勝負できるイケスカ市街地を戦場に選ぶ。
市街地で大通りに沿って、ビルの合間を右左に移動し、迎撃を交わしながらイサオタワーに近づいてゆくコトブキだが、月光のロケット弾にケイトが撃墜される。二手に分かれるコトブキ。
近接信管は標的に接近した事で爆発する。キリエとチカはロケット弾が建物の突起に接近して爆発した事に気付き、大通りのロータリ中央の巨大オブジェにロケット弾と月光を衝突させ撃墜。
イケスカ島に入るのに湖にかかる橋の上下の空間を使って侵入してゆくコトブキ飛行隊。橋脚やアーチを巧みに避けて飛ぶ隼一型。
湖上で五式戦と巴戦をするエンマ。水面すれすれを飛行し、隼一型の尻尾を水面に付けて減速、オーバーシュトして敵機2機を撃墜するエンマ。しかし、直後、イサオの震電改に撃墜される。
キリエ→イサオ→レオナ→執事→ザラの流れで追いかけっこする形の空戦に。
ザラは、執事の合図で放たれたクレーンのフックに衝突し撃墜。
レオナは、執事に撃たれるも、執事を巻き添えにして墜落。
イサオは、羽衣丸が爆薬を満載で穴を塞ぎにゆくのを阻止しようと、穴に向かって突進する。、それを阻止しようとするキリエ。
馬力も速度も格上の震電改の自由過ぎる軌道に翻弄され弾を当てる事が出来ないキリエ。自由に隼一型の後ろを取り、発砲してくるイサオ。最終的にエンジンの右側を撃たれるキリエ。
最後はサブジーの事を思い出して迅雷モードが解けたキリエは、錐揉みしながら反転し、震電改の上で逆立ちする形になって銃撃し、そのまま回転するように震電改の後ろを取って、震電改のエンジンと主翼に銃弾を食らわせる事が出来た。
イサオは、そのまま、欲望まみれの心のまま、爆発で収縮する穴に飛び込み消えた。
最後まで飛んでいたのは、キリエの隼一型だった。
戦闘機について
遂にジェット戦闘機の登場。詳細は、公式HP参照。
- F-86D 「月光」
- 「月光」は航空自衛隊での呼称、通常はセイバードッグ
- 兵装のMk4 FFAR(別名マイティマウス)は24連装のロケット弾
- 近接信管はレーダーにより目標に接近しただけで爆発する→回避は大きく避ける
- 震電改
空中戦闘機動(マニューバ)について
例によって、マニューバについての基礎的な情報は、下記を参照。
Twitterのつぶやき
#コトブキ 12話
— 伊藤つくし (@itoutsukushi) 2019年3月31日
イケスカでの最終決戦。ジェットコースターの様なスリリングな空戦。頼り頼られるコトブキである事を理解するレオナ。全力の戦いの中で一機ずつ落とされて行き、最後に残ったキリエとイサオの空戦で怒りの迅雷モードが解けたキリエと強欲で穴に消えたイサオの末路。復興への飛翔で完。
#コトブキ 12話
— 伊藤つくし (@itoutsukushi) 2019年3月31日
今回も密度多すぎて事象だけ並べようとすると書ききれない。
レオナに寄り添うザラの本音、肩に力が入り過ぎるレオナ、イサオへの怒りで我を忘れて迅雷モードに入るキリエ。それぞれが、この戦いの中で何かを見つけ、一皮むけた。チカがキリエに言ったウーミの本の事が良かった。
#コトブキ 12話
— 伊藤つくし (@itoutsukushi) 2019年3月31日
この3カ月が、あっという間だった。レシプロ戦闘機の凄い映像表現のアニメを目の当たりにして、ネットで色々調べてみたり、空中戦闘機動や大戦中の陸軍、海軍戦闘機の事、詳しくなっていくという、よくわる水島監督ミリ萌えアニメ特有の罠にハマり、現在に。楽しかった作品に感謝。