ネタバレ全開です。閲覧ご注意ください。
はじめに
「響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、決意の最終楽章 前編」の考察・感想です。
前回のブログでは、真由のいい子の面を中心に書きましたが、今回は北宇治吹部のコンクール至上主義への変遷と、真由の異質な部分についてまとめます。
考察・感想
北宇治吹部のコンクール至上主義への変遷
北宇治吹部は、滝先生が顧問となってから、年々、コンクール至上主義がエスカレートしてきていますが、これまでの経緯について、一旦振り返って整理する。
なお、コンクール至上主義については、ざっくり下記の定義としている。
- コンクール至上主義=コンクールで成果を出すのが目的
- 非コンクール主義=楽しければ良い
北宇治吹部は、滝先生が顧問になる前は、非コンクール主義(楽しければ良い)であった。そのため、コンクールに真面目に取り組みたい希美が不満を持ち、1年生大量退部事件が発生した。晴香や香織や葵は、退部する部員を引き留めたり、先輩との間に入ったりと部の空気をまとめるのに苦労したという経緯がある。
滝先生1年目(晴香部長時代)は、滝先生が引っ張る形でコンクール至上主義に一歩踏み出す。ただし、あくまで「全国大会出場」という目標を生徒に決めさせるという形式を取って。この年、滝先生に反発しつつも滝先生の適切な指導により、演奏が上手くなることを実感していった北宇治吹部は、滝先生を信頼し、全国大会銅賞の成果を出した。そして、あすかは後輩たちと全国大会金賞の約束を交わす。
滝先生2年目(優子部長時代)は、滝先生はいくぶん優子部長に権限委譲した事で、優子部長に負荷が集中したが、夏紀副部長のサポートのおかげで何とか部長業務を乗り切る事が出来た。優子部長は、吹部全員合意の上「全国大会金賞」を目標とし、コンクール至上主義を貫いたが、結果的には関西大会ダメ金で終わる。優子部長の対応を下記に整理する。
- 優子部長の対応
- 新人指導員の増員(1名→2名)
- 新人指導員の負荷分散
- 次期部長の久美子の人脈づくり
- 全国大会銅賞の敗因の自己分析
- 北宇治単体で昨年度以上だったので良いだろうという油断
- 実際には他校(龍聖学園)の躍進により相対的に実力が下がった
- 北宇治単体で昨年度以上だったので良いだろうという油断
- 次年度への布石
- 部員全員の意識&技術の底上げ
- アンコン参加
- 次年度の幹事選定(負荷分散を考慮)
- 部長は久美子(人心掌握)
- 副部長は秀一(部長のメンタル面サポート)
- ドラムメジャーは麗奈(技術指導面の分離)
- 部員全員の意識&技術の底上げ
- 新人指導員の増員(1名→2名)
優子部長は、どこぞのマネジメント教本にありそうな事をキッチリやっている。そのための勉強を独学でしたのだろうかと思うと、優子のガッツに頭が下がる。そして、優子部長は北宇治吹部の悲願である「全国大会金賞」を信頼できる久美子に託す。
久美子部長にバトンタッチした後で1年生2年生の2学年で行われたアンコンでは、下記の成果があった。
- アンコン(校内選抜)の成果
- 少人数他グループの全員参加
- 全吹部部員が演奏の主役である意識付け
- 審査方法は観客と吹部部員自身の2通り設定
- 全吹部部員がコンクールで選抜される演奏と一般客に喜ばれる曲の違いを意識付け
- 少人数他グループの全員参加
そして滝先生3年目(久美子部長)は、更に幹事(久美子、秀一、麗奈)に権限移譲する形で部の運営を進める。コンクール曲選定についても、幹事に委ねられた。久美子部長の対応を下記に整理する。
- 久美子部長の対応
- ドラムメジャーの運用開始
- 上手下手関係なく全員を技術指導し底上げ
- コンクール曲は候補曲の中から幹事が選定
- 難度高の選曲
- コンクール練習を前倒し
- 難度高の選曲
- 各大会毎のオーディション
- 後から上達してきた奏者を汲み取る
- A編成から落ちる/合格する緊張感を持続
- ドラムメジャーの運用開始
久美子部長も全員合意の上「全国大会金賞」を目標とし、コンクール至上主義を貫くが、昨年度よりも練習期間も前倒し、練習対象者もB編含めた全部員に広がっており、かなりの技術指導を麗奈に負担させている。その練習量の増加が北宇治吹部を上達させるとともに、麗奈および部員達のストレス増加にもなっている。その部員のストレスをいち早く発見して解消するのが今の久美子部長の役目である。
北宇治吹部はこうした流れの中で、より尖ったコンクール至上主義に移行してきている事は、この決意の最終楽章を読む上で非常に重要なポイントである。成果を出すために、多大な練習(=ストレス)を吹部にかかっているので、一つ間違えば北宇治吹部が爆発する危険性がある。
コンクール至上主義と非コンクール主義はどちらが良いとも一概には言えない普遍のテーゼだと思う。現状の北宇治吹部はコンクール至上主義に寄りなので、その事に対する反動がまたあるのかも知れない。
武田綾乃先生は、このクライムアクションのような北宇治吹部の変化を綿密なプロットを作成して、丁寧に小説に書き落としているので、北宇治吹部が強くなってゆく経緯や、大会での勝敗に非常にリアリティがある。綿密なプロット故に、最終巻となる決意の最終楽章後編も綺麗に物語を決着を期待してしまう。
黒江真由
黒江真由の特徴おさらい
真由の特徴を今一度、整理する。
- いい子
- 清楚系美人
- 豊乳
- 素直で純粋、邪心が無い
- おっとりとしていて、出しゃばらない
- 小学生の時のあだ名はママ(=面倒見が良い)
- 裁縫できる(=器用、良妻賢母イメージ)
- 上手い奏者
- 抜群に演奏が上手い
- 清良女子で1年2年ともA編成
- マーチングでもスタミナ切れしない
- 異質
- 大量に写真を撮影するが自分の写真は写さない、自分の写真はぞっとする
- 無神経発言
- たかが部活、吹部を辞める子が居ても仕方ない(サンフェス前)
- 奏ちゃんは無理だと思ってたけど合格で良かった、北宇治の子が報われて欲しいから(府大会オーディション結果発表)
- ソリの練習していて奏に、変だったら指摘してね直すから(府大会前)
- 北宇治としての(府大会)本番は不思議な気分、と寂げな表情をして心を閉じる
無神経発言の黒江真由
久美子の「いい子と一言で表すにはあまりにも異質」という台詞。
真由の異質の中で一番目立つのは、(主に奏に対する)無神経発言だと思う。
真由は基本的に他人が羨むほどに全てを持っている。容姿、性格、演奏の上手さ、ケチを付ける所が無い。そして、強豪校の清良女子で二度も全国大会を経験している。
しかし、そのコンクールに対する思い入れは全く感じない。それは、初対面の時の「上手い人との合奏が好き」という台詞に象徴される。コンクールやオーディションの勝ち負けは、真由にとっては興味が無い、と思われる。
一旦、真由の無神経発言とその原因の考察を箇条書きで整理する。
- 真由の無神経発言の根本原因
- 勝ち負けに対する執着はゼロ
- 常に勝ち続けて来た側の人間だから
- 勝ち負けより、上手い人との合奏が好きだから
- 空気が読めない
- 他人の気持ちが分からない
- 他人の努力しても届かない「悔しさ」が分からない
- 常に勝ち続けて来た側の人間だから
- 真由自身が練習の苦しさを感じないから?
- 他人の努力しても届かない「悔しさ」が分からない
- 他人の気持ちが分からない
- 勝ち負けに対する執着はゼロ
今まで、演奏の下手な人が非コンクール主義を唱えても、それは下手だからで終わってしまっていたと思う。負け犬の遠吠えだと。
しかし、真由の場合、上手い人で非コンクール主義であり、北宇治吹部では珍しいパターンと言える。(実は緑輝も同じパターン)
その意味で、実は久美子部長にとっての脅威になり得る可能性がある。それは、真由が無神経発言で北宇治吹部の中でコンクール至上主義を否定する事である。
北宇治吹部に途中から参加したとはいえ、上手い人の発言は、吹部の中で大きな波紋を呼ぶ。現在の北宇治吹部は猛烈なコンクール至上主義で上手い人から下手な人まで全部員に対し練習でストレスをかけている状態。それを辛うじて抑えているのが久美子部長の心理カウンセリングによる人心掌握である。
真由の暴言一つで、いつ割れてもおかしくないパンパンの風船が、いとも簡単に割れてしまう可能性がある。その意味で真由は危険な存在なのである。
ところで、真由は北宇治吹部は清良女子ほどのコンクール至上主義では無いと感じていたフシがある。
京都に転校するにあたり、上手い人が多い強豪校を選ぶとなると、龍聖学園は男子校なので除外するとして、北宇治高校と立華高校があったと思うが、座奏では北宇治が上、立華はマーチングに注力しているが、真由はマーチングは好きではないので、その流れで必然的に北宇治を選んだものと思う。
真由は清良女子では各大会でオーディションをしてA編成で全国大会に2回出場しているが、北宇治吹部は少なくとも昨年まではオーディションは1回だけだったし、関西大会ダメ金止まりであったので、清良女子よりは練習は緩い、と考えていたのではないだろうか?
しかし、蓋を開けてみると、今年の北宇治は去年よりもコンクール至上主義寄りになっている。北宇治吹部の方針がそうなら、それに従い、コンクール演奏曲の練習に取り組む。清良女子と同じようにやるだけ。真由の対応はそういう流れに見えた。
その意味では、真由の無神経発言に裏は感じず、悪意なき真由の率直な発言に過ぎない、と思える。
写真に残りたがらない黒江真由
幼い頃から転校の連続、せっかく友達が出来てもすぐ別れる事を繰り返してきた。
大量の写真を撮る、という事は接した人との思い出を残したい気持ちだと思うが、逆に自分をその写真の中に残す事を「ぞっとする」という感覚とは、一体どんな気持ちなのか?
直球で考えれば「他人の記憶に残りたくない」という事になるが、それは何故か?
考えられる一つの可能性としては、過去に異性による悪質なストーカー被害にあい、それがトラウマとなり男性恐怖症となった。美人で性格も良いので変に勘違いしてしまう異性がいても不思議ではない。とりあえず真由から異性の話は出てこないし、転入日には、男性に告白した事は無い、とも言っている。
もう一つの可能性としては、例の無神経発言が原因で、恨みを買ってストーカー被害にあった。
いずれにせよ、何らかの交友関係でトラウマが出来てしまった。この仮説だと、友達と深い関係は作らない。友情に対してストッパーをかけていて、踏み込んだ友情は築けない。無神経発言が先か?深い友情が気付けない事が先か?鶏と卵ではあるが、その事が真由の人生の中で強固になっていったのではないか、と想像する。
いずれにせよ、真由が写真に写らないのは、心の底から相手を信用してはいけない、逆に言えば真由が心を開放したくても解放できない、という事だと思った。
府大会で北宇治吹部にためらいがあった黒江真由
真由はサンフェスの北宇治の衣装を楽しみにしていた。北宇治吹部に属したい、という気持ちに思える。
しかし、府大会演奏直前では、北宇治吹部として舞台に立ち演奏する事に躊躇があった。
この矛盾は何らかの伏線なのだろうが、現時点の考察では矛盾の理由について答えが無い。
真由の清良女子での2年間は、どっぷり清良女子としてのアイデンティティを持って演奏していたのだと思う。高校1年から始まるので、周囲もみんな清良女子のスタートラインに並んで、清良として走り続けて来た。その清良女子吹部のアイデンティティがあるから、北宇治吹部のアイデンティティを持つのに抵抗があるのか?
もしくは、コンクール至上主義に対する気持ちの反発があるのか?
後者の可能性が高そうな気がするが、この辺りを判断するには前編だけでは情報不足に思う。
黒江真由と田中あすかの対比
真由の立ち位置を他のキャラとの比較で整理してみる。
まず、真由とあすかとの対比。
相似点は、圧倒的な演奏の上手さと、得体の知れない恐怖感。相反点は、性格で、何事もキツイあすかと、物腰の柔らかい真由というところか。
久美子視点で真由があすかの印象と重なる描写が見受けられるが、上記の印象が重ねているだけなのか?実際にあすかと真由に何らかの因果があるのか?それは前編では判断できない。
黒江真由と黄前久美子の対比
相似点はあまりない。相反点は、コンクールに対する姿勢で、久美子(と麗奈)は、重度のコンクール至上主義で、真由はおそらく非コンクール主義(楽しく演奏できれば良い)だと思う。
なお、真由と久美子の演奏はどちらが上手いか?については、個人的には真由の方が上手い(=あすかレベル)だと想像している。府大会のソロが久美子になったのは、おそらく、麗奈や他の楽器との相性が良く調和がとれていると滝先生が判断したから、だと想像している。
久美子と真由の過去について少し触れておく。
基本的に久美子は真由の演奏の上手さに対して焦燥感を持っているが、後半では真由の事はいい子で好き、というニュアンスも出している。
しかし、当初の久美子の狼狽のしかたは異常であった。そして途中で頬をかく真由の表情を久美子はどこかで見た事があるという既視感に襲われていた。
ここは想像だが、久美子と真由は小学3年生以前に、東京の小学校で一緒のクラスになった事があると思う。真由は転校の連続でその事を忘れていて、久美子は当初思い出せなかったが、記憶の片隅に真由を思い出した。しかし、当初の久美子の直感で悪い印象が先行したのは、もしかしたら、久美子視点の真由の思い出が苦い思い出だったのかも知れない。
黒江真由と久石奏の対比
相反点としては、繊細で空気が読める奏と、無神経で空気が読めない真由、という事だと思う。
1年前、奏はオーディションで手抜きする事件があった。それは、人望熱い3年生の夏紀先輩が落ちて、1年生の自分が受かった場合、部内から白い目で見られる事を嫌い、自分が傷付きたくない、利己のために行った不正行為だった。本件は最終的には、久美子の説得により、北宇治吹部は実力主義だから、そんなことで白い目で見る部員は居ない、という事を理解してオーディションに全力を尽くし、夏紀も奏も合格するという円満解決で決着した。
この時の奏は真の実力主義を望み、人望などの非実力要素が合否に影響する事を懸念していた。
真由はオーディションの話を最初に聞いた時にオーディションを辞退できないか?と尋ねている。おそらく真由は勝ち負けやコンクールに対するこだわりがなく、純粋な親切心で久美子と奏に譲ろうとしたのだろう。このオーディションに対する手抜きが、奏(=北宇治吹部)に対する侮辱である。
そして、真由の演奏は圧倒的に上手い。だからオーディションで奏が負けても文句は言えない。
ただ、真由は奏の様な繊細な感覚は持ち合わせておらず、「奏ちゃんは無理だと思っていた」と発言してしまう。これもまた、奏をストレートに侮辱する事になるが、真由はその事に気付かず、奏はその事で傷付く。
まだ、府大会のオーディションで奏が合格しているから良いが、関西大会、全国大会のオーディションで何が起こるか分からない。奏は後編でオーディション不合格で苦渋を味わう可能性もある。
奏という人間は大会出場できるか否かの境界線上に立って、その結果で色々な感情を味わってきた。だからこそ一所懸命に練習に取り組み全力で演奏してきた。それはコンクール至上主義の社会で、必死に頑張る事の意義にも結び付く。
真由の無責任発言問題の根本は常に勝者で有り続けた事による上から目線にあると思う。奏の様に常に勝者と敗者の間を揺れ動く人間の気持ちに寄り添う事が出来るのか?というところが鍵になっていると思う。
また、奏にとっても真由との関わり合いは試練である。現状の真由を受け入れる必要は無いが、真由を改心させる事が出来るか?もしくは真由を拒絶するのか?
もっと言えば、奏は空気が読めるくせに他人に踏み込んでいる様子がない。久美子が他人と向き合うの様に、奏も他人とキチンと向き合う必要が出てくる。久美子と真由が引退すれば、後輩の佳穂を引っ張り上げるのは先輩の奏の役目になるし、そのポテンシャルは奏はもともと持っていると信じている。
個人的には真由と奏はお互い理解し合える笑い合える関係に落ち着いて欲しい、と切に願う。
黄前久美子(部長)
本作前編で久美子が部長としてきた事を整理する。
- 部長としてのミッション
- 早期に反乱の芽を摘み取る
- 沙里ケース
- 吹部に誘った子が辞めない様にフォローするのが辛い
- 久美子は沙里の頑張りを認めて褒める
- 吹部に誘った子が辞めない様にフォローするのが辛い
- 美玲ケース
- 府大会オーディション結果について滝先生の判断に不満
- 久美子は美玲を頼りにしていると褒める
- 府大会オーディション結果について滝先生の判断に不満
- 沙里ケース
- 早期に反乱の芽を摘み取る
今年のコンクール至上主義を貫くために北宇治吹部全体がかなりのストレス状態にある。そのストレスで吹部が爆発しない様に、反乱の芽を摘み取り、緊張状態を持続させるのが久美子の役目として描かれている。しかも結果的に、吹部全体のストレスを久美子が受け止める結果になっている。
しかも、ユーフォのソロを真由に取られるかも知れないストレスもある。もちろん部長としては上手い人が吹くべきとなるが、奏者としては是非麗奈とソリを吹きたい。
不安要素は吹部の緊張状態からの爆発で、その要因となりそうなのが、初心者の厳し過ぎる練習に対する不満と、真由の無神経発言である。
それらが抑えきれず爆発するのが、後編だと思う。
高坂麗奈(ドラムメジャー)
鬼のDMと呼ばれる麗奈だが、麗奈は麗奈で鬼に徹する事に無理をしていると思う。
コンクール至上主義を理屈では分かっていても、付いて来れない子にも等しく厳しく接するのは、指導する側にもかなりのストレスになると思う。
もともと、麗奈はサンフェス前に幹部ノートで「付いて来れない子を指導する必要あるか?」と書いていて、これに対して久美子が「脱落者を出したくない」と返事をしている。
麗奈としては、部長である久美子の要望に沿って一段高いストレスを受け入れた形だと思う。
麗奈は波乱の第二楽章でも吹部全体を見て、吹部の異常にいち早く気付いていた。その麗奈が、今の北宇治の異常なまでのストレス状態に気付かないハズは無い。おそらく、真由と久美子の事も気付いている。
でも、孤高の存在で有る麗奈は人前では凛として弱音を見せない。
ただ、その頑張りにも限界がありそうに思う。
塚本秀一(副部長)
仏の副部長と呼ばれる秀一だが、部長が緊張していて締まらないところ、適度な合いの手で部の空気を和らげている。
実際には男子に関して積極的に情報収集したり、久美子の様な反乱の芽を摘む事をしていると思う。あがた祭では男子全員で遊びに行っており、おそらく、それも他パートの男子と一緒の時間を取り、男子部員全員のぶっちゃけた気持ちを把握するためだと想像する。もちろん、男子は久美子がカバーできない、という考えでの役割分担なのだろう。
ただ、麗奈には秀一がその程度しか働いていない事が不満となっている。
昨年の体制では、無理し過ぎる優子部長を心配して、夏紀が代わりに動いて優子を休ませたりしていたが、そうした踏み込んだサポートは、久美子と秀一の間では行われていない。恋人関係をいったん解消しているという距離感もあるのだろう。多分、その事を麗奈は「意地張っているの?」と言いたいのだろう。
それから、秀一は幹部ノートで「退部する子を引き留められない、出来れば楽しく演奏したい」という気持ちを書いている。秀一はどちらかと言えばコンクール至上主義ではなく、本来、非コンクール主義側の人間なのだろう。
これまで大してストレスを受けていなそうな秀一さえも、エピローグでは、お盆休みまで夏季講習を受けていて、家庭内もギスギスしているストレスフルな状態が描かれている。
府大会まで秀一と麗奈は互いに違う考えを持ちながらも、久美子を助けると言う共通目的で、久美子の判断通り動いて来た。しかし、エピローグ最後の麗奈と秀一は別々の道を進み始めたという描写は、麗奈と秀一の仲たがいを暗示する。
おそらく、一時的に久美子と麗奈⇔秀一で喧嘩する事になるのだと想像。
久美子、麗奈、秀一の三角関係の崩壊と北宇治吹部の運命。楽しみではあるが、それ以前に胃が痛くなりすぎる。
おわりに
当初想定をはるかに超えた長文になってしましました。
じっくり読んでの考察・感想ですので、大体書きたい事は書き切ったと思います。真由は凄く好きなキャラなのですが、まだ深く考察されているところをあまり見ていないので、他の方の考察も気になります。
後編予想(=妄想)も書くつもりでしたが、あまりにも考察・感想だけで長文になりましたので、後編予想は、その3として後日公開します。