たいやき姫のひとり旅

アニメ感想など…

信長の忍び

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はじめに

たまたま、YouTubeの「TMSアニメ55周年チャンネル」で視聴した「信長の忍び」が非常に面白く、折角なので布教のためのブログを書きます。ショートアニメで気軽に見れますし、良い作品なので、是非観て欲しい作品です。

なお、2019.6.9時点で、下記の動画が無料公開されています。本ブログは下記を全て観ての考察・感想になります。

考察・感想

概要

ショートアニメというフォーマット

本作は、1本=3分30秒(OP50秒+本編2分40秒)のショートアニメなので、サクサク見れる。

4コママンガ的なシンプルで可愛いキャラ

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原作絵を何段もリファインしたかのような綺麗な線でデフォルメされていて、とても丁寧な仕事だと思う。単純に分かりやすい絵というよりも、アニメ向きの一切の無駄が無い究極のデザインの領域にきているような雰囲気さえ感じる。

私が本作から連想したのは「元祖天才バカボン」などで活躍されていた芝山努さんの洗練されたキャラデザインと動きである。TMSの前進は東京ムービー新社であり、この作品も手掛けていたが、そのテイストを連想する。最近では、ここまで一昔前のマンガ的なデフォルメを少ない線でアニメ的に洗練させたテレビシリーズ作品はあまり見かけない。

綺麗で良く動く作画

基本は4コママンガなので大して動かないのだが、細かな所や、肝心の合戦シーンなど、かなり動いていて驚く。その動きがまた、アニメーション的に気持ちが良い。

下記は第6話の桶狭間への出陣のシーンだが、小さくて重い甲冑を背負った馬が人間よりも遅いというシーンで馬鹿正直に馬のギャロップを動かしていたり、合戦の活気を描くためのモブも枚数は少ないが、勢いを感じさせるように動かしている。

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下記は第7話で千鳥が桶狭間の前線での殺陣シーンだが、わずか5秒だが瞬殺で兵士を倒しまくる映像をキッチリ動かしている。

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こうした動きまくるシーンは毎話毎話というわけではないが、動いて欲しいシーンをキッチリ動かしてくれるという安心感は大きい。

物語は戦国時代の歴史そのもの

本作の原作マンガは執筆時点の最新の史実に基づき作品に織り込んでいると聞く。その意味で物語は、歴史そのものなのだろう。

本作に脚本のクレジットは無い。おそらく、大地丙太郎監督がある程度、シリーズ構成的なところもやられているのではないか?と想像する。

物語(=歴史)とは別に、エンターテイメント作品として、ドラマを作り込んでゆく必要があるが、本作はそのドラマ作りもキッチリしていて、観ていて安心できる。

テンポよく笑える演出

ショートアニメゆえに尺が短く、映像としては詰め詰めである。高密度だがテンポよく次々に切り替わる気持ちよいカットの数々は、4コママンガの笑いの演出にとてもマッチしている。

本作はギャグ作品と言えるが、戦国時代という戦の時代を描くシリアスな面も持ち合わせている事が特徴でもあると私は考えている。千鳥の可愛さ緩さと、忍びとしての強さ非情さも、この緩急のうちの一つである。

笑いの基本は、緊張と緩和の緩急の落差により生じると思う。本作は緊張と緩和が上手く描けているから、見ていて自然に笑いがこみ上げてくる。この辺は、平和なだけの4コママンガとは一味違う魅力だと思う。

また、千鳥を中心とした人間ドラマの部分も、ときおりチラチラ描いており、油断していると泣ける。

主人公千鳥の二面性のバランスの妙

千鳥は女性でありながら、戦国時代の最前線で敵を殺しながら、信長のために命懸けで戦う。しかも、殺陣をしている時の千鳥の表情と言うのはある意味、無表情とも言えるマシーンとして描かれているのが、印象的でもある。

ただ、こうした主人公の女子が可愛いにも関わらず、殺人を繰り返す設定と言うのは、アクション物としては魅力的でありながら、ドラマ的には主人公に感情移入しにくい面もあり、戦う理由や、人間的な面をどう描くか?というのは作劇上の課題とも言える。

これに対し、千鳥のこれらの意識というのは、ショートアニメという制約の中でかなり丁寧に描かれている。

  • 第8話
    • (戦場で)女子が人を斬るのは怖くないのか?
      • 怖くないです、だけど嫌です
        • 嫌だけど、戦いが信長が目指す天下泰平に近づくために、そう信じて戦う
  • 第12話
    • 千鳥は少しでも情が移ると人を殺せない
      • 怪我して倒れていた千鳥を助けてくれた竹中半兵衛を殺せなかった

先ほどの演出の話でも少し触れたが、こうした人間味ある部分がある事で、千鳥の葛藤に触れ、千鳥の心に寄り添えたような気分になれる。

こうした、ある意味、泣きのドラマの部分も、丁寧に作る事。千鳥の殺陣アクションのシーンがアニメーションとして良く動く事。そうした全ての丁寧な仕事がショートアニメという制約の中でもキッチリ仕事されている所に、本作の凄みを感じる。

スタッフ

監督:大地丙太郎

監督は、大地丙太郎さん。私の印象では「十兵衛ちゃん」のイメージが強くて、この作品も時代劇特有の台詞や芝居のカッコ良さ、演出の間、とにかく動きまくる作画のイメージがあった。本作は4コマ漫画原作ではあるが、その芝居のカッコ良さ、動きの良さは継承している様に感じた。

キャラクターデザイン・総作画監督山中純子

キャラクターデザイン・総作画監督は、山中純子さん。とにかく、キャラが可愛い。渋いはずの信長さえも可愛い。キャラの所でも書きましたが、非常に良い仕事をしていると思います。

おわりに

少し前に「フライングベイビーズ」というショートアニメについての感想ブログを書きました。ショートアニメが連続しますが、「フライングベイビーズ」はショートアニメの中でかなり例外的で新しいアプローチをしている作品でしたが、本作は、真面目に丁寧にショートアニメを作るという、ある意味、真逆のスタンスの作品です。その意味では、「若女将は小学生!」に近いです。

目新しさは無いけど、馬鹿正直に丁寧にアニメを作る。そして、そういう作品を応援したい。という気持ちでブログを書きました。

ここの所、頭で考える作品が多かったので、このシンプルに自然に笑える作品、と言うのがツボにはまりました。