たいやき姫のひとり旅

アニメ感想など…

バジャのスタジオ

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ネタバレ全開につき閲覧ご注意ください。

はじめに

11/4のNHK総合にて「バジャのスタジオ」のOAが決定しました。

私は2019年3月に、YouTubeで期間限定無料公開されているときに本作を視聴しましたが、非常にクオリティが高く、楽しい作品だと思いました。

7.18事件があって、11月の追悼行事があり、NHKでのOAになったのだと思いますが、個人的に、みんなにもっと見てもらいたい作品だと思っていましたので、この機会にブログに書き残す事にしました。

考察・感想

概要

本作は、京アニの長さ21分のオリジナル作品ですが、その最大の特徴は、京アニファンのために制作された作品である事だと思います。

本作は、2017年秋の、第3回京アニ&Doファン感謝イベント記念商品の「私たちは、いま!!全集2017」に収録され、イベント会場でも上映されてました。

スタッフロールを観ると、一般的な商用アニメとの違いにいくつか気付きます。

監督は三好一郎さん。脚本、演出、絵コンテはクレジットに無いため、三好一郎さんがいきなり絵コンテから作ってしまったのか?

また、原画のクレジットはありますが、動画のクレジットがありません。(動画検査はあります) これも原画マンが動画も全部やったのか?

そして、クレジットされる京都アニメーションALLSTUFFと、アニメーションDo ALLSTUFFの大量のスタッフ。もしかしたら、全社員何らかの形で本作にタッチしてるのか?

この辺りは調査不足で想像でしかなく、真偽のほどは分かりません。しかし、一般的な商用アニメとは毛色の違いを、明確に感じさせます。

作画

キャラは丸っこくて可愛いくて、背景は淡い感じの水彩調で、全体的に、ほのぼのした作風にマッチした設計です。

京アニクオリティそのものの動きの気持ちよさは、本作の特徴です。人間のキャラも可愛いのですが、バジャの小動物的な可愛らしさ、ココのキュートな可愛らしさ、それらは動いてナンボな可愛らしさです。

物語・テーマ

本作の登場キャラは、3つに分類分けできます。そして、それぞれのキャラは、他の分類のキャラと何かを与え合う関係にあります。

  • (a) 小動物(=京アニファン)
    • バジャ、ガー、野良猫
      • バジャは、監督カナ子に癒しを与える。
  • (b) 小さい人たち(=京アニ作品)
    • ココ、ギー
      • ココは、魔法でバジャに勇気を与える。
      • ココは、魔法で監督カナ子のストレス発散した。
  • (c) 大きい人たち(=京アニスタッフ)
    • 監督カナ子、作画監督石浦、etc
      • 監督カナ子は、バジャに餌を与える。
      • 監督カナ子は、ココやギーに命を吹き込む(アニメ作品を作る)

バジャは、KOHATAスタジオに飼われているハムスター的なペットですが、一匹しかいないため基本独りぼっちです。だから、外にいるアヒルのおもちゃのガーと友達になりといと思っています。そして、野良猫がガーを咥えてしまう場面を見て、慌てて助けなきゃ、と思います。

ココは、ほうき星の夜に活動できるという設定で、真夜中の誰も居ないスタジオの中で突然動き出し、バジャに魔法と勇気を与えます。途中、悪役のギーに邪魔されるなどのアクシデントはありますが、最終的には、ギーもおもちゃであるガーに命を吹き込みます。

監督カナ子は、作品の品質、日程と戦いながら、良いアニメーションを作ろうと日々頑張っています。が、スタッフやプロデューサーの圧力、調整にストレスを溜めています。面白いのは、人の居ない真夜中のスタジオの中でココとギーが戦っている時に、ココは監督カナ子を召喚させて、キャラデザ佐々木の描いた敵キャラのデザインに大きな声でダメ出しさせます。これが、監督カナ子の夢の中のストレス発散になって、リフレッシュした気持ちで仕事に向かう事が出来ました。

つまり、監督カナ子→ココ→バジャ→監督カナ子というループ関係で、与え合っている関係にあります。

そして、監督カナ子は、アニメ作品を作る事でストレスを溜める反面、そのストレスも出来上がるアニメ作品により、救われます。

そうした、京アニスタッフと京アニ作品と京アニファンの関係をテーマにした作品だと言えます。

EDは「ぼくらはみんな生きている」です。

アニメーションが動きを与えて命を吹き込む仕事だとすれば、アニメーションの目的が生かす事であるとすれば、スタッフも作品もファンも、みんなが生きている事が、アニメーションにとっての喜びなのであると。スタッフもファンも日常の中でストレスやピンチを抱えていても、アニメーションが勇気を与えてくれたり、ストレスを解消してくれたりするのだと。

そうした、アニメーションの希望が本作のテーマだと感じました。

ドラマ

先ほど、物語で触れたイメージだと、ゆるふわファンタジーを想像するかも知れませんが、意外とメリハリのある緊張感ある展開です。

ヒルのおもちゃは野良猫に食べられる?危険をはらんでいましたし、果敢に野良猫に挑んだバジャでしたが、野良猫に殺される危険はありました。ココは、ギーと真夜中のスタジオで戦っていました。監督カナ子は、監督としてプレッシャーの中で仕事をしていました。

そうした緊張感やピンチにあって、勇気だったり、誰かの手助けだったりで、目の前の障害を乗り越えます。

そうした、サスペンスというか、ドラマの盛り上がり部分は、流石に手練れた感じで、演出のキレも見事です。

続編について

続編の「パジャのスタジオ~バジャのみた海~」について、2019.7.8にYouTube上にPV1がアップロードされています。

何も無ければ、2年前の本作同様に、2019年秋にはファン感謝イベント記念商品になるハズであったことが、動画の最期の告知に記載されています。

多くは書きませんが、続編も観られる日が来ると良いな、と思います。

おわりに

本作は、京アニファンに向けた作品でしたが、もっと広くアニメーションの作り手とファンという広い視野で観る事が出来る作品です。エンターテインメントとして作品に夢や希望を乗せて、作り手もファンもアニメーションを媒介にお互いに何かを与え続けている。

だから、アニメーションにハマっていない人も、この作品で、アニメーションの楽しさや力が伝わればいいな、などと思って見ていました。そして、この機会により多くの人が観てくれたら良いと思います。