たいやき姫のひとり旅

アニメ感想など…

バミューダトライアングル ~カラフル・パストラーレ~ 1話~5話

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はじめに

2019年冬期アニメの「バミューダトライアングル ~カラフル・パストラーレ~」(通称、カラパレ)について、熱く語りたい気持ちがあり、本ブログにまとめます。

SNSの感触では、本作は一般のアニメファンには低評価になっていると思われますが、一部のファンには「癒される」として支持されています。率直に言って、好き嫌いの別れる作品だと思いますが、表層だけで判断して視聴しないのは勿体ない作品です!

なので、良い点と悪い点、どのような人におススメで、どのような人にはオススメしないのか?というのを整理してまとめます。

キャラクターの考察・感想を追記しました。(2019年2月23日追記)

ちなみに、本作はAbema-TVでメンバ登録なしで過去全話無料で視聴可能(2019年2月時点)ですので、興味を持った方は、直ぐにでも視聴して頂ければと思います。

2019年2月23日時点で、Abema-TVの過去全話無料は終わっていました。2月23日~3月3日まで期間限定で1話から7話がYouTubeヴァンガードChで視聴できますので、こちらで視聴してみてください。(2019年2月23日追記)

考察・感想

本作の概要

まず、本作のバックグラウンドについて。

本作はブシロードのカードゲームのクランの1つであるバミューダ△の世界観の中での物語。バミューダ△は、惑星クランの海洋国家メガラニカに所属するアイドル人魚達の事。そして、下記PVには本作について「マーメイドたちがアイドルになる前の物語」と記される。

本作は、過疎の村パーレルに住む4人のマーメイドの元に、都会から来た1人のマーメイドが加わり、5人一緒に過ごす日常を通して、仲間と一緒にどきどきわくわくする事の楽しさ、大切さを描き出す。

本作のテーマ(感動する気持ち、尊重する個性)

本作が描くモノ、描かないモノ

ずばり、本作のテーマは、以下の2点。

  • どきどきわくわくする喜び
  • お互いの個性を尊重し認め合う関係性

そして、本作はこのテーマだけを見せるために、一般的な作品で扱われる下記の要素を意図的に描かない。

  • 競争や争い
  • 努力と根性
  • 異性間の恋愛

この事を受け入れられるか否かが、本作に共感できるか?の重要なカギになる。

意図的に描かれない、競争や争い、努力と根性

今までアニメ作品で、よくあるのは全国大会優勝だとかの目標に向かって突き進む姿を描いたり、解決必須な課題を持っていて課題を解決する姿を描いたり。そこには、切磋琢磨だとか、もがき苦しむだとか、努力と根性とか、そうしたモノがドラマとして描かれる。

それは、視聴者自身も何らかの目標だったり、課題だったり、そうしたモノを持ちながら生きていて、作品内のキャラに共感したり、目標達成や課題解決のカタルシスに感動したり。そうした作品を知らず知らずのうちに視聴者も求めてしまっていたと思うし、マーケティングとしても、その方が作品が売れると判断されてきたのだろう。

ところが、本作にはそうした要素が全くない。

例えば、4話でマニュアル通りに整備したのに映写機がうまく動作しなかった件について、最終的には偶然見つけた部品のずれを正しただけで直った。努力や根性が問題を解決するようには描かれない事が徹底されている。

存在しない、異性間の恋愛

これについては、マーメイドと世界観の設定の説明が必要になる。

マーメイドが全員女性。しかも、もっとも高齢の存在と思われる、首長のアルディでも見た目は30歳くらいの若い女性に見える。すなわち、マーメイドは外見的には幼女から三十路くらいまでの美女ばかりで、男性や老人のマーメイドは居ない。(もっとも、男性的なキャラは、アザラシやマンタの様にマーメイド以外のキャラとして登場する)

もう一つ重要な設定に、マーメイドは貝殻(シェル)から生まれるという設定がある。すなわち、マーメイドは生殖行為により子孫を増やすのではなく、異性間のセッ〇スが存在しない設定。

ちなみに、姉妹という概念は存在し、同じ貝殻から生まれたマーメイドは貝殻姉妹(シェルシス)と呼ばれ、互いに血のつながりにも似た深い関係性を持っている。

仲良く過ごす日常を、ゆっくりポジティブに描く

なので、本作は、競争や争いや恋愛が無い世界で、仲良く日常を過ごすだけの物語になる。

例えば、友達と今日はどのケーキを食べるだとか、村全体が良く見える場所で美味しいモノを食べるとか、そうした事が延々と描かれて行く。全く持って平和な世界。

そんな中で、描かれる思いやりのドラマ。

都会の生活について語りたがらないカノンの気持ちを察して、話題を変えようとするソナタの優しさ。

苦手な裁縫でワンピースをボロボロにしてしまったセレナとカプリに対して、失敗を怒ることなく、セレナの言い分を聞いて、セレナと一緒に新しく裁縫し直しながら、昔からのセレナの励ましがあっての私、とポジティブに優しいフィナ。

彼女たちは、個性的なキャラを互いに否定する事無く、互いを尊重し、楽しい方向に話を進める。

そして、大人たちもソナタ達の自主性を重んじて彼女たちを見守るだけ。時に危険行為を注意したり、時にやるべきことを促したりするけど、命令はしない。

さらに、ソナタ達自身も、さらに幼い子供たちの面倒を見る。

本作には、そうした他者や、目下の者への思いやりに満ちている。

このような、ストレスフリーで思いやりに溢れる世界観が、「癒し」とか「優しい世界」と評価されており、これこそが本作の醍醐味である。

本作は、良心的な子供向け作品とも言える。

個人的には、昔、Eテレで放送していた「にこにこプン」の世界に非常に近いと思う。ガキ大将のじゃじゃ丸が居ても、その個性も認めて、みんな仲良くわいわいして過ごせる世界。(例えが古すぎて恐縮ですが)

中高生、大人になった視聴者が、今、「にこにこプン」を観て楽しめるのか?というのと似ていると思う。

ゆったりした物語、地味ながら丁寧なドラマ

1話から5話にかけての物語のポイントは下記の2点

  • 都会から辺境のパーレル村に来たカノンが、ソナタ、キャロ、セレナ、フィナの4人と友達になる
  • 閉鎖された映画館の映画に感動し、再び見るために奔走し、最終的にパーレル村で上映会を開き、感動を共有

物語的には大した事はしていない。ただ先ほど書いた通り、日常を過ごす中での5人のやり取りのドラマは、丁寧に作られており見応えがあると思う。

本当に日常を過ごすだけで、何も進展しない物語に、肩透かしをくらったり、いらいらしたり、全くフックを感じない、と思う視聴者が居ても無理は無いと思う。

でも、そうした目立った展開が無くても、本作は3話でカノンの歓迎会をしたり、4話でセレナがさらに壊したカプリの服をフィナが個性的に修理したりという、大仰ではなくても、物語としては些細だけども、ドラマとしては十分。

5話では、上映会を全て5人で準備して成功させるという、明確な目標と達成があったので、物語としては見やすかった。

1話から5話は、パーレル村で映画の上映会を開催し村のみんなと感動を共有する所で一区切りがついた形。

しかし、カラパレの6話以降について、ブシロードTCG戦略発表会で、新たなキャラが登場するとか、マーメイドに足がはえたりするとか、地上ではセレナが小さくなるとか、いろいろ変化がありそうなので、歌姫(アイドル)になるための、物語が加速度的に動き出す可能性が高い。これはこれで、楽しみ。

*

平凡であまり動かない作画

率直に言って、作画にこれと言って見所はない。作画崩壊では無いが、美麗という事はない。動きも低予算アニメという感じでごくごく低カロリーに作られている。

背景は、ファンタジーの世界を描くのに、良い雰囲気を出していると思う。背景設定も可愛らしくて良い。

キャラデザに関しては、精密な原作絵のディティールをバッサリ落としスッキリしたデザインになっているが、キャラに合わせた服装の可愛さもあって、良い所に落ちつけていると思う。

しかし、SNSで、瞳が三角だという事に違和感を感じる、という意見も散見されるので、ある程度クセのあるデザインという事なのだろう。

動きについては、正直に言えば、作画的に原画や動画に粗さは感じる。

ソナタ達はマーメイドなので、二足歩行ではなく、海中を泳ぐ事になる。これがジブリなら徹底的に「泳ぎ」の動きを描く所だが、本作は軽く尾びれを揺らしながらスライドさせる程度の低カロリーな作画である。何なら、止め絵をスライドさせたまま移動を表現したりしている。

動きによるリアリティの追求は本作には無い。なので、作画命の人の評価は低くなると思う。

ただ、本作は、作画をある程度に見切っているのは、必ずしも悪とは思わない。

後述の演出にも書くが、高カロリー故に視聴者の意識・快感がが作画に集中してしまうのに対し、敢えて低カロリー作画で、本質的なドラマの方への意識の集中を促している効果もあるとのではないか、と考えている。

ぶっちゃけ地味だが、丁寧な演出

演出もまた、率直に言ってキレは無く、ぶっちゃけ地味である。

そこで伝えるべき事を、ごく普通に愚直に演出している、という感じ。最近の作品の詰め込み気味でテンポある演出からは程遠い位置にある。

ただ、私は本作を観続けていて、これはこれで有りなのかも、と思った。

それは、子供にも伝わる様にオーソドックな演出を心掛けている様に感じたし、テンポの無い演出は、過疎の村パーレ ルのゆったりした時間を表わしているのかも、と思ったから。

例えば、3話でカノンが寮で一人でお留守番をしながら暇を持て余してゴロゴロするシーンがあり、その後、フィナの後を追ってみんなの所に行こうとするも、迷子になって荒れ狂う海流の前に独りぼっちになって立ち止まり、最終的にはソナタが迎えに来てくれる、というシーン。

最初に見た時に、何故かゴロゴロしているシーンの尺が長く感じたし、感突に恐怖の海流のシーンが挿入されたように感じたし、気持ちが合わせにくいなぁ、と少し感じていた。

が、退屈というのは時間が余っているから退屈なのだし、海流を前にした恐怖のシーンは、他の4人と離れて独りぼっちになっていた時間、都会のストレスから逃げてきた不安な気持ちを持つ背景を描き、その後、カノンが5人いっしょにここに居たい、と言わせる感情の流れを、丁寧に描いていた。

脚本が言いたい事を、奇をてらう事無く丁寧に演出しているように感じる。

これは少し偏った見方だが、本作が作画的にも演出的にも低カロリー低コストなのは、低予算的な背景だと思うが、この詰め込まない映像というのは、逆に本作に合っているとも言える。さざ波の様な感情でも、ポジティブだけの感情でも、本作のようなドラマは丁寧に描けるのだと、思う。

不思議な雰囲気の設定・世界観

マーメイドの設定については、テーマの所で触れた。

深海に住むマーメイド達は、ティーカップで湯気立つ紅茶を飲み、クラゲを金魚鉢に入れて体力回復させたり、サクサクのメレンゲのお菓子が出たり、という突っ込みどころ満載の設定に、耐えられないという意見もSNSで拝見したが、まぁ、個人個人の耐性の問題はあるのだと思う。

個人的には、その程度の緩い設定は、全然許容範囲で、ドラマを追いかける方が重要なので、気にもしていなかった。

おそらく、マーメイドは陸に上がる事が出来る設定があるので、地上の生活に近い感覚で描きたかったのだろう。

惑星クレイというのは、魔法と科学が存在する星。物語の所で公式ツイッターの埋め込みで触れているが、深海に住むマーメイドは、魔法の力で地上に上がる事が出来る設定。下記はその関連のアイテム。

  • トゥインクルパウダー:尾びれを「人間の足」に変えられる魔法のアイテム
  • プリズムパール:身につけると地上でも声が出せる

これは、バミューダ△の昔からの設定。6話以降は、この設定で猛威を振るいそうな予感。

キャラクター

ソナタ

ソナタの良いところは、誰にでも気遣いが出来るところ。逆に、自己主張は弱めで、主人公っぽくない。

そういう設定なのに、ソナタは背が高くて、少しつり目で、服装もどちらかと言えばイケイケで、性格とキャラクターデザインのギャップを感じていたが、すぐに見慣れてしまった。

1話ではカノンの結晶が割れる所を全身で抑えていて、その事でカノンに気に入られる。都会の事を話したがらないカノンの気持ちを察して話題を逸らしてあげるのがソナタの優しさ。その事で助けられるカノン。

もしかしたら、ソナタか感じる幸せというのは自分自身の中にではなく、みんなで気持ちよく過ごすという事が一番の幸せななのかも知れない。

もう一つ忘れて話ならないソナタの特徴、本作のテーマである、どきどきわくわくに対する強烈な憧憬。

ソナタは1話でキネオーブと映写機が映し出した映像に一目惚れし、魅了され、自らの意志でもう一度見たい、出来るならみんなに見せてあげたい!と願った。他のみんなも、ソナタにしては珍しい強い主張に驚きつつも、一緒に映画館のために働いてくれた。

最終的にソナタ達は歌姫(アイドル)になるので、その「びっくりワクワク」を「5人いっしょ」にという根底の部分を強く感じさせるソナタ。その意味でソナタが5人の中のエンジンであり、ハンドルの役割を持つ事になるのかもしれない。

カノン

アトランティアでの都会のストレスから結晶化してしまい、アザラシ郵便でパーレル村に送り付けられてきたカノン。

カノン自身は歌が好きだとか、歌姫(アイドル)のスカウトに合っていたとか、ステージ上で声が出なくなる悪夢を見たりとか。おそらく、歌への憧れと不安の両方を持つ事が、カノンの心の中で消化しきれない問題として内在している。

カノンは都会で育ち、行儀が良くて、言葉使いもしっかりしている。ただ、その敬語気味な言葉使いはある種のバリアでもあり、無意識に相手と距離を取るガードなのかも知れない。

そんなカノンの心にリーチしたのはソナタの優しさ。結晶化が解けたのもソナタが結晶の外から呼びかけてくれたから。ソナタは、都会の事を触れられたくないカノンの気持ちを察して話題を変えたり、優しい気遣いを見せる。セレナはカノンにとって特別な存在。

3話では、そのカノンが自らの意志で、自分に自信が無くて不安で都会から逃げてきた事、だけど今はパーレル村でみんなと一緒に過ごしたい!と宣言したのは、多分、カノン自身のバリアを自ら無効化して裸でぶつかって行く事であり、そうした5人いっしょの出来事がカノンの心の耕して、栄養になっていくのだろう。

カノンが面白いのは、悪気なく客観的に冷めた発言をしてしまうところ。3話でソナタの演説を「ちょっと、こじらせていますねぇ」とか痛烈なツッコミが冴える。

美味しい食べ物が大好きなで、抗う事が出来ないところも可笑しい。

今後、歌姫(アイドル)に向かって、少しづつ、歌へのプレッシャーや不安を5人で溶かしてゆくのだと思うが、どのような展開になるか?後半が楽しみ。

セレナ

唯一の理系。少しオタクっぽくて喋りが固い。ボケた相手にツッコミとしてチョップする癖がある。裁縫や料理は苦手。不器用を気にしている。

ただ、セレナは粘り強く諦めないし、合理的に的確な指示が出せる。

4話でカプリの服の件で、カプリが得意なモノが一つもない不安に対し、裁縫が苦手なセレナが、カプリと一緒に裁縫で成功体験をさせれば、カプリの自信に繋がるという目論見があっての無謀な裁縫だったのだと思う。 無残にも裁縫は失敗したけど、セレナにはそういう優しさがある。

普段は、男の子っぽくて女子力ゼロな雰囲気だけど、4話ではこうした、ふとしたセレナの優しさに、あ、可愛いな、と思ってしまう。

結局、フィナに裁縫を任せようとしたが、フィナの一緒にやる事がいいんだよ、という台詞にセレナも軽く怪我しながら裁縫を完成させた。5話でも映画館スタッフのタスキをフィナと一緒に裁縫している所が良い。

当初、セレナはチョップで乱暴で偉そうな印象を持っていたけれど、こうしたカッコ悪くても相手の立場や目線に合わせて接する事が出来るのが良いと思う。

フィナ

裁縫も料理も得意。美味しいお菓子を作ってみんなに喜ばれている。女子っぽい可愛さに満ちている。

ただ、片付けが苦手でタンスの中に押し込んでしまう、だらしないところをセレナに注意されていた。全く隙が無い完璧な女子ではないところが良い。

ホラー映画が好きな意外な一面もある。

全てのおいてセレナとは対照的な性格だが、フィナとセレナは貝殻姉妹(シェルシス)であり、互いを尊重し、互いを補う関係にある。

「映画はひじきサンド」という名言。

みんなで一緒に食べるひじきサンドが一番美味しいのと同様に、映画もみんなで観るのが一番、映画選びが大変なら一人じゃなくみんなでやればいい、という意味で、それを言語化した時に出た台詞。フィナの頭の中は、理論よりも感性が優先。フィナらしいエピソード。

キャロ

いつも元気で賑やかし役のキャロ。カノンと同様にお菓子が大好き。

カノンに届けられたお菓子のおこぼれにあずかろうとしたり、お調子者の一面もあり、忍耐力は低そう。

印象的で好きなエピソードは、5話の上映会で上映するキネオーブが選べずに泣き出してしまうシーン。

沢山あるキネオーブを前にしてどれが最適解か分からなくなってしまい、その上、他のみんなは放送だったりビラだったりポスターだったりキッチリ準備をこなしていて、自分だけ何も出来ていない焦燥感もあり、思わずキャロの目に涙が溢れてきた。

キャロは1話でもタルトを選ぶつもりで、いざ店に来たら他のケーキと迷うというシーンがあった。どれも良いと思うと選べなくなってしまう。欲張りで、割り切りが出来なくて、そうした自分に素直過ぎるところが子供っぽくて良い。

本作では、大人になると生きるのに慣れてしまって、自然に無くなってしまうこうした感情について、丁寧に描いているのが良いな、と思う。

参考情報

おわりに

締まらなく、長々と書いて来てきましたが、本作をオススメするターゲットは、ずばり下記です。

  • 癒し、ストレスフリーな作品を求める人
    • ストレスがゼロな作品でも面白く感じられる人
  • 低カロリー低コストアニメでも作品を観れる人
    • アニメをプラス査定で観れる人(マイナス査定だけで観ない人)

少し考えて見ても、2019年現在で、このような企画が通ること自体、とても不思議で奇跡的な事の様に思います。

先にも書きましたが、私は本作が埋もれるのは勿体ないと思うので、興味を持てた人は、このブログに書いてあることは本当なのか?是非、鑑賞してみてください。