たいやき姫のひとり旅

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響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、決意の最終楽章 前編

ネタバレ全開です。閲覧ご注意ください。

また、ちょくちょく後編予想も書いています。他人の予想は見たくないという人も、閲覧ご注意ください。

はじめに

待ちに待った、久美子3年生編である、「響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、決意の最終楽章 前編」の感想・考察、後編の予想をまとめます。

久美子の最後の活躍が読めること、素直に嬉しいです。

私は、事前にあらすじで触れられていた、福岡の強豪校である清良女子からの転入生、黒江真由の事が気になって仕方がありませんでしたが、実際に読んでみて、かなり彼女に惹かれました。

そして、後編は間違いなく、真由が台風の目となり、今まで他人のドラマを第三者視点で見続けてきた久美子が、ドラマの主人公になります。

その前フリである、前編について整理してゆきます。

本作のテーマについて

コンクールに対する様々な想いと温度差

本シリーズは、コンクールに対する様々な人々の想いを描きてきたし、本作前編も、その事に正面からぶつかって群像劇を描いていた。

今回のコンクールに対する気持ちは、以下の二つ。

  • (a)全部員が全力を尽くす(麗奈、久美子、修一、その他多くの北宇治吹部部員)
  • (b)初心者を除いた部員が全力を尽くせば良い(沙里、真由)

(a)は、2年前に滝先生が顧問となり、弱小だった吹奏楽部が強豪に変化できる事を体験した北宇治吹部部員たち。脱落者を出さずに全員一丸となって頑張る事が高みを目指す事になる、と信じている。

しかし、今年は更に厳しい事情が追加される。麗奈の鬼指導、昨年度よりも高難易度の楽曲選び。昨年よりも練習が厳しいのだから、付いて来れない部員が出て来てもおかしくない。

(b)は、A編成に入る気が無い人はそこまで頑張らなくても良いのではないか? 全力を尽くす=怒られてばかりで音楽が嫌いになるし、下手な子のやる気を削いでまで練習してもマイナスでしかない。

毎回の事だけど、この命題に正解は無い、と思う。そのチームごとに顧問と部員が手探りで、より、そのチームにベターな回答を模索する、という類のモノではないかと思う。決してゼロイチの世界では無い。

これは物語なので、滝先生と北宇治吹部のポリシーが、他校に勝つか負けるか、という結果を描くと思うし、納得できそうな理由も描いてくれるのだと思うが、それが、他校や現実の高校でも最良のポリシーになるとは限らない。

この正解の無い命題に対する、気持ちのぶつかり合いが、ドラマとなり、物語を紡ぐのだと思う。

キャラクターの考察・感想

黄前久美子(部長)

久美子の問題

3年生になった部長の久美子の問題を下記に整理する。

  • 極度のストレス状態にあること
    • 全国大会金賞を狙う部長としてのプレッシャー
      • 問題の芽を早期に摘み取る役目の重さ
    • ユーフォの凄腕奏者の黒江真由と比較されるプレッシャー
      • ただの良い子ではないと感じる、底知れない黒江真由への恐怖
  • 進路未定なこと

吹部部長としてのプレッシャー

久美子は吹部部長として、心理カウンセリングで迷える子羊の心に言葉を届け、安心を与える事で、不穏要素を未然に取り除き、吹部全体の安定を保つ。

今回も、沙里の心のケアをして、沙里が潰れたり、1年生の不満の爆発を事前に防いだ。

その描写は、波乱の第二楽章の黄前相談所で描かれた時と同様、一歩間違えば、相手を潰して全てを台無しにしてしまうかもしれない、薄氷を踏むが如く繊細な仕事であり、読んでいるこちらの方が胃が痛くなる緊張感で描かれる。だから、その問題が解決方向に向かう時の解放感が凄い。その瞬間の緩急の差。久美子が相手にかける言葉の適切さに感心する。

でも、こうしたカウンセリングが久美子のストレスを蓄積させる。沙里の件でも、何かあったら、また相談して、という事であり、いつまた再燃するか分からない火種である。

黒江真由と比較されるプレッシャー

清良女子でもA編成だった真由のユーフォの確かな実力。しなやかで強い音。久美子はその実力を認めている。しかも、真由自身はとても良い子で、悪意が無くて、好感度の塊のような容姿と性格。

久美子は府大会のオーディションで、ユーフォのソロを真由に奪われる可能性を考えてしまい、久美子がソロの方がいろいろ安泰で良いという噂話も聞いてしまい、いろいろな情報の中で、自信を無くし、滝先生への信頼も揺らぐほど自分自身を追い込んでしまった。

久美子にとっては、真由の演奏技術、良い子である事、そうした真由の魅力の全てが、久美子が欲するユーフォのソロを脅かす恐怖に感じているのかもしれない。

久美子の中の葛藤

久美子には以下の二つの立場がある。

  • 部長としての久美子
    • 北宇治吹部を全国大会金賞に導く
    • そのために一番上手い人がソロを吹く
  • ユーフォニアム奏者としての久美子
    • より高みを目指す
    • 麗奈と一緒にソリを演奏する

久美子が一番上手ければ二つの立場は両立できるが、もし、真由のユーフォが一番上手いとされれば、両立は出来ない。

真由の演奏が上手ければ、ユーフォのソロを吹けないかもしれない。久美子はそれを認めたくないから、真由の事を直視できない。

真由は久美子に近づきたい雰囲気を見せているが、久美子がこの恐怖心から真由を避けている。

今まで久美子の演奏は、北宇治吹部の中で問題にはならなかった。あすか不参加問題、夏紀と奏のオーデイション問題、夢の人前で演奏出来ない問題、みぞれと希美のリズと青い鳥問題。 これまで、久美子は問題の当事者を鋭いプロファイリングで分析し、その人の心にリーチして、問題を解決してきた。

両立を目指すのか?何かを諦めるのか?

今、その刃を己に向ける時が来たのだと思う。後編の久美子の試練。

このままでは潰れてしまう久美子

久美子のメンタルは普通のJKのそれである。あすかのような鋼の心は持ち合わせない。

だからこそ、麗奈と秀一のバックアップが必要なのだが、この役割分担でも3人のストレスは蓄積を続け、府大会を終えた時点で、一つ間違えば、音を立てて崩れそうなつま先立ちの状態である事をエピローグで匂わせていた。

おそらく、本作は、果てしなく遠い空の星を掴むために、ジャンプして、ジャンプして、ジャンプして、その事で傷付き、誰かを傷付け、涙を流し、それでもなかなか届かない、という極限を描く物語になるのだと想像している。そのために、波乱の第二楽章、ホントの話からの積み重ねを描いている。

このままでは最終的に久美子は壊れてしまうので、壊れる直前か?一度倒れて休むのか?自分を見つめ直す必要がありそうだし、その時にそばにいてくれる人が、麻美子なのか?あすか先輩なのか?そのドラマも後編までお預け。

「音を楽しめ!」の精神

プロローグの北宇治吹部の演奏会のポスターに記載された文字が、久美子に対する皮肉になっている。

YouTubeなどで一昔前の吹奏楽部のドキュメンタリー番組を観ていると、どんなスパルタ顧問でも大会の直前は「楽しんで演奏してこい!」という言葉を発している。

真由は、おそらく、音を楽しむ事が好きで、それこそが真由の魅力なのではないか?と想像している。

しかし、久美子はその余裕が無い。その違いでソロを奪われるかも知れないし、久美子もその事に気付きソロを取り戻すのかも知れない、などといろいろ妄想。

北宇治吹部の物語の突破口があるとするなら、このキーワードだと思う。

未だ不明な進路問題

音大は無理と、自分を客観視できてはいるが、実際の所、将来の希望を持てない久美子。

美智恵先生の進路指導時の久美子は人が好きそうだから、という分析が良い。

それと、父親からの、忙しいを言い訳にして進路と言う重大事案を先送りせず後悔しないように、との助言。麻美子の進路の事で一度、失敗しているので、進路の事は子供の意向を尊重したい気持ちが出ているのだろう。麻美子に相談すれば良い、というアドバイスが、おそらく後編で生きてくる。

ユーフォのソロ問題同様に、久美子が自分自身にプロファイリングのメスを入れ、自分自身を見つめて答えを出す、とうのが後編の一つのテーマになっていると思う。

前から思っているが、個人的には、美智恵先生引退後、北宇治高校に音楽教師として赴任し、吹部の副顧問として、滝先生と二人で全国大会金賞を目指して生徒を指導する、という未来があっても良いと思うし、ゆくゆくは久美子が吹部の顧問になっても、などと妄想している。

黒江真由(転入生)

アサダニッキ先生の真由のイラスト

アサダニッキ先生が、前編発売直前に、Twitterで流してくれた黒江真由のイラストが非常に良い。思わず、額に入れて飾りたい、と思ったほど。折角なので、このブログにも引用させていただきます。

私は、このイラストを見て、黒江真由の事が非常に良い子であると確信したと同時に、好きになりました。

真由の特徴について

とりあえず、真由の特徴を箇条書きする。

  • 楽器
    • ユーフォニアム奏者
    • 楽器は自分持ち
    • 中学の時に母親が購入(転校するたびに楽器が変わるのは面倒だから)
    • あすかのユーフォと同じ型、同じ銀色
  • 演奏
    • 上手い人との合奏が好き
    • オーディションを辞退したいと言った
    • 府大会オーディション後も、ソロを練習
    • 清良女子(福岡の強豪校)で1年2年ともにA編成
  • 転入生
    • 久美子と同じ3年3組
    • 清良女子に2年間
    • それ以前は、北海道、秋田、群馬、東京、静岡、和歌山、山口など
    • 親が転勤の多い仕事
    • 修学旅行は清良女子と北宇治で2回
  • 容姿・性格
    • 清楚系美人
    • 豊乳
    • おっとり、出しゃばらない
    • 素直で純粋、邪心が無い
    • 自分からは喋りかけにくい
    • 釜屋つばめと意気投合
    • 修学旅行写真に真由が写ってない
    • 小学生の頃のあだ名はママ
    • 裁縫セットを持ち歩き、弥生の衣装を修理した
    • 緑輝にクラゲに例えられる
      • ただ流されているようで、刺されると痛い
  • 北宇治吹部との接点
    • 1年生の時の京都駅ビルコンサート
      • 1年生の時の全国大会は?

真由からみた久美子

転校が多く、清良女子の2年間も比較的長く一つ所にいたケースなのではないかと思う。その意味で、長く付き合える友達がいなかった可能性が高い。

旅行の写真に真由自身が映っていないのは、一緒に居た友達の記憶に残らない事を意味するのだが、それは本人の意思なのか?それとも因果なのか?

その容姿、性格から人懐っこさが滲み出ているのに、せっかく友達が出来ても、すぐに離れ離れ。久美子と麗奈、久美子とあすかのような、太くて強い繋がりを持てず、そうした人間関係に憧れているのかも知れない。

自分自身で自ら前に出ていく性格じゃなく、喋りかけてもらうのを待ってしまう。臆病な性格と言ってよいだろう。

3年3組で初めて知り合った時、頼まれて博多弁で喋った言葉は、久美子に対して「あんたんこと、好いとーよ?(疑問形)」

あがた祭に久美子を誘ったが断られた。そして、その場で、自由曲のソリを真由と久美子で演奏した。

久美子が全員が真剣にオーディションをしなければ全国大会金賞は無理と言えば、府大会直前でもソロパートの練習をし、奏に「間違っていたら言って」と言う。

間違いなく、真由は久美子と友達になりたがっている。もっと言えば、親友になりたがっている。

だけど、肝心の久美子が、真由を直視しない。真由の片思いという状況だと思う。

あすかと真由の対比

久美子視点で真由にあすかを重ねる描写がいくつか見受けられる。それは、真由に対してあすかのようなプレッシャーを感じているからなのか? それとも、実際にあすかと真由に何らかの関係があり似ているからなのか?その真意はまだ分からない。

いくつかの項目を表で比較した。

田中あすか 黒江真由
銀のユーフォ 銀のユーフォ(同型番)
力強い演奏 しなやかな演奏
キツイ性格 おとなしい性格
ロングヘア(ストレート) ロングヘア(カール)

あすかと真由は対照的な存在として描かれている。

2年前、京都駅ビルコンサートに来ているので、その時にあすかと久美子をみている可能性がある。当時のあすかは、母親に吹部を禁止されていてたが、こっそり出場していた。

ついでに言うと、この時、立華高校も居たので、佐々木梓も見ている可能性もある。

真由と久美子のジレンマ

ここは、後編に向けての妄想。

おそらく、真由は久美子に気に入られようと、オーディションに全力を尽くし、関西大会のユーフォのソロを勝ち取ってしまうのではないかと思う。部長としての久美子の願いと信じて。

だが、それが、久美子のプライドを傷つけ、久美子が遠ざかって行ってしまう、というジレンマ。

その二人の複雑に絡み合う気持ちで互いに傷つけ合うも、キチンと二人で向き合い、お互いに悔いなく全力をぶつけて演奏する。その演奏に二人が楽しむ気持ちがあればいい。それで最後は久美子と真由が親友になれれば一番いい。

でも、武田綾乃先生は、それほど甘くない。ビターテイストな作品が多いので、こんな甘い話にはならないのだろう。というか、毎回、予想をはるかに超えた展開を、こちらも期待してしまっている。

でも、やっぱり、真由は不幸な展開になって欲しくない、と願ってしまう。

高坂麗奈(ドラムメジャー)

鬼のDM。久美子の右腕。スタートレックで言えばスポック。

あがた祭で久美子を家に導きいれた。

ゆるぎない滝先生への信頼。

塚本修一(副部長)

仏の副部長。久美子の左腕。スタートレックで言えばドクター・マッコイ。

エピローグで、秀一自身も疲れが溜まっている様子が描かれ、麗奈には他の女に優しくするな、と釘を刺されていた。

おそらく、後編で真由に優しくしてしまい、久美子の嫉妬、恨みを買い、問題が複雑化する泥沼展開を想像。

釜屋すずめ

仲良し4人組の中心的人物にして、もっともひょうきんな存在。つばめが仲間内ではお笑い好きなのは、家族ぐるみなのだろう。

つばめの妹と思って油断していたら、とんでもない骨太な思いやりたっぷりな性格の強キャラだった。すずめはすずめが好きな人の幸せのためなら、躊躇なく戦いを挑むし、そうした駆け引きでも頭が回る。

姉のつばめは、その気持ちの強さが人に迷惑をかける可能性がある事を知っているから、すずめの事を心配する。

前述のコンクールに対するスタンスは、(b)なので、その事で後編で久美子と衝突する可能性がある、と思う。

義井沙里(サリー)

友達思いが強く、友達の不幸を自分で背負いこむ。その事をすずめが心配する。

全国大会金賞を目指す事と、他人への思いやりが、天秤にかけられている構図。

久美子に説得されて納得していたが、その性格を考えると気苦労が絶えない。

沙里の問題は前編で終わりだろうが、技巧派クラリネット勢の伝統を引き継ぐ存在になるのだろう。

釜屋つばめと井上順菜

つばめは自由曲のマリンバの見せ場もあり、3年で念願のA編成。「ホントの話」に続き、純菜の長所を伸ばすパートリーダーが描かれていて嬉しい。

川島緑輝と月永求

一瞬、本当の姉弟みたいな、恋人みたいな描写が入り、ドキリとする。

緑輝は、只の良く喋るだけの人間ではなく、深い所まで理解していても、それを表に出さないという描き方がされていたので、きっと、その一瞬のときめきも本物だったのだろう、と思う。

龍聖学園の月永源一郎も、関西大会、全国大会に当然出てくるだろうし、北宇治とも直接競い合う関係だろうから、どちらかの大会で、祖父と孫の対峙があるのかも知れない。祖父は何を思って聖龍学園に来たのか?孫はなぜ祖父から逃げているのか?その答えは、後編で書かなければ一生見れない気がするので、この辺りも後編に期待。

鈴木さつきと鈴木美玲

府大会オーディションで、滝先生がさつきを落とした事に反応した美玲。

美玲は、今では低音パートの重心にある存在なのだと思う。来年は、美鈴の指導力と生真面目さが肝。

それと、さつきが一年生にチューナーの針を見て合わせない、というところに成長感じられてとても良かった。チューバ歴5年。報われないけど、弱音を吐かないさつきも低音パートの重要な存在。

久石奏

真由に厳しいのは、自分がA編成から押し出される可能性への懸念の他に、親愛なる久美子のユーフォ奏者ナンバー1ポジションを脅かし、久美子を悩ませる存在である事に、いち早く気付いているからだろうし、前編では一貫してそのスタンスだったと思う。

奏に対して意地悪い妄想をすると、関西大会、全国大会でA編成から押し出される可能性はまだ残っている。例えば、すずめが何らかの原因で怪我をして出場できなくなった場合、チューバは音圧から4名必要となり、葉月、美鈴、さつき、佳穂が選出され、そうすると他の楽器の枠で1名削る必要が出てくるが、真由と久美子のユーフォなら2名で行ける、と滝先生が判断すれば、外されるのは奏である。

もし、仮にそうなったら、奏の真由への攻撃は更に強まり、吹部全体のメンタルはおかしなものになってゆく危険性も無いではない。

そうした後編のネガティブな妄想をしていると、胃が痛くなる。

是非とも、久美子と真由が仲良くなって、奏も真由を認められる関係で、後編を締めくくって欲しい、と切に願う。

おわりに

SNSを見ていて黒江真由が北宇治にとって魔女みたいに言われているのを見ると、ちょっと納得できない。そんな気持ちもあって、黒江真由の事については多めに書いた。

私は物語の終わりは嫌いじゃない。満を持しての久美子3年生編。前編は全体的にあっさりしていたが、これまでの伏線を鑑みて後編の妄想をすると、涙腺がウルウルくるくらいの感動の予感が私の中にある。

2か月後の後編、本当に楽しみ。