たいやき姫のひとり旅

アニメ感想など…

2019年夏期アニメ感想総括

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はじめに

2019年夏期アニメの感想をまとめて残します。今期視聴のアニメは以下。

  • グランベルム
  • 荒ぶる季節の乙女どもよ
  • まちカドまぞく
  • BEM(2019.9.30時点で未完のため、T.B.D)

作品毎に評価(rating)と良い点(pros)と悪い点(cons)を記載します。

感想

グランベルム

  • rating ★★★★★
  • pros
    • 魔力に狂わされた少女達の願いを賭けた熱き戦いのドラマと物語
    • 古き良き2D作画と演出のSDロボバトル
    • 激しい感情を描き切る強い演出と、それに応えるキャストの演技
    • マギアコナトスやグランベルムなどの不思議設定とその謎解き
  • cons
    • 勢い重視の演出のためか、多少雑に感じる点があった脚本とシリーズ構成

まず、ポジ意見から。

私が本作の一番好きな点は、やっぱり個性豊かなメイン7人の美少女たちの振れ幅の大きな激情のドラマだったと思う。

通常、こうした激しい感情のバトルものというのは視聴者の心が冷めてしまうと陳腐なものになってしまいがちなのだが、演出や芝居が上手くて強いため、激情の熱湯シャワーを浴びて常に心が沸騰してしまう感覚だった。演出は徐々に、そして確実に右肩上がりに熱くなるところが見事。

声の芝居については、文句なくレッドゾーン越えのド迫力の演技だった。前半のアンナの憎しみの絶叫芝居、後半の水晶の悪役としての狂気の芝居、それに応えて戦う満月や新月の雄叫びの鬼気迫る迫力。それだけでなく、新月と満月の互いに弱さを支え合うときの芝居も含め、非常に良かった。

また、古き良き2D作画のアルマノクス戦も味わいがあった。ロボ戦というと昨今は3DCGなのだろうが、2D作画のアルマノクスには、怒り、痛み、雄叫びを感じさせるものがあった。特に目玉は通常のカットでは描かれていないのだが、アルマノクスの顔面アップになる時に一瞬描かれるという感じで、これがあるだけでアルマノクスの表情が違って見える。また、敵に刺されたり、メンタル的に弱っている時や、怒っていたり雄たけびを上げている時は、アルマノクス自身も、そのイメージが作画から伝わってくる。SDロボというデフォルメを許容する設定も効いているのだろうが、そうした雰囲気に味わいがあった、と私は感じた。

次に、ネガ意見。

本作は強演出のため、物語作りに多少、雑さがあったように感じた。

例えば、新月が「魔法を消し去りたい」と願うきっかけについて。幼少期の新月はアンナ家から出ていく時に、魔法も裁縫も勉強も何も特技が無く、自分が作った不細工な人形をみて、魔法が使えれば、人形も綺麗になり、友達のように振舞ってくれるかもしれない、と思ってしまうのだが、その瞬間にその考えを否定して「魔法を消し去りたい」という気持ちを持った。しかし、幼少期のアンナがエルネスタ家の跡地で水晶の魔石を拾い、カーマウィン・ウィッチの大魔法をこっそり使っていた事を考えると、フーゴ家を出る時は十分に強い魔法が使えていたはずで、魔法が使えないから「魔法を消し去りたい」というのは不整合に思う。

新月が「魔法を消し去りたい」理由というのは物語中でも最も重要なポイントであるため、この辺りで視聴者に疑問を持たせてしまうと作品が締まらなくなる。この辺りが少し残念に感じた。

とは言え、今期で一番熱く、一番ハマった作品なのは間違いない。ビターだけど少しだけ希望のある結末もとても良かった。

荒ぶる季節の乙女どもよ

  • rating ★★★★☆
  • pros
    • 性と青春という普遍的、かつアニメとしては挑戦的なテーマ
    • 文芸部の女性オタクたちのコメディの面白さ
    • 文芸的圧縮表現
  • cons
    • コメディ基調でありながら、終盤で泥沼シリアス展開をみせた事でブレを感じたストーリー構成

まず、ポジ意見。

本作は性と青春を扱うコメディ作品だが、アニメ作品としては珍しい題材に思う。アニメだったりラノベだったりのファンタジー要素無しで、性の恥じらいを笑いに昇華して楽しむ、というある意味、実写でも出来そうなテーマでありながら、それを実写でやったらおそらく、おちゃらけた雰囲気になってしまいそうなところ、アニメならではのドライなお笑いの雰囲気を出す事に成功していたのではないかと思う。それは、1話のラストの橋の上の和沙の股の下を通過する電車のカットのセンスの良さ、泉の自慰行為を見てしまった和沙のシーンの間、笑いに昇華するオーバーなリアクション、そうした演出面は冴えていたと思う。本作のアニメ作品としての素地は手堅いスタッフにより、誠実に作られていたと感じた。

文芸部員の5人は、マイノリティなオタク的な存在であり、だからこそメジャーな生徒達とのギャップが喜劇を生む。アニメを観ているオタク層にも、その意味では感情移入しやすい設定だったのかもしれない。この5人は男女交際について何らかの問題を抱えており、貞操観念だったり、過激な性表現を執筆とのギャップであったり、美少女の鳥籠に閉じ込められていたり、男子をウザいとしか感じなかったり、幼馴染時代からの仲間感覚から恋愛感覚の変化に戸惑っていたり。そうしたある種の劣等感があるからこそ、キャラを愛おしく思え感情移入が出来るのだと思う。その劣等感の根源は、具体的には未知の領域である性に対する戸惑いだと思う。そこにコメディがある。

勿論、性をいたずらに粗末にする事は良くない。しかし、大人に成長する上で避けては通れないハードルでもある。大切なモノだから軽はずみに扱えない。文芸部の5人は当初恋愛もしていなかったが、ある者は恋愛をし、その先に性的関係があり、その間で揺れ動く物語なのかと当初予想していた。しかし、本作は、この5人が性的関係に到達する事無く、その前の状況で結末を迎える。性的関係を描くと刺激が強くシリアスになり過ぎるので、手前で止めたのではないか?と思うが、結果的にそのディレクションで良かったのかと思う。

あと、本作で特徴的なのは、文芸的な言葉による表現が綺麗で上手い。アニメは映像作品なので、絵や音で見せる事が多いし本来でもある。しかし、本作は文芸が好きな女子高生たちがメインなので、文芸的な言葉の表現による情報圧縮がみられるところが面白い。例えば、1話から使われている「純潔」という言葉や、最終回の色んな「色」を受け止めて許容する事も、文芸的な表現をイイ感じい生かしていると思う。こうした抽象的な概念は、絵や音で表現しにくいものでもあり、文芸部員という設定を活かした強みと感じた。

次に、ネガ意見。

本作は、一度結束が固まった文芸部員たちが、赤い満月の夜、新菜の泉が好きな気持ち、百々子の新菜が好きな気持ち、り香のひと葉とロミ先生の不純異性交遊を悪く思う気持ち、様々な気持ちで互いに疑念を持ち、メンタル的にキツイ方向にドラマを振る。正直、毎回少なからずコメディとして見ていた私としては、何、この泥沼の重い展開…、となってしまった。

しかしながら、その続きとしては、り香の退学通告に対する抗議運動として再度一つ所に集まり、自分の思う色(本音)に対して互いに吐露し、それぞれの色を許容して打ち解け直るところで物語は終わる。そして、和沙の性に対するバリアについても、少し解消した雰囲気で、少しだけ成長した所を見せ、何事もなく綺麗に終わる。

正直、この泥沼で次回に続くのか?と思わせておいて、その割にはラストはその泥沼の気持ちの整理の付け方が、多少、狐につままれた感じがして気になった。例えば、泉は新菜に興奮してしまった事は浮気に近い事だと思うが、新菜に対してはエロセンサーが反応するが、和沙に対しては、エロい気持ちよりも大切にしたい気持ちが優先している、という話で和沙も納得するのだが、泥沼展開だったら、浮気をどう扱うか?という問題を放棄しているので、その辺り、かなりの超技で大団円に持って行っている感じがしてしまう。

ここは好みの問題かもしれないが、最後がうやむやな感じになるくらいなら、各話できっちりコメディとして安心してオチを付けてくれた方が良かったのではないか?と思った。

まちカドまぞく

  • rating ★★★☆☆
  • pros
    • シャミ子と桃の安定感のある、ほんわかラブコメ
    • 魔法少女や魔族の能力などのネタと思わせて意外と深い設定
  • cons
    • アニメとしてのメリットを生かしにくい作風

私は原作漫画既読だが、本作はアニメ化されて1話を見たときに、あまりに原作四コマ漫画の持ち味をそのまま、映像化していて、妙な安心感を覚えた記憶がある。それは、基本的な緩さ、四コマ漫画とは思えない過密な情報量、そうした特徴を押さえつつ、アニメとしてのプラス要素である、イメージを全く損なわないキャスト選びや、動きよりもキャラの可愛さを重視した作画など、期待を裏切らないものであった。

しかし、原作のイメージを周到しているはずの本作が、意外にもアニメ作品として観たときにパンチが弱い。その理由をずっと考えていたが、やはり、ギャグ物として見た場合、ストレートパンチが無くて、ジャブばかり打っているからなのだと想像している。

本作は四コマ漫画のセオリー通り、基本的に会話劇である。テンポある会話でノリ、ツッコミなどの漫才で笑わせる。その一つ一つは、ドッカン!と来るものでは無く、ジャブの積み重ねである。ジャブを連打するうちにお客さんも温まって来たところで、大きな笑いに繋いでいくのが漫才の基本であり、原作漫画の特徴だと思うが、アニメだとジャブばかりで、そこから大きな笑いに繋がっていない。

自分でもうまく説明できないが、4コマ漫画で通用するジャブの積み重ねは、アニメでは通用せずに、ジャブで温まって来たお客さんに対して、キチンと右ストレートを打ち込んでやらないと、爆笑には持っていけないのかもしれない。

ただ、もう一つの柱である、シャミ子と桃のお互いを思いやる気持ち。当初、桃が圧倒的に強くてシャミ子が圧倒的に弱い関係であり、桃はシャミ子に悪い事が起きない様に観察対象にしていただけだったと思うが、シャミ子の思いやりの気持ちにほだされたり、過去の様々な情報が判明するにつれ、シャミ子への感謝や親しみが増えていった。シャミ子もスパルタで体力を鍛えられ、軽くあしらわれていただけのの桃に対し、健康や食事に気を使ってゆくうちに親しみを覚える。お互いに敵対関係にあるハズなのに、いつの間にか、互いに大切なパートナーになっていくのが良い。この点は、原作漫画同様にキッチリ描けていた。

本作を観た人は、伏線の張り方が上手い!と唸る。しかし、原作者の伊藤いずも先生のインタビューでは、初めから回収方法を決めて伏線を張っているのではなく、伏線のネタをいくつも仕込んでおいて、適当なタイミングで、伏線回収的にネタを発動させるという発言をされていて興味深い。アニメOA直前のインタビューですが、面白いので下記にリンク先を記載します。

おわりに

今期は、天気の子やヴァイオレット・エヴァーガーデンなどのアニメ映画を比較的多く観ていた事と、グランベルムにハマってしまっていた事から、テレビアニメの視聴本数は少なめとなりました。

グランベルムの花田十輝先生、荒乙の岡田魔里先生、ともに第一線の脚本家ですが、どちらも肝心な部分で少し雑な印象を受けてしまった。本ブログでは、脚本&シリーズ構成に注目してゆきたいスタイルなので、ちょっと厳しめの採点になっていますが、視聴中の作品は総じて楽しく観る事が出来ました。