たいやき姫のひとり旅

アニメ感想など…

ぬるぺた 6話「お姉ちゃん かき氷のシロップなに派?」

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はじめに

一部で話題のショートアニメ「ぬるぺた」の6話の感想・考察です。

5話で泣きのドラマを入れて、私のハートをガッチリキャッチした直後の6話で、物語の本質に関わるサブキャラの登場、そしてこの世界の謎についての置き土産。私はやられっぱなしで、お釈迦様の手の上をコロコロされている気がしてなりません。

そんなこんなで、情報がてんこ盛りの6話の考察・妄想した事をブログにしたためます。

5分アニメ1話分なのに長文ですが、今、それくらい、熱意を持って観ている作品です。

ちなみに、これまでの話のブログがありますので、よろしければご覧ください。

考察・感想

一人芝居だった、今までのぬるの世界

これまで、本作に登場していたキャラは、ぬるとペたロボ。それと回想シーンを含めるなら、ぺた姉。この3人だけだった。そして、この中で生きている人間はただ一人、ぬるのみであった。

つまり、1話から5話は、ぬるの一人芝居だった。そして、かきの登場は、この一人芝居の安定した世界を崩す存在で有る事を意味する。

もう少し、ぬるの世界について説明を補足しておく。

ぬるが学校に行かない理由は3話で語られる。ぬるが小学校で、好きな理系話をしても、周囲の同級生や先生は話題についてこれず、ぬるを変人をみるような目で見ていた。この事が辛く、ぬるは学校に行かなくなった。こうした事でぬるの心は外部の人間を閉ざした。

6話でぬるは、かきと初対面で対応した時、緊張し、真っ赤になり、挙動不審になり、すまんもす!の謎発言を残しながら、その場を逃げた。これまでも、そうした事を繰り返して、人間嫌いをより強固にしていったのかもしれない。

劇中の同級生や先生は、簡略化されたグレー人間(グレーのデザイン)として描かれる。当初、単純に作画を省力化したものと考えていたが、おそらくこれは、ぬるの主観的な映像表現だったのだろう。

1話でぺたロボが誕生し、ぬるとぺたロボの2人でドタバタコメディをしてゆくが、よくよく考えて見れば、ペたロボは機械であり、それをプログラミングし作ったのはぬるであり、その意味では、人形遊びしていただけ、とも言える。

もっとも、ぺた姉の口癖と、ぬるの記憶で、ペた姉との思い出が溢れ出す、という事はあった。しかし、ぺた姉の思い出を含めて、それは、ぬるのインナーワールドでしかない。

つまり、1話~5話までで描かれていた世界は、ぬる1人だけが人間として存在している、独りぼっちの世界だった。そして、ぺたロボはあくまで、うざくて愛しい、ぺた姉を再現した人形でしかなかった。

もうひとりの人間、かき氷屋のかきちゃん

二人目の人間、かき氷屋のかきちゃん。

最初は、ぬるは極度に緊張して上がりまくり、真っ赤になっていったが、かきの持ち前の好奇心と、ぐいぐいと押し込んでくる積極性のおかげで、二人は仲良しになった。

かきはぬるを変人扱いしない。

もとより、かきはかき氷屋で商売をしており、ぬるは客である。ぬるが対人恐怖症パニックで、すまんもすの謎発言しても、その事を馬鹿にする事もなく接した。

かきは、好奇心旺盛で、素朴な疑問を持っている。その理由について、海の家の手伝いで一人きりの時間が長く、色々考えを巡らせてしまうから、と語っている。

  • 海の昆布は、なんでダシが出んのじゃろ?
  • カニは、なんで横に歩くんじゃろ?
  • カップ焼きそばは、ちっとも焼いとらんのに、なんで焼きそばって言うんじゃろ?

一般的に、大人になるにつれ、経験則や、お婆さんの知恵袋などにより、本質を理解する事無く無駄を省けるようになる。これを学習とか成長と呼ぶかもしれないし、それで効率的に生きてゆく事は出来る。これ自体は悪い事でもなく、人類が生きるにおいて、必要不可欠とされてきた事なのだろう。しかし、一方で、物事の真理に到達したいという欲求も人間にはある。かきは、手伝い中とはいえ、一人で思考する時間を持て余している、という設定なので、そういう素朴ながら、誰も応えられないような謎に興味を持っていた。

まあ、実際のところ、かきがこんな素朴な疑問を列挙したのは、ぬるとの会話が余りにも弾まないための苦肉の策だったのだとは思う。

ぬるは、持ち前の知識で、かきの素朴な疑問に科学的に的確に応えた。言い方が渋々だったのは、これまでのぬるの経験で、その後、相手から変人扱いされる可能性が高かったから。しかし、かきは素直に驚き、ぬるを物知りと賞賛した。

かきが聡いのは、目を合わさずに照れて会話を逃げているぬるの様子を見て、「物知り」と褒める事がコミュニケーション上逆効果であると察するところである。そして、ぬるの知らないかき氷のウンチクでぬるを振り向かせ、頬っぺたをつねり、目を合わせての会話に持ち込む。かきの「コミュ強」がうかがえるシーンである。

ぬるはこれまで一人芝居で生きてきた。波の自然法則も数式で理解してた。ぬるの世界の中でぬるが知らない事なんて何も無かった。その意味では、ぬるは退屈していたハズである。しかし、ぬるはかきから新しい知識を得た。それは、余り役に立たない情報であったが、それでも刺激的な体験だったのだと想像する。ぬるにとっては、未知との遭遇であり、天岩戸が開いた瞬間であった。

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楽しく遊んだ後、ひと夏の思い出を胸に、互いに名前を知る事もなく、二人は別れた。

ぬるとかきはコミュニケーション能力においては対極の存在だが、似てる面もいくつかある。

  • ぬるとかきの対比
    • 似てない点
      • コミュニケーション能力(ぬるは低く、かきは高い)
      • 両親(ぬるは両親がいない、かきは両親がいる)
    • 似てる点
      • 物事の真理を知りたい、という好奇心。
      • 一人の時間持っていて、寂しくなく過ごせる。

かきが面白いのは、コミュ強だけど、「一人の時間」を嫌いじゃない点だと思う。その事があるから、二人は抵抗なくシンパシーを感じられるのではないか?と想像している。

ここまで整理してきて、かきのキャラクターが、よくよく練られた設定である事に唸る。

ここからは、少し妄想。

かきは暗算能力は高い。素朴な疑問を持っていはいるが、聡明なキャラなのだと想像している。夏休みは海の家の仕事をしているが、夏休みが終われば学校に通う生徒なのだろう。その後、またどこかで、ぬるとぺたは再会するのだと思う。

実は、かきはOPでは切り抜き絵の形で1話から登場していた。それは、OPの舞台装置の一つとして存在している、という演出であり、本筋のストーリーの重要な鍵ではあるが、物語を紡ぐキャラはあくまで、ぬるとぺたロボなのだと理解している。その意味で、かきは7話以降しばらく登場せずに、11話、最終12話くらいに再登場するのではないか?と想像している。(予想が外れたら、笑い飛ばしてくださいw)

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しかしながら、かきが普通の小学生という保証はどこにもない。中学生かも知れないし、もしかしたら、かきもまた、天才発明家なのかもしれない。いずれにせよ、かきの素性を示す情報は何もないが、再会の時の事を考えると、何か仕掛けか、因果があるに違いない、とは思う。

存在感を消したぺたロボ

今回ぺたロボは、非常に控え目で、おとなしく、目立たない存在だった。

それは、とりもなおさず、この物語がぬる主観であり、ぬるの関心事がかきに集中していたからだと思う。5分アニメでは、かきを描くだけで、ぺたロボの出番は殆ど無くなってしまったという側面もあったのだろう。

いつもは、学校に行けだの、ご飯を食べろだの、お風呂に入れだの、身の回りの世話をするのが役目だが、今回は夏休みの行楽なので、学校に行けとか、そうした小言は一切なかった。せっかく海水浴に来たのに、ぬるは一人でパラソルの下から動こうとしないので、仕方なくペたロボが一人でイルカのぬいぐるみを使って遊んでいたのが印象的だった。

ペたロボは機械だから、ぬると遊びたい気持ちがあるか?については不明だが、ぬるを強制的に遊びに引き込む事はしない。ぬるがやりたいようにさせていた。ここに、機械が目的もなくむやみに人間に強要する事はしない、というSF的な文脈を汲み取る事ができる。

ラスト付近の不穏な描写(ぬるの世界についての考察)

グレー人間のノイズ

ぬる主観では、他人は基本的にグレー人間として描かれるが、6話のラスト付近でグレー人間にノイズが入り、グレー人間の存在が不安定になるカットがあった。このカットについて、SNS上で、仮想現実ではないか?と話題になっていた。

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個人的には、グレー人間は、ぬる主観の映像表現という解釈も成立すると考えている。

繰り返しになるが、グレー人間は、他人と関わる事を拒絶するぬるの気持ちを映像表現したものと解釈できる。そのグレー人間にノイズが入ったという事は、ぬるの対人恐怖症が少しだけ改善され、他人を顔のある人間として認知できる可能性が出てきたのだと解釈している。

それは、本作のぬるの物語上の重要な変化点であり、6話の最重要ポイントでもある。

しかし、この仮説も、仮想現実を否定しきるものではなく、現実世界も仮想世界も、どちらの可能性もあり得るのだと思う。

ぺたロボの目を持つ海水浴場の岩場

今回の海水浴場には、なぜかペたロボの目を連想させる岩場が存在していた。

ちなみに、この岩場は、海水浴場を二つに分断し、最初に小学生が押し掛けてきた砂浜と、後にぬるとかきが二人で会話した砂浜を分断していた。

なぜ?このような岩場が存在するのか?

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ここからは、想像の領域である。

ペたロボ(ペた姉)はぬるを過保護なまでに溺愛していた。だから、ぬるを監視し、ぬるの危険を察知すると、いち早くそれを排除する、という機能があるのではないか?だから、ペたロボは周囲の空間(今回は岩場)にまでセンサ機能を拡張して、ぬるを監視していたのではないか?

そして、その機能拡張は、リアル世界で何かしらの物体を加工して拡張するという可能性と、仮想現実世界においてプログラム変更により拡張するという可能性と、どちらの可能性もあり得ると考えている。

背景のフラクタクル的な幾何学模様

ちなみに、もう一つ前から気になっている点がある。背景のフラクタル的な幾何学模様である。

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普通の空でも、水玉的だったり、多角形的な、幾何学模様が入っている。それは、映像的な揺らぎを表現するためのもの、印象派の絵画の様な映像表現だと考えていた。

今回、この世界が仮想現実の可能性が示唆されたことにより、この映像表現も、実は仮想現実世界である事を映像として表現したものではないか?という疑念を持つようになった。

ただし、この点については、個人の感想であり、全く確証は無い。

この世界の仮想化技術の可能性

この件について、箇条書きで整理してみた。

  • ★ぬるの世界の仮想化技術の可能性について

    • (a) 現実世界説
      • 全てはリアルで存在している。グレー人間は、ぬる主観の映像表現でしかない。
    • (b) AR(拡張現実)世界説
      • 全てはリアルで存在している。グレー人間は、視界に上書きされた情報。
    • (c) VR(仮想現実)世界説
      • 全ては非リアルな仮想空間。
  • ★仮想化技術(b)(c)の場合、仮想化世界の創造主は誰か?

    • (1) ぬる本人
      • →〇:この世界は基本的にぬるの都合のよい世界になっている。
      • →×:かき(=ぬるの未知)の登場は矛盾。
    • (2) ぺたロボ
      • →〇:海水浴場の岩の顔の件は怪しい。
      • →×:1話以前の世界の説明は出来ない。
    • (3) 上記以外
      • →ぺた姉
        • →実はぺた姉が生きていて、ぬるをVR内で生かしている?
          • →こんな手の込んだことをする必然性が不明?
            • →ぬるの身体に重大な問題が生じている?

SNS上で、(b)のAR(拡張現実)についての意見をあまり見ないので、少し補足説明する。

(b)は、現実世界の情報に一部の情報を上書きして伝えるものである。分かりやすい応用例は、眼鏡を掛けて街中を歩くと、目的地までのルート案内を現実世界に重ねて表示するとか、人混みの中の知人の位置をマーキングで知らせるとか、などである。

(c)は、全てが作られた世界なので、存在する全てのものは、仮想世界のために創造された事になる。だから、かきの存在も作られた存在という事になるが、その場合、誰が何の目的でかきを創造したのか?という疑問点がわく。

一方、(b)は、基本的に現実世界だから、現実世界にかきが存在すれば、普通にかきを認識できるハズである。二人の偶然の出会いが、(c)では仕組まれた出会いという意味付けになってしまう。

しかしながら、(c)でも、ぬるもかきもその世界に登場するアバターであると考えるなら、二人の偶然の出会いは成立はする。

前置きが長くなったが、物語、ドラマを考える上では、(a)という解釈で十分通用するし、私は基本的に(a)として本作を見続けて来た。

しかし、本作のテイストを考慮すると、SF的な世界観があっても良い、というかその方が本作のファンは喜ぶのではないかとも思う。

本作はゲーム連動企画なのに、そのゲームの実体やシステムに関する情報が全く出てきていない、という点も、この世界に何かとんでも設定があるのではないか?と考察したくなる要因でもある。

しかし、(b)(c)という解釈の場合、誰がそのような仮想化世界を構築するのか?その必然性は?というところで思考が止まる。

で、詰まるところは、この世界の仮想化技術については、穴が多すぎて埋まらず、可能性があるだけで、何の結論も出せないという状況である。

この点に関しては、絶対何かあると思うので、今後とも目を離せない。

水着回として

堅苦しい話はここまでとして、単純にぬるの水着が可愛すぎた。

ペたロボの水着も食い込みが可笑しくはあったが、可愛いデザインであったと思う。

とりあえず、ほっこりした話題で締めたい。

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おわりに

仮想化技術の下りは、物語的、ドラマ的には、無くても成立するくらい完成度が高い作品だと思います。しかしながら、仮想化技術でSF的なテイストを出した方が、絶対に盛り上がる…。そんな感想を持って見ていました。

想像するに、7話から10話くらいまでは、また、ぬるとペたロボのコメディが続くのではないか?と想像しているのですが、実際は果たしてどうか?

オリジナルアニメ作品なので、原作ネタバレが無いのが、また良いです。

7話以降も、超楽しみにしています。