たいやき姫のひとり旅

アニメ感想など…

のんのんびより のんすとっぷ

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ネタバレ全開につき閲覧ご注意ください。

はじめに

のんのんびより のんすとっぷ」の感想・考察です。

ちなみに、私は1期2期は未試聴で、劇場版の「ばけーしょん」から履修済みです。なお、原作漫画は未履修です。(1期4話のみ、3期10話との関連もあり視聴しています)

緩い日常アニメと思いきや、終盤の感動回で打ちのめされました。3期はシリーズの完結を描く事もあり、その意味でも感慨深いものがありました。かなりの良作ですので、オススメです。

感想・考察

作風

本作は、田舎を舞台にした子供たち視点のノスタルジー溢れるドラマである。ジャンルで言えば、日常コメディ+人情ドラマという感じ。とにかく、気負いなく楽しく観れる。

原作のあっと先生によるキャラが可愛いくて良いのだが、本作の最大の特徴は、ゆっくりと時間が流れる田舎の日常を描いている点にある。特に田舎の風景・自然は背景美術により丁寧に描かれ、演出のテンポもゆったりしている。その、緩い時間を共有できるのが、本作の最大の強みである。

各話

各話イベント一覧

話数 タイトル イベント
1話 カエルの歌を吹いた 5月、セロテープ人形、人見知りあかね登場、笛の練習、あかねとれんげの繋がり
2話 蛍が大人っぽかった? 6月、トマト苗植え、あかねと夏美小鞠蛍の繋がり、クッキー作り、甘えん坊蛍
3話 昔からこうだった 7月、ひかげ夏海盆栽割り、喧嘩、幼少期、コムソーマンごっこ、秘密基地、心配して夏海を迎えに来たひかげ、和解
4話 トマトを届けるサンタになった 8月、トマト収穫、配達、しおり登場、駄菓子屋と手錠、コスモス刑事ごっこ
5話 すごいものを作った 8月、自由研究、来訪日間違いあかね、れんげあかね遊ぶ、怪談小鞠ぐるみ
6話 みんなでキャンプに行った 8月、キャンプ、テント設営、黒蜜カブト虫、肝試し、ひかげ夏海の宿題ボイコット
7話 ハラハラする秋だった 9月?、授業参観、焦る夏海、燃え尽きる夏海、しおりに翻弄されるれんげ、蟹の水槽
8話 先輩はもうすぐ受験だった 10月?、大学受験このみ、縁日、このみ越谷家お泊り、ふすま破り、外であかね演奏会、あかね富士見家お泊り
9話 おししいごはんを作った 11月?、怖がり小鞠、イタチ、不器用編み物、夕食カレー
10話 寒くなったりあったかくなったりした 正月、お年玉騒動、寒中コント、ほのかれんげ再会、今度は言えたバイバイ
11話 酔っぱらって思い出した 2月?、中あて(ドッチボール)、赤ちゃんれんげの世話する楓、宮内家で酔いつぶれる楓、楓の布団を直すれんげ
12話 また桜が咲いた 3月、卒業式、みんなで土手滑り、かすみ生まれる、4月、かすみれんげ指切り、新生活

10話について

10話のほのかとれんげの絡みは、1期4話のアンサーである。

1期4話は、夏休みにたまたま帰省したほのかとれんげの交流を描く。れんげとほのかは同じ年で意気投合。翌日も遊ぶ約束をして丸一日二人で遊ぶ。その翌日も遊ぶ約束をしたが、ほのかの父親の都合で急に家に帰ってしまい、れんげは1週間不貞腐れて過ごす。そんなある日、ほのかから手紙と二人が写る写真が送られてきて、れんげも絵を描いて返事を返す、という話。

ちなみに、この話は、劇場版の夏海とあおいの関係にも符合する。沖縄旅行で出会った民宿の娘のあおい。同じ年で時間制限付きという点では全く同じ。夏海は最終日の朝、一人涙する姿をれんげに見られている。無言で送迎バスに乗り込もうとする夏海に対して、れんげが挨拶を即す。夏海からあおにに別れの挨拶。見送るあおい。そして、旅先から日常に戻った時にれんげが夏海にプレゼントしたのは、ほのかとれんげのツーショットの写真と同様の、夏海とあおいのツーショットの絵だった。

これを踏まえて3期10話では、ほのかが帰る日の朝、駄菓子と髪留めを交換し、キチンと別れの言葉を交わして別れる。1期4話と違い、タイムリミットが近づく切なさと、その切なさに向き合うれんげの姿が描かれる。

こうした、過去シリーズのネタも絡めての話は、過去シリーズを知る者には、2倍、3倍にパンチ力が増して効いてくる。

そして、この事は、3期が物語完結である事を考えると、考えすぎかもしれないが、作品と視聴者の別れにも重なると思う。過去エピソードを活用しつつ、3期完結を連想させるシリーズ構成の凄みを感じる。

11話について

11話は、3期の中で最大級の泣きポイントだったと思うし、実際、多くの視聴者もラストで涙腺崩壊した事と思う。

11話が例外的なのは、子供視点ではなく、大人視点でドラマを描いている点にある。これは、不意打ちで右ストレートをくらったくらいの威力があった。

楓はれんげに対して過保護である。れんげが赤ちゃんの頃から面倒を見続け、保護し続ける事が当たり前だった。

それは、年長者が年下の子の面倒を見るというコミュニティ内の暗黙のルールであったし、義務と言い換えてもいいかもしれない。

さらに、一穂の話では、楓はコミュニティ内で荒れていた時期があり、そんな時にれんげの面倒を見る事で、心に潤いを取り戻し、軌道を外れる事無く現在に至ったという経緯が語られる。楓がれんげの面倒を見る事は、実は楓のメンタルケアの上でも有効であり、コミュニティ内の良き循環となっていた。

しかし、れんげ本人は成長している。妹分のしおりの面倒をみたり、気遣ったり、姉貴分としての自覚を持ち始めている。そして、れんげが楓の布団をかけ直してポンポンと布団を叩いて出て行くラストシーン。

楓が酒に酔いつぶれていたから、泣きやすい状況にあったという事もあるだろう。

楓の気持ちは複雑で、れんげの初めての優しさに感動したとか、世話していたれんげから世話されて、れんげの成長を感慨深く思ったとか寂しさ感じたとか、いろいろと考えられはするけども、これだけでは無く、もっと色んな感情があったのかもしれない。

ただ言えるのは、子供の成長を目の当たりにして、巻き戻らない時の流れの重みを実感して涙するというのは、童心には分からない大人だから分かる感覚であり、繰り返しになるがその意味で11話は本シリーズでは例外なのである。

そして、その巻き戻らない時の重みというのは、そのまま12話に引き継がれるテーマである。11話のこのエピソードが12話の心の準備回になっているという点で、ここでもシリーズ構成の上手さに唸らされる。

それにしても、ある意味、鉄板のお約束である楓のれんげに対する過保護設定を、れんげ依存からの脱却を示唆して解放するというのが、本当に目から鱗で、凄く良かった。

12話について

12話というのは、本作にとって最大のケジメである。これまでループし続けていた、いわゆる「サザエさん時空」を解放させての堂々のシリーズ完結となった。

3期で重要な役割を果たしていたのが、新キャラのしおりとあかねである。

旭丘分校コミュニティの閉じた時空において、しおりは代替わりで新規に参入する者として時間の繋がりを示し、あかねは隣町からの外部から参入する者としての空間の繋がりを示す。3期では、丁寧に2人を旭丘分校コミュニティに干渉させて、サザエさん時空の解放を描き上げた。

Aパートの土手滑り。夏海、れんげと楓、しおりと蛍、小鞠とあかね、ひかげ、このみ。従来のコミュニティに、しおりとあかねも参加して前進する未来を示唆するシーンだと思う。

このみがこの1年を振り返り「なんか、長かったと言うか、短かったと言うか」という台詞。この1年は、3期1クールで描いた1年でもあり、1期放送開始からの7年でもあり、視聴者の心情にも重なる。

アバンの卓の卒業、Bパートのしおりの入学。年度が切り替わり、また新しい日常が始まる。いつもと同じ道じゃなくて、いつも少し違う道。

そして、れんげとかすみ(生まれたてのしおりの妹)が一緒に登校する6年越しの約束は、こうして未来永劫続く季節と年度の螺旋の時の流れ予感させる。

水は一つ所に留まると濁るが、流れる水はきれい。これで視聴者は本シリーズとはお別れになるのだが、新学期が始まり、年度が切り替わる事で物語の完結を示すということが、これほどまでに清々しく、これほどまでに美しく、心に響くとは思わなかった。

その他の諸々について

3話は、ひかげと夏海の喧嘩と和解を、過去回想を交えて描く。夏海の悪乗りに酷い目にあいながらも、幼少期の夏海の「ごめんなさい」があるから、今も続いている二人の関係。ひかげの良さを丁寧に描く回は、ここしかないので非常に良かった。

9話は、小鞠の可愛さ全開回だった。怖がりで不器用で、しっかりしたい気持ちとは裏腹に失敗ばかり。カレー作りで肉じゃがを使う発想に有頂天になるところとが最高に面白かったが、自分から母親に手伝ってと頼むくだりと、その後の母親のケアが微笑ましくて良かった。

2話と5話で蛍がいじられているが、大人っぽさを演じている蛍の子供っぽさや、小鞠フェチの可笑しさがネタになるという事で、3期ではお笑いに徹した感がある。

れんげは3期でも最重要キャラであったと思う。ラストの台詞を言うために3期の1年を積み上げるという大役をこなした。妹分のれんげの登場により、年長者としての責任を自覚する下りは、1クールの中で丁寧にしおりを織り込んで描いた事で、ごく自然な形で見えていた。

れんげ関連でちょっと笑ってしまったのは、9話のしおりとの哲学めいたやり取り。れんげのロジックは視聴者にも明快だが、しおりの言動は幼児のそれで非論理的な飛躍で展開されるため、れんげが翻弄されると言うくだりが馬鹿馬鹿しくてよかった。

「終わらない日常の終わり」

「終わらない日常の終わり」は、3期放送に直前に、原作漫画が2月末で連載終了する事をアナウンスした時のコピーである。おそらく、3期と原作漫画の連載終了は、かなり前から綿密に同期をとって物語の完結を練り上げてきたのだろう。このコピーを見たとき、私はこのカッコ良さに痺れた。

本シリーズが、大人のノスタルジーに触れてゆく作風である事を考えると、過去に囚われて後ろ向きな印象を受けなくもない。しかし、3期12話では、過去を受けて未来を生きるために、昨日と少し違う今日を全力で生きる、というメッセージを伝えてくる。日常=同じ毎日の繰り返しという考え方を否定し、日常=巻き戻らない変化する毎日の積み上げであり、だからこそ日常を大切にすべきなのだと主張する。

つまり、日常の終わり=変化を受け入れ前進するというニュアンスが近いのかと思う。これは、2期のループを否定する考え方と言っても良いだろう。

3期12話が年度上がりを描く事で物語の完結を描くという事の美しさは、3期単発では表現しえないテーマである。原作漫画が11年以上も連載されていた事、2期のサザエさん時空と、2期から3期のインターバル期間があった事を利用してのシリーズ構成であり、その意味で見事という言葉しか出てこない。シリーズ構成の吉田玲子さん、監督の 川面真也さんに最大限の拍手を送りたい。

おわりに

私は「はいふり」が好きなのですが、本作も、あっと先生原案のキャラクターで吉田玲子脚本のアニメであり、個人的にこの布陣に弱い事が判明しました。

1期から7年も経過していますが、その間のアニメーション技術の進化を取り込むという事よりも、当初と同じ質感を維持していてくれているのではないか、という映像の肌触りの感触を変えていないところに好感を持ちました。(劇場版は、流石の映像クオリティという面はありましたが)

どうせ、大人のノスタルジーに訴えかける癒し系のアレでしょ、という先入観を捨てて、緩い笑いと極上のドラマを楽しんで観て欲しい作品です。