たいやき姫のひとり旅

アニメ感想など…

シャインポスト(1話~4話)

はじめに

個人的には、ありがちなアイドルモノとして触手が動いていなかったのですが、ふたを開けてみたらかなりの剛速球の脚本と強演出な作風で引き込まれました。

制作はスタジオKAI、監督は及川啓ウマ娘2期の座組で感動圧の高さは、ある意味保証されていました。

1話〜4話まで視聴していますが、本作の良さを広めたい気持ちで、いつものブログ記事に感想・考察をまとめました。

感動モノがお好きな方は、特にオススメです!

感想・考察

細部まで作り込まれた歌唱シーン

蛍の武道館ライブ

本作全体の掴みとなる1話アバンは、4年前の蛍の武道館ライブの歌唱シーンだが、とにかく細部まで作り込まれている。

観客席のペンライトや、カメラが大胆に空中を移動するシーンは3DCG、アップの表情や手の仕草が重要になるシーンは手描きで描かれていると思うが、手描き部分も極めてスムーズ。歌唱シーン全体を通しての違和感が無い。

ポージングも身体を大きく折り曲げたり、ステップ踏んでターンとか、ダンスの基本が出来ている。蛍はピンのアイドルだから多くのダンサーが囲んでのステージで賑やかさを演出するが、ダンサーの顔はそれぞれ違う。

想像するに、手描き部分でも、3DCGのアタリを取って手描きで微細な表情を乗せて書き直しているのではないかと思う。ちょっと面白いのは、カメラがシームレスにステージ上から観客席上空まで引いて再びバックダンサーに寄ってゆくカット。最初と最後は手描きで、間の引きの部分は3DCGなのだが、間にダンサー腰のアップや、紙吹雪のアップのカットを挿入して違和感を軽減するという小技も使っている。

曲の最後の決めの部分は、「愛の名のもとに、Sweets Salender」のスタッカートの歌詞と共に、前方の梯子のようにならんだダンサーがカメラを避けつつ、カメラは真っ直ぐ蛍に寄ってゆき、蛍のアップの表情を写す。

単純に3DCGと作画のシームレスさで言えば、虹ヶ咲やスーパースター!!の方が綺麗だが、作画の勢いやライブのバタ臭さ生っぽさに本作の強みを感じる。

TiNgSの歌唱シーン

TiNgSの3人の技量は不揃いである事は、本作のドラマの肝になる部分である。本作では、そこをダンスシーンの映像で誤魔化さずに表現する。当然、キッチリ揃った動きよりも、三者三様の動きを作る方が手間がかかるハズであるが、本作はそこを逃げない。真面目と言うかストイックな作風である。

春は高いダンス技術を持つがゆえに、杏夏と理王の動きを見て、ある意味マイナス方向に調整していた。理王は技術、体力ともに低く、動きが遅れてブレが大きい。杏夏は二人の中間という印象。これを、映像だけで見せる。

1話のマネージャーにダンス披露したときも、2話の定期ライブの「TOKYO WATASHI COLLECTION」でも、4話の「一歩前ノセカイ」でも、これはキッチリ描かれる。具体的には春は動きが綺麗で、息切れしないし汗もかいていない。杏夏は動きがブレていて、理王は明らかに遅れてる。しかも、2話は春のリミッターを外しているので、その差が大きく描かれる。これは、目利きのドルオタが春のダンスに唸るという肝となるシーンだからこそ、動きに情報を込めて説得力を持たせる。

TiNgSのライブシーンは、虹ヶ咲やスーパースター!!と違い、1分30秒のMVとしては作っておらず、2話では観客の驚きやマネージャーの戦略の台詞が入るし、4話ではEDのスタッフロールと重ねている。個人的には、これは大歓迎で、1曲をそのまま高カロリーのライブシーンに当てなくても、ドラマや止め絵で省略できる部分を省略するのはアリだと思う。なにより、本作はドラマを詰め込み過ぎているので、1曲1分30秒の間、間延びする事がなくていい。

個人的に2話が好きなのだが、Youtube動画にはなっていないので、その時の曲の「TOKYO WATASHI COLLECTION」のリリックビデオを貼っておく。

日常芝居でもヌルヌル動く作画

1話の春の登場シーン

1話Aパートで主役の春がコンビニから事務所の社長室まで移動するシーン。アイスを取り、席に座って食べてアタリが出る。歩道を走り、横断歩道を駆け抜ける。事務所ビルの自動扉が開くまで足踏み。制服からトレーニング着に着替える。廊下をスキップしながら移動。社長室の扉を開く。一連の動作がヌルヌル動く。

春の日常のテンションの高さを表現するためだろうが、それにしても過剰とも言えるヌルヌルである。

通常、アニメーションというのは、ツメ・タメや外連味というか、省略できるところを省略した方が気持ちイイ映像になる。これは、動画枚数をふんだんに使ったリッチなアニメーションにおいても例外ではなく、ヌルヌル動けばいいってもんでもない。

しかしである。本作は動きの外連味よりも、あくまで滑らかにヌルヌル動かそうとしている印象である。

2話の定期ライブ開演前のマネージャー助言のシーン

私が、ハッとしたのは、2話の定期ライブ開演前にマネージャーにTiNgSの3人に助言をするシーン。

不安な表情で緊張を隠せない舞台袖の3人。マネージャを見つけて駆け寄ってきて助言を求めるときの安堵の表情。マネージャーから一人ずつ助言する。杏夏の表情の変化は、安堵→驚き→困惑→再び驚き→助言を噛みしめる→決意と言う流れ。理王の表情の変化は、厳しい表情で助言を噛みしめ→真剣→驚き→いつものドヤ顔。春の表はピースで満面の笑み、身振り手振りあり。表情の変化が目まぐるしく、三者三様である。

このシーンで直感したのだが、本作の動きは出来る限り、写実的というか、現実の人間が出来うる動作をしている。リアルというよりもリアリティなのかもしれない。この、目まぐるしい表情の変化は漫画は不得意とするところだろう。アニメーションの芝居は身体を使ったアクションは目まぐるしく動かせても、表情を目まぐるしく動かすのは難しいと思われる。

この表情の変化は絵コンテに全て描かれているハズである。しかしこれが脚本に書かれているか否かは分からない。脚本レベルでこの粒度の表情指示がなされているとすれば脚本がかなり濃い。もし、絵コンテで盛っていたら、それはそれでかなりの演出力である。お話を流すだけなら、ここまでの詰め込みは要らないし、余計なコストとなる。しかし、本作では敢えてここに注力してリアリティ(=説得力)を出す。

レイアウトはキャラのバストショットが多かったり、どちらかというと単調気味である。しかし、これも狙いと思える。

つまり、本作はマネージャー視線でアイドルを観測するドキュメンタリーという体裁であり、そのためにカメラに写る映像は、できるだけリアルタイムな生感を持った映像であるべき、というポリシーに感じる。そこに、外連味などの誤魔化しは無い。ストイックなまでに映像での説得力に拘る。

そう考えると、このヌルヌルのディレクションも理解できるような気がする。スタッフはかなり真面目だと思う。

脚本・演出

本作の脚本はド直球の問題解決型である。物語的には売れないアイドルの問題点を解決して成長してゆくサクセスストーリーと言える。

1話2話は、TiNgSの3人の力量の差を春がマイナス方向に調整していた事と、そもそもTiNgSに客が着いていないという問題。これに対して、春のリミッターを外し目利きのファンを唸らせて、定期ライブに100人の集客ができるようになった。

3話4話では、輝きたいが失敗を恐れ、本心とは裏腹に脇役に徹するという行動を取ってしまう杏夏の自己矛盾のストレスが問題。これに対し、マネージャーがセンターで歌わせる事を決定事項とし、杏夏への説得で失敗の恐怖を取り除き、成功体験を作る事で乗り越えに成功した。

これらの問題が弱小アイドルとして有りそうだし、解決方法もロジカルでドラマの筋にブレが無い。しかも、キャラに寄り添う丁寧で強い演出のため、4話などはAパートからウルウルしながら観ていた。

そして、問題解決型ゆえに、解決後のカタルシスは大きく解放感が強い。本作の強さは、このストレスからの大きな解放感にあると思う。主要スタッフはウマ娘2期と重なるが、納得の感動圧である。

個人的には2話が一番好きで、2話の時点ですでに特大ホームランになっていた。TiNgSの3人の表情がイキイキしてゆく様が気持ち良かったし、成功までの道のりのロジカルさ、マネージャーの名探偵のごときお見通し感、全てが決まっていた。

キャラクター

青天国 春

春は表裏がなくポジティブ。アイドルとしての実力も高く、TiNgSをセンターで支える。

2話で、マネージャー助言により、杏夏と理王ではなく観客を見る事でリミッターを解除し、持ち前の「調整力」で観客に合わせた最高のパフォーマンスを発揮し、うるさ型のドルオタの固定客を獲得した。

1話のマネージャーに対する回答は、シャインポスト(=世界中の人がアイドル好きになるための道標)になる。個人的にはこの台詞も真意を掴み切れていないところがあり、道標=方向性という意味だろうが、誰からも好かれるアイドルのお手本という理解でOKなのだろうか。

考えすぎかもしれないが、春の問題はまだ残されているように思う。それは、春自信の売り込みよりも、杏夏や理王や全てのアイドルを好きになってもらいたい、という考え方が伺えるところ。つまり、他のアイドルとのタイマンでは負けるという勝負弱さ、もう少し言うと無欲過ぎるという問題をはらんでいるように思う。

また、春はその「調整力」がストロングポイントとして描かれているが、裏を返せば日和見主義的にもとれる。優しすぎて雪音のように直球でキツイ事を言えない。だからこそ、マネージャーが来るまで、TiNgSがポテンシャルを持ちながら埋もれていたという設定にも説得力がある。

学校生活では、三つ編みメガネと地味目なのも気になる。日常生活の地味さと、アイドルとしての眩しさとのギャップ(=明暗)を意図的に付けている。

それと、OPですれ違いからの因縁めいた振り返りが印象的なHY:RAINの黒金蓮との過去に何らかの問題があるのかもしれない。

これらの要素が、今後の物語にどう関わってくるのか、まだ底知れない何かがありそうで楽しみ。

玉城 杏夏

TiNgSではメインMCを務める杏夏だが、3話4話でマネージャーに攻略された。

1話のマネージャーに対する嘘は、自分が特別な存在でなくても、グループが特別な存在になればいい。どうも、引っかかる言い回しだと思ったら、直球でセンターに立ちたい、の意味だった。

客観的に分析できる強みもあるが、それゆえに常識の枠に囚われやすく、思いがけずロジックで言い訳を作りがちである。「平凡」だからと言い訳し、「特別な存在」になりたいという本音を覆い隠してストレスを溜めていた。

マネージャーにほだされる形で、因縁のセンターの曲「一歩前ノセカイ」を歌い、ファンのトッカの熱烈な応援もあって、失敗に対する恐怖を克服し、トッカにとっての「特別な存在」になるという成功体験を得た。

マネージャーに「そういう子供らしいところもイイと思うよ」と言わしめた事が、皮肉ではなく論理的な大人になりきっていない杏夏のアイドルとしての誉め言葉である。

聖舞 理王

TiNgSでは、「当然よ。何故なら私は理王様だから」が決め台詞。ダンスに難あり、アイドルとしての力量不足は自覚している。それゆえに、理王のファンは春や杏夏に比べて少なく、2人に対して劣等感を持っているハズ。

グループ内でも最年少の14歳。実際に子供っぽくて、上手くいかないと拗ねるし、大好物のプリンで手玉を取るようにご機嫌をコントロールされている。小動物っぽい可愛さである。

1話のマネージャーに対する嘘は、みんなから尊敬されるアイドルになりたい。これが、嘘だと言うのだから複雑である。

直球で解釈すれば、尊敬されたくない=軽蔑されたいだが、どちらかというと=愛されキャラになりたいと解釈すればよいのか。もともと、アイドルがキャラを作り上げるのは普通にある事だと思うが、理王の決め台詞の「理王様だから」も、本心とは違う嘘という事になるのか。

全くの余談だが、TINGSの中で理王だけが名前に季節を持たない。この辺りも、何か意味があるのか?

いろいろとまだ読めていないが、おそらく5話6話が理王の当番回と予想されるので、その意味でも5話が楽しみである。

祇園寺 雪音

ゆきもじは未だデビューさえしていない。だからこそ、既にデビューしているTiNgSでありながら、アイドルとしての切磋琢磨から逃げた杏夏への口調は思わず悔しさも込みで厳しいものになる。しかしながら、口ではキツイこと言っても、内心はかなり相手を気使っており、かなりの熱血キャラである。

雪音と春の対比は、北風と太陽を連想させるし、父親と母親の関係にも似ている。

よほどの体力自慢なのか、トレーニング室で腕立て伏せ992回というネタは今後行かされるのだろうか。

伊藤 紅葉

ゆきもじのもう一人。ちびっこキャラで理王と同学年。ダンス上手との事だが、そのことでダンス下手な理王を見下す。

日本語の使い方がトンチンカンで、理王とのアホ会話が楽しい。「馬鹿って言われる方が馬鹿」「確信が自信に変わった(ランクダウンしてんじゃん)」など、理王が突っ込みに回るほどの名言のオンパレードである。

意外にも、雪音が杏夏の悩みを解決したい事を見抜いていた。論理的な会話は苦手だが、実は天才肌のキャラなのかも知れない。

日生 直輝(マネージャー)

作品内で、TiNgSメンバーから名前ではなくマネージャー君などと呼ばれているのは、名前呼びだと人格を持ったキャラになってしまうためで、自分自身の個性を持たない匿名性の高い透明なキャラとしての位置づけを大切にするためのディレクションではないかと思う。

これにより、TiNgSは異性として好意を寄せる事もなく、マネージャーと関わっているという立ち位置を明確にする。スポ根モノならコーチである。それから、視聴者はマネージャーの目を通してTINGSの最深部に触れて行く事になるため、その依り代に余計なノイズを含ませないという事もあるのだろう。

マネージャーの嘘つきが輝いて見える設定は面白いが、その特殊能力がマネージャとしての力量に直結していない所がまた面白い。能力でチートになる訳ではなく、あくまで演出上のスパイスである。

冷静な喋りと力強い眼差し。鋭い観察眼と適切な療法。頼れる人脈。アイドルのために最高の環境を準備する徹底した仕事。本作で最もクールで熱い存在である。

マネージャーの流儀には信頼関係が重要な要素にあると思う。誤解を恐れずに言えば、マネージャーはTiNgSを調教して訓練された優秀なアイドルにしようとしている。他人が他人を動かす(=変える)。そのためには、お互いの信頼関係が肝になる。また、マネージャーはTiNgSの頑張る気持ちに反応して仕事をしている。走る気のない競走馬の面倒は見ない。全力で走りたい競走馬の走るべき方向を指示する。そして競走馬からの信頼を受けて更なるをフィードバックする。

4話の杏夏のマクドナルドでの説得にマネージャーのロジカルさが現れている。杏夏のロジックとマネージャーの説得は、下記の階層になっている。

  • 春がセンター、杏夏は脇役(=MC)が適任(=正しさ)
    • →アイドルは正しい事ではなく、やりたい事をやる
  • 失敗が怖い
    • →間違えたら、マネージャーがリカバリする(=安心して間違えていい)

さらに、マネージャーが凄いのは、上から目線で論破するのではなく、相手の目線まで降りてきている点にある。泣きじゃくる杏夏に「子供らしいところもイイと思うよ」と言い、ピクルスを取り除いていた件で「子供ですか」と返される。正しい事ばかりしている大人からの助言だと説得力に欠けるが、マネージャーも子供っぽい(=正しくない)という所が、杏夏に寄り添う彼の優しさに感じた。

おわりに

2話かけて問題提起と問題解決を描くゆっくりしたスタイルですが、これも主要キャラが5人と少ないところのメリットが出ていると思います。

まだまだ、他のキャラも謎と言うか、提示されていない情報がたくさんありそうなので、いわゆる今後の展開が楽しみ、というところです。

いやー、本当に面白いっす。