はじめに
ハイスコアガールがとても面白い。
懐かしいゲームネタに笑い、恋愛ドラマに胸キュンする。この二つの要素をメリハリ付けて進行し、恋愛ドラマに毎週泣かされる。
ハルオ、大野、日高の三角関係の中で、大野は物言わず本性が見えにくいと思う。SNSを拝見していても大野の心境を深堀している人はあまり居ない。
なので、一度、大野主観で、大野の気持ちを整理しておきたいと思い、ブログにまとめる事にした。
なお、現在、アニメは9話ですが、本ブログは、随時、更新する予定です。
ちなみに、私は原作未読です。
考察・感想
大野晶
第1話(最悪の出会い)
小学六年生の一学期。
大野は帰宅途中のゲーセンで日々のストレスを解消するのが楽しみ。クラスメイトの誰にも言えない秘め事である。
そんなある日、ストIIの対戦台で29連勝していたところ、卑劣な待ちガイル&投げハメの粘着ガイルに負けて連勝がストップ。あまりの腹立たしさに筐体を蹴り、対戦相手を殴り飛ばした。これが、ハルオとの出会い。最悪の印象だった。
それ以来、ゲーセンでちょくちょく出会うハルオ。台パンする癇癪持ち相手にワザと負けて対戦台を立ったハルオの姿をみて、大野がその対戦相手に乱入する。大野は真っ直ぐだから、そうした態度に腹が立ったのだろう。対戦台でもリアルファイトでも対戦相手をコテンパンに叩きのめした。
このとき、ハルオは仲裁に入り、代わりに癇癪持ちに殴られたり、騒ぎになる前に手を引いて一緒に逃げたりしてくれたりした。さらに、後日ゲーセン帰りに飴をくれたりもした。
ハルオは何故か大野のゲーセン通いの事をクラスにも秘密にし続けてくれている。
ハルオという人間は、意外と根は良い奴なんだな、と気付き始めた。
第2話(逃避行)
ハルオが語るゲーム話は楽しそう。ハルオの病欠に便乗し、ハルオの家に見舞いに来て、ハルオの自慢のPCエンジンをプレイして帰る。
そして、一学期終業式の日のがしゃどくろ遠征。
もともと、大野が現実逃避するための遠征だったが、幽霊ゲーセンだったり、トラブルで帰路は徒歩だったりで散々な目にあった。でも、吊り橋効果的に、ハルオが対応が気さくだったり、頼もしかったり、優しかったりしたのが、大野の心に染みる。
大野がこうしたレールから外れた行動をする事は滅多にない。いつも優等生で有り続けていた。
ハルオはまるで逆だ。言ってしまえば劣等生だが、レールに縛られる堅苦しさが無い。ハルオと居る間だけは、そうした、大野の今までの人生とは違う一面を生きられる。そんな風に感じ、ハルオに憧れを抱いていたのかもしれない。
第3話(突然の離別)
アメリカ引っ越しの事をハルオに直接告げなければならない。でも、言えない。
もっと言えば、大野は離れ離れになる前に、ハルオに好きと告白したかったのかも知れない。
最後になるかもしれない、小学六年生の夏休みの思い出に、ハルオと二人で遊園地のゲーセンや遊具で遊ぶ大野。乗ろうとした観覧車は営業終了し、結局その日は何も言い出せずじまいで帰宅。
2学期に入り転校する事がクラスに連絡され、ハルオに直接告げる事は出来なかった。
お別れ会でハルオは、一人だけプレゼントも持ってこなかった上に、悪態までついた。
ハルオはクラスでは大野とゲームで繋がっている事を秘密にしていた。だから、こんな最後のときでもそっけないのだろうか。ならば、私も今まで通り、誰にも心開かない状態で、このクラスを去ろう。そう思ったのかもしれない。
大野がこの時、感情を表わさず、対応していた事が痛々しい。
結局、大野はハルオの事をどう思っていたのか?
きっと、大野はハルオに対する恋愛感情は意識していたと思うが、ハルオへの片思いで終わるつもりでいたのだと思う。届かずに封印する片思い。
しかし、一人空港に見送りにきたハルオに動揺し、ハルオが、がしゃどくろの指輪のプレゼントを差し出したときに、大野はハルオからのプロポーズだと思い、凍り付いていた心が一気に沸騰し、大泣きし、ハルオに抱き着いた。
きっと、大野はこの時、ハルオのことを相思相愛の恋人どおし、と思ったに違い無い。
ちなみに、ハルオはいろいろ言い訳していた通り、恋愛の意味はなく、友情を込めたプレゼントだった。
第6話(再会、そしてすれ違い)
中学三年生の春。
楽しみにしていた恋人ハルオとの再会。
しかし、帰国したらハルオの近くに見知らぬ女が居た。私と言う女が居ながら、留守の間に他の女を作った? 私は捨てられた?
大野は胸に潜ませた指輪を大切に持っていた。ハルオに対する気持ちを秘め続けていた。大野は自分の思いを胸の奥にしまいこむ事に慣れている。慣れてはいるが相当量の怒りだったと思う。
その怒りを対戦台にぶつけ111連勝していた時に、対戦台の向こうにハルオが座った。そして、対戦放棄してその場から逃げた。大野はハルオに向き会えなかった。
逃げたのに、不本意ながらファイナルファイトでハルオと2Pプレイとなる。しかし、私の事も、あの女の事も何も言わない。何とか言ったらどうなの!と思っていたかも知れないが、大野は自分で喋る事はしない。この怒りを2P嫌がらせプレイでハルオにぶつける大野。
ハルオは大野の日高に対する嫉妬や、大野が恋人気どりだった事も知らずに、何が何だか分からない。
完全にすれ違った大野とハルオ。互いの本音が分からない。
第7話(埋まらない距離感)
ハルオの「目の上のタンコブ」発言に腹を立てる大野。どうしてハルオはこんなにつれないのか?
第8話(殴り合い、そして和解)
関西大会の決勝戦でハルオと対戦する事になった大野。今度ばかりは対戦放棄するわけにもいかない。
帰国後、初めてハルオと対戦で向き合う大野。パンチボタン不良のトラブルを申告せずに対戦しハルオに負けた。
何故申告しなかったかについては、作品内では、その場の空気を読んで、という解釈だった。
あと、個人的に思うには、大野は何でも出来て当たり前、逆境を言い訳しない、自分に対して厳しい、というストイックな性格が出ているようにも感じた。大野の存在自体がハードボイルドなのだと思う。
1セットははパンチボタンが効かない事に驚き、パンチ無しプレイに切り替えられなかったが、2セットは完全にパンチボタンに触れずにハルオを追い込んだ。3セット目はハルオのプレイも冴えて来て結局はハンデありでは勝てなかった。
夜の河原で、ハンデありで真剣勝負じゃなかった事をハルオが騒ぎだしたとき、リアルファイトでどついた。ハルオが「目の上のタンコブ」発言をしたのをきっかけにキレて本気で殴り合った。
ただ、ハルオが大野とゲーム談義したいがために、大野の帰国を楽しみにしていた、と言った時に殴るのを止めた。
そして、指輪を見られた時にハルオは「何でこんなもん未だに持ってんだよ」の台詞。
大野は理解した。
大野とハルオの繋がりはゲーム仲間であり、恋愛ではない事を。そして、やはりハルオにとって大野は特別な存在で有る事を。
一番の存在だけど、同志として大切。ある意味、大野は失恋した。
大野は一旦恋愛を棚上げして、現状を良しとする結論に至ったのだと思う。そう思うと切な過ぎる。
相手はゲーム馬鹿。恋愛の意思はない。ストイックな大野は、またも心を胸の内にしまったのかも知れない、と感じた。
第9話(続かない幸せ)
バーチャ1の横並び筐体でハルオに手を抜きワザと負けたり、その後プレイをみるふりをしてハルオを見たり。
川崎遠征でヴァンパイアをプレイするなど、ハルオの喜びそうな事を、ハルオと一緒にしていたが、大野自体がノリノリという感じでは無かった。
多分、このときの大野は、気晴らしのためにゲーセンに来るのではなく、ハルオと一緒に過ごすためにゲーセンに来ていたのだと思う。一番の目的がハルオ。
ラーメン屋でハルオが高校進学で別れが訪れる事を告げたとき、大野はうつむき、そしてあきらめの笑みを浮かべた。ハルオは王子様のように私をさらっていってはくれないらしい。
迎えの車が来て別れる時、ハルオが「オレといて楽しいか?」と聞かれ、少し微笑みながら、いつも通り何も答えなかった。大野はハルオと一緒に居るためにゲーセンに来ているのに、ハルオはその事にも気が付かないのだろうか。
大野はハルオとゲーセンに居るのになぜか曇った表情に見えた。これは、大野はハルオが恋しいのに、ハルオは大野を同志としか見ていない、ある意味、片思いの切なさゆえの表情だと思えた。その表情の曇りを、ハルオは察知して楽しいか?と聞いて来たのだと思う。
そして、ハルオが感じている別れの予感を、大野もまた感じていた。
2学期に入り、ハルオはゲーセンに来なくなった。大野にとってはハルオとの突然の疎遠。
大野は、ハルオがゲーセンに戻ってきたときに受け入れられるよう、ゲームの腕を磨き、横並び筐体の隣の席を空けてゲームを一人プレイしていた。いつもいつもハルオを待っていた。
しかし、半年たっても、ハルオはゲーセンに来なかった。
高校受験の朝、じいやの車の後席で、ハルオが大野と同じ上蘭高校受験するためにゲーム断ちして受験勉強していたと、告白してくれた。ゲームや大野が進化しているのに、自分が進化しない訳にはいかない、と。
ハルオが半年間ゲーセンに来なかったのは、大野を追いかけるためだった。ゲームを追いかけたんじゃない、大野を追いかけた。大野はその事が嬉しくて、ハルオの手を握ったのだと思う。
ハルオが最後に言いかけた言葉はなんだったのか?それは、結局分からずじまいになった。
大野はハルオの方に顔向けせずに手を握ったし、ハルオも驚いた感じで手を握り返す事はしなかった。大野の恋愛表明は指輪が代弁したと思うが、恋愛の一線に対し、本気だからこそ、互いに慎重になっているのかもしれない、と思った。
第11話(絶望の淵での再会) 2018.9.24追記
ハルオの中学時代のクラスメイトの大野、宮尾、小学時代のクラスメイトの土井にゲーセンで出会う。
宮尾はハルオと同じ高校に行ったはず。最近出会えないハルオの事を聞こうと喉まで出たが聞くのを止めた。
その変わりと言ったらなんだけど、日高が大野に直接ハルオの事に関して質問してきた。
- 「最近、矢口君に会っているの?」 →動揺してバスケボールをモロ顔面にくらう
- 藪から棒に何。結局、ハルオとは受験日以来、会えずじまい。
- 「上蘭高校に落ちて矢口君引け目を感じているらしいの、大野さんに対して」 →動揺してバーチャコップ誤射。
- そうなの?ハルオに会えないのは避けられていたの?
- 「矢口君の事、どう思っているの?」 →引き続き誤射
- 大好きに決まってる。でも言えない。
- 「大野さんの本当の気持ちを教えて。大野さんが矢口君の事をなんとも思っていないなら、私が矢口君の事を…」 →バーチャコップボスキャラに怒りをぶつける
- 何この女!ハルオの事は譲れない。こんな女に負けられない!負けるわけない!
上蘭高校受験日以来、ハルオに会えない大野。二人はいつもすれ違い。ハルオに会いたい。
大野はいつも通り何も答えず、自分の胸に感情をしまい込んだ。
家に帰れば、業田先生の更なる締め付けが待っていた。
業田先生曰く、将来は大野財閥令嬢として将来の結婚相手も決められている運命を受け入れろ。盛り場への出入りは禁止。唯一のハルオとの接点だったゲーセンにも通えなくなった。
ハルオへの気持ちは募れど、もうこの状況ではハルオに会えないという絶望。その悲しさに耐えられず一人枕を涙で濡らす大野。もう、限界だった。
きっと何日も思い詰めた。そして家出をした。
じいやに見つからないよう遠くに行く必要があった。地元しか知らない大野は、昨年の夏休みにハルオと遠征した川崎のゲーセンに来ていた。他に行く当てもなかった。大野の心は完全に漂流していた。
何はともあれ所持金が無い。対戦台での負けて持ち金が無くなれば、ゲーセンにいる存在意義さえなくなってしまう。大野にとって50円玉は、マッチ売りの少女のマッチだったのかも知れない。バンパイアハンターの連勝記録はやけになった大野の意地だった。
70連勝した頃、少し手強いビシャモンが乱入してきたが難なく撃退。軽く溜息が漏れた。長時間の対戦で流石の大野も集中力も切れかけていた。ずっと緊張の糸が張り詰めていた。
先ほどの対戦者が喋りかけてきた。聞き覚えのある優しい声に顔を上げた。ハルオだった。
- 「ったく、相変わらず大したお嬢様だぜ」 →目を丸くする
- 何故、ハルオがここ川崎に?
- 「ようやっと、見つけたぜ」 →ふて腐れる
- 家出の事知ってる!連れ戻しに来たの?家には帰らないから!
- 「飯でも食いに行くべ」 →ハルオの後ろを付いてゆく
- お腹空いた、待って、置いていかないで
ハルオは大野を怒ったり、連れ戻すと言ったり、家出の理由を聞いたりはしなかった。ハルオは、今まで通りの、優しい浸透圧で大野の心に染みてきた。大野にはハルオしか居なかった。
結局、大野は愛に飢えていたのだと思う。親子姉妹の中で甘える描写が全く無い。
彼女は幼いころから完璧を求められ寡黙でハードボイルドな生き方をしてきた。普段、周囲に悲鳴をあげずに、誰にも心を開かずに行動するのは、大野自身の性格というより、業田先生の教育の賜物だったのかもしれない。だから、誰かに弱い面を見せる事もなく、孤独の中に生きてしまう。
大野のバリアは、ハルオの優しさでしか中和できない。ハルオは唯一、大野の心にリーチする。ある意味、大野には自分が無い。ハルオだけが大野の自我を守ってくれる。
家出の件は一件落着したとしても、本質的な問題は何も解決していない。
大野の背負う闇の奥深さを垣間見せた回だったと思う。
第12話()
おわりに
私は、日高が好きだけど、やっぱり大野を語らずしてハイスコアガールは語れない。
大野は、真っ直ぐで、強くて、寡黙で、達観してて、何でも出来て、お姫様で、凛としてて、だけど普通の女の子でもある。
それにしても、2018年にこんな恋愛ドラマにハマるとは自分でも意外だったけど、1990年代、まだ「高校教師」などの純愛ドラマもあった時代設定だからこそ、恋愛ドラマに違和感を感じないのかもしれない。
今みたいにSkypeで気軽に海外の人と会話する事もできない。携帯電話もない。そんな時代だから、人と人のコミュニケーションには今よりは少し重いものだったと思う。だから、大野に限らず、ハルオも日高も気軽に人の心に突っ込んでいけない、のだと思う。
この感覚を、当時を知らない人たちが、感じ取ることが出来るだろうか。
12話で原作4巻ぐらいまでらしいので、二期もやって、ハルオと大野と日高の事を最後まで見届けたい気持ちが一杯です。