たいやき姫のひとり旅

アニメ感想など…

2019年秋期アニメ感想総括

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はじめに

2019年秋期アニメの感想をまとめて残します。今期視聴のアニメは以下。

  • ぬるぺた
  • 私、能力は平均値でって言ったよね!
  • 星合の空

作品毎に評価(rating)と良い点(pros)と悪い点(cons)を記載します。

なお、今回は2クール以上で視聴中のアニメがありますので、それについては、評価せずに中間段階の感想だけ書き留めておきます。

  • 歌舞伎町シャーロック
  • アイカツオンパレード!

先送りになっていますが、下記は絶対に良い作品と分かっているのですが、正座してみるつもりで視聴時間がとれていない作品です。これについては、直近の鑑賞を諦めて、どこかでのんびり鑑賞しようと思います。

感想・考察(今期終了)

ぬるぺた

  • rating ★★★★★
  • pros
    • 全体を貫くブレの無い姉妹愛のドラマ
    • ショートアニメである事を逆手に取った、少人数の意外性あるストーリー構成
    • ハートウォーミングコメディ、哲学、SF、何でもありのごった煮感
  • cons
    • 敢えて、特に無し

本作を要約すると、ある事情で離れ離れになり会話する事もできなくなった姉妹が、お互いを求め合い、最終的に再会し、互いの姉妹愛を確認し合い、一緒に暮らしてゆく、というお話である。その物語にブレは無く姉妹愛のドラマを丁寧に描く。

最初は、交通事故で死亡したペた姉を模したロボットを作る妹のぬる、というところから始まり、過保護だったり不味い暗黒炒飯を食べさせようとするぺたロボから逃げるドタバタコメディ、次第に姉妹愛のハートフルな雰囲気を織り交ぜ、後半から世界を食べ尽くそうとする「バグ」との戦い、その後の世界の違和感、居なくなったペたロボ、誰も居ない死ねない世界で一人姉を思うぬる。そして、11話ラストで病院のベッドで目が覚め、交通事故にあったのはぬるの方だったこと、今までぬるが居た世界は、ぺた姉が用意した仮想空間だったこと、という衝撃の事実が明かされる。

私は当初、死別したぺた姉を追いかけるのではなく、ぺた姉離れして独り立ちするドラマを想像していたが、そうではなかった。離れ離れになった姉妹は、お互いを大切に思い合った。だから、結末は姉妹が再び一緒に暮らす事こそが王道のハッピーエンドとなる。

では、ぬるは事故以前のぺた姉べったりに戻ったのかと言えば、それも微妙に違う。先の仮想世界で友だちを作ったり、逃げずにバグ退治したり、前向きな体験もした。退院後、登校したときもクラスメイトの前で言葉に詰まっても、小ぺたロボがサポートしてくれたおかげでクラスで浮く事もなかった。そうした事で、ぬるも少しづつ前進しているという、明るい期待を感じさせて物語は終わる。

5分程度のショートアニメでありながら、全12話構成でプロットを綺麗に使い切り、視聴者の興味を惹き付けたストーリー構成は見事。

このような謎解き仕立てのストーリー構成と姉妹愛のドラマをショートアニメ作品でキッチリ仕上げてきた事が新しい。登場人物をぬるとぺた姉(=ペたロボ)の二人に絞った事、ショートアニメゆえに尺の都合上設定を細かく見せなくても許されるというショートアニメの欠点を逆手に取った演出だったと思う。

ここまでで触れていない事で、6話で登場してぬると友だちになったかき氷屋のかきちゃんというゲストキャラが居た。上がり症で人見知りのぬるを相手に、絶妙のアプローチで友だちになってゆくコミュニケーション力の高さ、ぬるの心の成長の上で重要なキャラであり、個人的に非常に好きだったのだが、7話以降再登場する事は無かった。

ぬるの居た世界は、ぺた姉が用意した仮想世界だったが、その世界にどのようにかきちゃんがアバターとして出てきたのか?についての説明は一切無かった。ちまたでは、ぬると同じように病院で意識不明で寝ていたかきが、仮想世界に迷い込んだのでは?などと考察されている。投げっぱなしとも言えるが、色々と妄想・考察を楽しむ余白があるとも言える。この辺りは人により受け取り方が違うだろうが、個人的には、これもまた良きかな、と思う。

なお、本作に関してSNSを観測していたが、本作の視聴者数の絶対数は少ないと思われるが、その視聴者の満足度は高いと感じた。知られざる名作である。昨今、ショートアニメでも趣向を凝らし、刺さる人に刺さる作品が作られていると感じるし、より楽しいショートアニメが増えて欲しいと願う。

私、能力は平均値でって言ったよね!

  • rating ★★★★☆
  • pros
    • 懐パロで油断させておいて、意外と今風なドラマ
    • 単純にキャラの可愛さ
    • 俺TUEEEなのに、仲間と対等であるマイルの姿勢
  • cons
    • 主人公マイルのキャラがブレている様に感じてしまったこと

まず本作の良かった点について。

本作の最大の特徴は、アラフィフ世代直撃の懐かしパロディ満載な点にある。主人公のマイルは、異世界転生前はJK、転生後は12歳の美少女だが、パロディの出典が古すぎて、マイルの中身がオジサンではないか?と思う程だ。

実は、マイルは、異世界転生時に望まずして通常の人間をはるかに凌駕する魔力(=ナノマシン操作能力)を持ってしまう。その強さの余裕と、生前のオタク気質があって、マイルがパロディで茶化す。それってお約束ですよねといった具合に。

興味深いのは、レーナの両親や、レーナを育てたPTが、盗賊に殺された経緯を仲間に告白するシリアスな展開で、マイルは「それで?」と仇討を否定する。その心は、仇討をしても悲しみの連鎖が増えるだけ、もしレーナが死んだら、仲間であるマイル達が悲しむから、恨みつらみで命を粗末にして欲しくない、という現代風な理屈。

本作はそうした、テンプレ展開に対して肩透かしを喰わせる事を特徴とする物語運びになっている。それゆえ、何か大きな課題を解決してカタルシスを味わう作風とは違い、ドラマの盛り上がりには欠ける。演出上も感情を溜めても爆発する事無く、時に茶化しを入れながらトーンダウンしてしまう。当初は、その肩透かしの演出に驚いた。しかし、この作風が本作の真骨頂なのだと思う。

そして、キャラも総じて可愛い。主人公のマイルをはじめ、ツンデレのレーナ、宝塚風のメーヴィス、やさしくもがめついポーリンと、どのキャラも個性的で可愛さが分かりやすい。OP/EDも、気負いの無い楽しくなる感じの曲である。聞いていてワクワクする感じ。途中、レーナの仇討のくだりなど、シリアスを混ぜてきた所はあるが、基本はあまり深く考えずに見れる、口当たりの良い作風である。

あと、本作で感心したのは、主人公のマイルが人間としては突出した能力(この世界では魔法)を持っているにも関わらず、それに奢る事無く、仲間と対等な関係にある事が良いなと思った。

もともと、マイルは転生したら普通の生活をしたい、という小市民志向であり、魔王として君臨するかの願望は無い。その能力があれば、パーティで活動する際も、全部自力でやってしまえば最速で解決してしまう事も多々ある。しかし、仲間の成長のために、能力をお守り代わりに使ったり、トレーニング相手になるために使ったり、とある意味、部下を育てる中間管理職のような事を考えている。決して、社長になろうという気はない。だからこそ、共に行動し喜びを分かち合う仲間の存在に意義がある。頼り頼られの関係に人間が生きるための意味がある。その関係性が心地よかった。

次に本作の悪かった点について。

ただ、これは面倒くさいオタクの戯言と思っていただいてもいいかも知れない。一言で言えば、ストーリーにご都合主義の甘えを感じる点である。

本作は、11話で失踪した探検隊を捜索するが、どうせマイル一人で抑え込める敵であると思い込み、マイル自身と仲間を危険な目にあわせてしまう。いくらマイルが強いとは言え、仲間を危険にさらす事は本来在ってはならず、慎重に行動する必要があったと思うし、マイルが一番その事を気にしていたハズである。しかし、マイルは油断して判断を誤った。最終的には、強敵も退治して事なきを得るが、その辺りもご都合主義。しかしながら、本作でご都合主義は茶化して使う習慣もあり、あえてご都合主義を使うという事は、それを知ってて使っている、というふうに視聴者は見てしまうから、それほど目くじらを立てて起こる人は居ない。

しかし、私はキャラの心情に寄り添う事と、物語を重要視してアニメを観ているので、キャラがブレていると作品の評価が下がってしまう。本作は、パロディという鎧を纏って、テンプレ展開を引用して茶化すという作風であるがゆえに、その物語に雑味を感じてしまった。

もちろん、楽しさ優先の本作において、これは些細な事であり、多くの視聴者は気にしない事だと思う。重箱の隅をつつくような話だとも思うし、もしかしたら私の理解が足りていないだけかもしれないが、個人的にどうしてもこの事が気になったので、書き留めておく。

星合の空

  • rating ★★★☆☆
  • pros
    • ソフトテニスのスポーツの爽快感と、家庭の問題の心の痛みの、背中合わせのドラマ
    • アニメーションとして丁寧かつ良く動きと、透明感ある劇伴
  • cons
    • 未完の大作、であること

本作の善し悪しの話の前に、まず本作が12話で打ち切りの話をしなければばらない。最終話OA直後の赤根監督のTwitterへのリンクを下記に示す。

要約するとこんな感じである。本作は全24話構成の分割2クールで製作が進められていたが、2019年4月に1クールしか放送できないことが決まる。OA半年前の状況で全24話構成を変更する事もできず、前半12話を製作してOAした。後半12話を作る予定は今無い。応援して欲しい。

これに対し、たくさんの応援のリプが付いている。逆に、個人作家ならいざ知らず、共同制作の監督がプロとして未完の作品を世に出すのはどうか?という疑問の声も見かけた。個人的には、このまま未完の大作になりそうな予感がしているが、本作が完結していない前提として、★2.5個のつもりで本記事を書いている事をご承知おき頂きたい。

で、まず、作品の良かった点について。

本作のソフトテニスのスポーツとしての爽快感はかなり良かった。駄目の烙印をおされた部員達が、眞己の入部をキッカケに、組織として有効にポジティブに機能し始め、少しづつ成果を出し始め、一致団結してゆく。格上相手の弱点を着きながら、自分達の長所を生かしたプレイで、練習試合で1ゲーム取れるようになり、成長を実感する。弱小チームからやればできるを実践してゆくサクセスストーリーが気持ちよい。しかも、そのカット割り、SE、レイアウトなど見ていて小気味よくて気持ちいい。この辺りは演出力の高さを示すものだと思う。

しかし、部員達は全員、家庭の問題で心の痛みを抱えていた。もともと、やさぐれていたのはそのせいでもある。離婚した父親からの暴力、出来の良い兄との比較から始まった母親と気まずい関係、里親告白からの戸惑い、幼児期の虐待、モンスターピアレント、甘すぎる両親、好きな絵を両親に認めてもらえない、再婚の母親とのギスギス、ジェンダー問題などなど。どの家庭も親は絶対的な存在で有り、子供には選択権はなく、モロにストレスを受ける。

親からのストレスを画面を通して直に伝わってくるので、視聴者もかなりのストレスを受ける。そのストレスを解消するのが、スポーツモノの爽快感の部分である。両者は片方だけでは成立しない、背中合わせの要素である。

主人公の眞己は、人間を見る力、人をポジティブに動かす力に長けている。時には相手を怒らせてやる気を出させ、時には成功体験を作り自信をつけさせる。ジェンダー問題で悩む悠汰には、直ぐに結論付けずに、暫く、自分がどうありたいのか?考えながら生きていけば良いのでは?と身近な人の経験談をもとに助言する。眞己の優しさから出るストレスのケアが彼らの傷を癒す。視聴者の中には、中間管理職だったり、サークルのリーダだったり組織をまとめる者もいると思うが、エンタメ作品の中とは言え、その組織を見事にポジティブに活性化してゆく姿は痛快に写ったことと思う。

しかし、親は変わらず、子供たちのストレスは継続する。問題の根本解決は無い点が、よくある物語とは異なる。視聴者も安堵する事無くストレスを受け続ける。この親子の問題の解決は、後半12話で行われるための伏線だったのかも知れないし、最後の最後まで解決はしなかったのかも知れないが、それは、現時点では分からない。

ともあれ、この問題の中で生きる子供たちのドラマは見事に成立しており、苦み痛みを持つ子供たちが、その問題から逃げずに向き合う姿に、そのドラマに、本作の強さ、良さを感じていた。

つぎに、作品の悪かった点について。

前述の通り、本作が未完の大作であること。作風も硬派だと感じていたが、赤根監督自身も相当な硬派だとは思う。しかし、12話のCパートは、OP/EDを削ってまでして入れるには、ある種のギャンブルというか、大人げない気もする。この、モヤモヤを持って、素直に悪かった点とする。

感想・考察(来期以降継続中)

歌舞伎町シャーロック

2クール半分(11話)まで鑑賞の感想です。

本作は、推理物であることが一つの見所だと思う。11話までの展開で言えば、切り裂くジャックが、早くから登場していた意外な人物だったり、ホームズが殺人現場をチェックしただけで、犯人像をプロファイルする部分とかが、推理物の醍醐味である。ただ、通常のミステリー小説と違い、じっくり犯人を探すような時間は持たされず、テンポよく事件は解決してしまう。ただ、推理物のテンプレである謎解きを落語で興じるなど、アニメならではの粋な部分もある。

もう一つの見所は、変人で濃すぎるキャラたちにあると思う。まず、シャーロック含めて原典の毒々しさをオマージュにしたキャラも極端だが、ゲストキャラも相当に濃い。例えば、小林回に登場したゲストキャラのヤクザの杉本は、狂人としての狂気と変人としての可笑しさを同時に感じさせる良いキャラだったと思う。突出した狂気を笑いを込めて描く。もともと、狂気と笑いは紙一重であり、そうした面白さがある。

本作は、シャーロックホームズの原典を骨格にキャラ設定しているので、シャーロックホームズの予備知識があるほど楽しめる作品になっている。マニアは原典との照らし合わせでニヤニヤできるという楽しみの部分はある。例えば、ホームズは遠慮が無くて不躾で失礼、味覚がおかしくて、相当な変人という原典のテンプレがあると、本作のシャーロックの奇行もそれに沿ったものだと理解できる。ただし、原典では好敵手役のモリアーティだが、本作では敵役という先入観を持たせて、見方側という引っ掛けもあって、一筋縄ではいかない。

というところまでが前説。

本作で、私が好き嫌いの評価に悩むポイントがあったので、その事について触れておきたい。

一つは推理物特有のミスリードの演出について。

本作というより、推理物全般に言える事なのだが、謎解きを鮮やかに見せるために、謎かけの部分で視聴者の気を逸らす、もしくは騙すために、ミスリードを誘う演出を使う事が多い。これが、文芸作品なら真犯人を示唆する事実は文章して描写しなければ、読者の意識を逸らす事も可能だし、文章ゆえにそうした情報を意図的に削除してもさほど気にならないし、気持よく騙される事ができる。

しかしアニメ作品の場合、絵で描いて分からせるメディアである特性上、表情を見せるなら、どんな感情の表情なのか?というのを決めて作り込むわけで、Aか、Bか、Cかどの感情なのか分からずに絵を描く事は難しい。文章のように、その情報を削って演出する事は不可能ではないが、そのシーンだけ表情が無いという事で怪しまれてしまう。そういった背景があるからだと思うが、意図的にミスリードさせる方向に正確な演出をして映像化してミスリードを誘う。勿論、見ながら作り手側がらの引っ掛けか否か常に考えながら見るわけだが、あからさまであればあるほど、騙しのための映像が鼻についてしまう。それが今回のモリアーティだった。

で、今回のモリアーティはホームズと組んで味方であるワトソンを欺くという自作自演だったので、すなわちモリアーティがワトソン自身をミスリードさせるための演技、演出をしていた。その意味では、キャラの心情と演出は一致していて乖離は無いから、無茶演出ではないのだが、やはり、演出のごり押し感が気になった、というのが正直な気持ち。余談だが、謎解きは引っ張らずに1話の中でまとめて、サクっと流した方が、作風的には良いのかもしれない。

もう一つ気になったのは、切り裂きジャックの真犯人の扱いの件。

切り裂きジャックは猟奇殺人犯なので、もっと恐ろしい存在として描いて欲しかった。

ジャックを視聴者が憎むために、モリアーティの素性とこの事件の関りを描き、またジャックが狂人である事を描くのだが、汚い言葉で醜い表情の小悪党みたいな感じの演出になってしまった。その後のモリアーティのジャックへの復習劇を考えると、視聴者にも憎しみの感情を持ってもらう必要があっての演出だったと思う。

しかし、個人的には、猟奇殺人犯の恐怖は、小悪党なんかじゃなく、限りなく狂人で得体の知れない底知れぬ恐怖感である方が良かったと思う。例えば、映画「羊たちの沈黙」のレクター教授はかなり怖かったし、ジャックについてもそうした怖さが欲しかった。

結局、この二つは、この点を醒めてみてしまうと、作品の味わいが低下してしまう要素で、本来であれば、そこを気にならない様に騙してくれる作品が上質なのだが、どうもその辺りに何となく雑味を感じてしまった。

勿論、途中途中を楽しく見ていたし、面白い作品だとは思うが、詰めの甘さみたいな感じが気になった。まだ、後半1クールもあるので、その辺りを気負いせずに見て行きたい。

アイカツオンパレード!

13話まで鑑賞の感想です。

私はオンパレード!で初めてアイカツを観はじめたアイカツ初心者なのだが、このコンテンツの高濃度で、勢いある作風に毎度気圧されながら観ている。私が本作から感じるポイントは下記。

  • 超ポジティブならきを応援したくなるドラッグとも思える不思議な作風。
  • アイカツ7年の歴史の重みを感じる作品。

何と言っても、姫石らきのキャラが濃すぎる。先輩に遠慮なくちゃん付け。常にポジティブ。正直、最初は厚かましくて暑苦しいと感じていた。が、見続けるうちに、らきの感動や、らきの頑張りが、嫌味に感じなくなり、らきが頑張っている姿を見ていると、こちらも無意識に応援してしまうようになっていた。この、らきは本作の力強さを象徴している。大人の私でさえクラクラするのに、先入観の少ない子供が観たら、より強くらきの素直さを受け止め、応援したくなるのではないかと思う。

それは、ステージ上のアイドル達の歌唱シーンの派手さ賑やかさでハイな気分にさせて、更にらきのポジティブ発言やポジティブ行動の数々が化学反応を誘発し、脳みそがらきのことを好きと錯覚させ定着させてしまう、ある意味麻薬的なドラッグ的な映像作品なのではないか?とさえ思う。本作が物語が非常に薄いこと、演出も波を持たず、常にハイテンションなことも、ドラッグアニメとしての一因をになっているように感じる。

もう一つのポイントは、アイカツ7年の偉大な歴史の重みを背負っている事。例えば、星宮いちごが喋る一言一言は、その背景を知らなければ、よくある台詞にしか聞こえないかも知れない。しかし、これまでの経緯を知れば、その台詞の重みが何十倍にもなって視聴者にのしかかってくるという情報圧縮された作品である。具体的には、無印の大空あかりとスターズ!の虹野ゆめが、ユニットを組んで「Future Juwel」を歌う。その歌詞が、憧れの先輩を追いかけながら、自分らしさで悩んでいた経緯があってこその歌詞であり、あかりとゆめにピッタリの歌詞なのである。アイカツの過去を知らなければ、この歌詞も今風の歌詞というだけで終わってしまう。その積み重ねの重さを、アイカツオンパレード!はまじまじと見せる。

今までは、過去作品は終了して、新たなアップデートされた設定で新シリーズが始まっていた。その度に変るところ、変わらないところの議論や評価はあったのだろう。しかし、今回はそうした枠を超越して過去シリーズを全肯定する。その作品愛が凄いし、素晴らしいと思う。

おわりに

今期の作品は、物語的にクセの多い作品が多かったと思います。たまたま、見ていた作品が特にその傾向が強かったのかも知れません。

物語の捉え方に戸惑いを覚える作品が多かったように思います。のうきんは基本的に楽しいのですが、懐古パロ過多ゆえに、個々の物語としては成立しているのに、なんとなく俺TUEEE設定のせいで、ご都合主義に見えてしまうという雑味を感じてしまったのですが、もしかしたら、楽しい優先のための作劇優先脚本なのかも…、とか。

星合の空の前半1クールゆえからかも知れませんが、痛いドラマでえぐるけど、物語としては全く動かず、物語視点では楽しめなかったなあ…、とか。

そうした、特殊な作品を見ていたような気がします。しかし、物語偏重すぎると、逆に楽しめないこともあるという諸刃の剣のような事を感じていました。色々と、難しいく考えてしまったのかも知れません。