たいやき姫のひとり旅

アニメ感想など…

ぬるぺた 10話~12話

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はじめに

最終話である12話を見終えて、強い姉妹愛が報われる結末に安堵しました。上出来です!

ショートアニメなので、視聴数は少なかったと思いますが、逆に視聴者の満足度が高い。

シリーズ構成は見事に必要な要素を詰め込み、ショートアニメだからこその思い切った脚本が良かった。短尺で尺を揃えるよりも必要なシーンをキッチリ描くと言うスタンスは共感しました。

今回は10話~12話の感想・考察になりますが、これまで9話までブログに感想・考察を書いていますので、こちらも見ていただければ幸いです。

考察・感想

今までの話の振り返り

本作では、独りぼっちのぬるの世界と、そこからのぬるの生還が描かれた。その流れを下記に整理する。

  • 1話:引きこもりのぬるがぺたロボを作る。
  • 2話:ペたロボによる地獄炒飯攻撃。
  • 3話:ぬるが不登校の理由を喋る。お風呂で姉妹仲良く。ぺたロボに甘えるぬる。
  • 4話:宇宙ステーションでペたロボのバッテリー切れ。
  • 5話;宇宙ステーションでぺたロボのリセット出来ず涙するぬる。
  • 6話:かき氷屋のかきちゃん登場。対人恐怖症を乗り越え仲良しになる。
  • 7話:ペたロボが一人でバグと戦い負傷して高熱を出す。
  • 8話:バグ退治中にぬるがぺた姉の交通事故思い出す。留守番は嫌。ペたロボと一緒に戦いたい。
  • 9話:ペたロボとぬるの協力プレイでバグ退治完了。
  • 10話:バグ退治後、誰も居ない世界がおかしな事に気付き始め、最後にはペたロボも消える。
  • 11話:消えたペたロボに戻って来て欲しい一心で良い子になるぬる。最後に病院で目覚める。
  • 12話:それまでの世界がぺた姉が作った仮想世界だと分かる。退院後、学校に行き始めるぬる。

ギャグ物の5分アニメだが、物語としての流れが確立している。振り返ってみると、どの話も抜く事が出来ない精密なプロットのようにも感じる。

1話から9話については、過去ブログに詳細を書いたので、今回は10話から12話の詳細について触れて行く。

ぬる

この物語の肝は、ぬるの孤独とぺた姉への愛である。

ぬるは9話までの流れの中で、新しく友達が出来たり、バグ退治で自発的にペたロボ(ぺた姉)を守りたいと思ったり、自立する素地を固めて来ていた。

しかし、この世界の誰も居ない違和感を直視し、ひっそりぺたロボが姿を消えた意味を考えたが、良く分からない。ただ、寂しい、ペたロボに戻って来て欲しい。その一心で頑張ってぺたロボ(ぺた姉)に言われていた身の回りの事や、学校に行ったり、地獄炒飯を食べた。

この事も、9話の諦めず自発的に行動出来る事の実績があっての事ではないか、と思う。ぬるはペたロボを通じてぺた姉の諦めない気持ちを知らず知らずに見習っていたのかもしれない。

地獄炒飯の大粒の涙は、いっそ死ぬ気で食べた事、ぺた姉のアイデンティティを感じてしまった事、そしてそのぺた姉にもう会えないという悲しさ、色んなものが混ざりあっての感情崩壊の涙だったと思う。

そして、その後、デジタル世界でペたロボに感情をぶつけるぬると黙って抱擁するペたロボ。良く頑張りました。そして、病院のベッドで目が覚めると傍らに泣きじゃくるぺた姉の姿。

結局、ぬるは引きこもりだったりで、逃げる事を選んできた人生だったのだと思う。その拠り所が唯一のぺた姉だった。生死をさまよい生還するまでに、その逃げ癖を改善するというドラマというか物語なのかと11話まで見て、当初は思っていた。もっと言うと、ぬるが姉依存から脱却する物語なのかと思っていた。

しかし、12話を見ると、リハビリを経てぺた姉の地獄炒飯からは逃げ、小ペたロボがぬるを学校に送り届ける。学校では自己紹介でもじもじして、またぼっちになりそうになる。今まで通りの繰り返し。

しかし、小ペたロボがその場を盛り上げ、ぼっちは回避できた。そしてぬるは自信を持って、私たちは二人一緒で「ぬるぺた」であると言う。ある意味、ぺた姉依存のままである。

ぬるの問題は何も解決していないのではないか?と思われるかもしれないが、実はそうではないと思う。

この物語は、とある理由で離れ離れになった姉妹が、直接会話する事も出来ない状態で、互いを強く求め合い、最終的にはその強い願いが叶い再会する、という姉妹愛の話である。だから、この姉妹は一緒に居ても良いんだというのが物語の決着である。だから、小ペたロボがウザイくらいにぬるの世話を焼くのだが、その結果、ぬるはぼっちにならずに友だちが出来そうな所で終わる。

ぬるの対人恐怖症については、今もなおリハビリ中であり、そこはぺた姉ではなく小ペたロボがフォロー&ケアしてゆく、という筋書きである。すなわち、未来に向けてぬるの成長をサポートする役目であり、成長が完了した時、小ペたロボは不要になる。

ギャグテイストという事もあるが、姉妹愛の強さとともに、将来に向けて改善されつつある明るさを感じられる事が、この作品の視聴後の後味を良くしているのだと思う。

ぺた姉(ぺたロボ)

本作はぬる主観なので、ぺた姉の気持ちは客観情報でしか提供されない。ある意味、ポーカーフェイスである。ぺた姉の本音は出てこない所が、本作の味噌でもある。

ぺた姉は、意識不明の妹のリハビリの為に、仮想世界を作ってぬるを住まわせた。そして、その行動の全てを見守りつつ、後でスマホで見れるようにしていた。

想像だが、ぺた姉は仮想世界を作りし神であるのに、仮想世界に直接登場する事は無かった。それは、目的がぬるのリハビリであったからと思われる。いきなり自分が登場したら、甘えるのは目に見えている。その部分をなんとかするのが目的だったから。基本は見守るしかできなかったはず。

しかし、ぬるはペたロボを作る。そして、姉として慕う。その姿を見て、ぺた姉は嬉しくないハズは無かったと思う。

途中でバグが出現してきた時、ぺた姉はペたロボを駆使してデバッグを開始する。危険なので黙っていたが、途中でデバッグの事をぬるに気付かれてしまう。そして、危険を承知でペたロボとぬるの共同作戦によりバグを殲滅出来た。ぺた姉は、ぬるの守られるだけじゃなく守りたい気持ちの芽生え、成長を知ったハズである。

ここで一つ疑問。ぺた姉はペたロボになりすまして仮想世界を生きていたか?それともペたロボは自立して勝手に動いておりぺた姉は見ているしか出来ない設定だったのか?

これはどちらとも取れると思っているが、私はペたロボにちょくちょく乗り移っていたのだと思う。

そう思うのは、8話の片手ダンプの時の笑顔と、台詞のシンクロ感だが、本当の所は分からない。

ただ、10話でペたロボが服を脱いで消えてしまった件は、ぺた姉が仮想世界の神として、世界を動かした結果だと考えている。それは、ぬるの自立を促すために、思い切ってペたロボが居ない状態を作り、そろそろ仮想世界から抜け出して欲しい、という事だったのではないか?

案の定、ぬるは身の回りの事を自分でやり始めた。それが、誰も居なくて仕方なくてやるのではなく、良い子にしていたらペたロボが戻ってきてくれるかもと信じて行動している所で見ている者の心が痛む。最終的には好き嫌い言わず地獄炒飯も泣きながら食べてくれた。(実際には地獄炒飯は好き嫌いを超越した問題ではあるが) もう、ぬるがもう限界というタイミングでデジタル世界でペたロボと再会させの抱擁をさせた。おそらく、ペたロボは何時でも戻せたが、ぬるに試練を与えるためにペたロボを消して、ぬるの行動を見守っていたのだと想像している。ぺた姉も頑張って我慢していた。

ぺた姉は、仮想世界でぬるが何かを成し遂げたら意識不明から戻る、などの因果関係を持って仮想世界を作っていたとは思わない。

ただ、ぬるのぺた姉に会いたい感情がマックスになったと同時に、意識不明のぬるの意識が回復した。その時のぺた姉の嗚咽は、ぬるがペたロボ(ぺた姉)に会いたい気持ちを吐露していた時の気持ちを受けての事では無いかと思う。

リハビリ中のぬるの世話。退院パーティ。変わらぬ姉妹の生活が戻って来た。相変わらず地獄炒飯もある。ぬるも仮想世界から逆戻りしてしまった面もあるだろう。人はそんなに急激には変われない。

しかし、離れ離れに過ごし、お互いに思い合った仮想空間の時間が今までとの差である。小ペたロボという賑やかしキャラも増えた。それは、ぬるのかけがえのないあの時間のご褒美でもある。特にぬるの対人恐怖症は一朝一夕に治るものでもない。これからは、小ペたロボをぺた姉の分身であり、ぬるをフォローしケアする。

CVの上田麗奈さんは、ペたロボの演技は機械らしく淡白に、ぺた姉の演技は人間らしく感情込めて、と使い分けていたような事をインタビュー記事で拝見した。そして、12話の地獄炒飯のシーンでは、ぺた姉なのに、ペたロボ風の機械的な演技をされていた。これは、ペたロボの地獄炒飯の印象が視聴者も強くあり、場面をコミカルにするための演出である。そして、仮想世界中もぺた姉がペたロボを機械らしく演技していた説や、ペたロボの仕草を神の視点で観察していて真似た説があり、そういった事を想像するのも楽しい作品だった。

かきちゃんとバグの謎

6話で登場したかきは、仮想世界で、ぬるの対人恐怖症克服のための非常に重要なキャラであるにも関わらず、現実世界に戻って来ても再登場する事は無かった。

単純に尺の問題かも知れないが、非常に好きなキャラだったので、何か補足があると良かったと思う。

仮想世界は、意識不明のぬるの心と繋がっていたので、かきもまた、ぬると同様に意識不明で病院で眠っていたところ、偶然この仮想世界に迷い込んだのではないか?という説を見かけたが、これは有りそうな設定だと思った。

しかしながら、仮想世界はぺた姉がぬるの作ったものであり、意識不明者と仮想世界を繋ぐインターフェースが不明確であり、簡単に仮想世界にアバターとして迷い込めるものなのか?も良く分からない。

7話で登場するバグだが、6話でかきと別れるシーンで、モブキャラにノイズが入るシーンがあるため、この時点ですでに何らかのバグの影響を受けていたと思われる。この6話というのは、ぬるの心境的な変化という点でも、仮想世界にぬる以外の人間が登場したという点でも、特別な回だった。そうしたイレギュラーな事象とバグ発生の因果関係がありそうな気もするが、この点も情報不足で考察しきれない。

そうした、いくつかの謎めいた事は明かされる事は無いのだろうが、物語の幹が姉妹愛にあり見事に完結させた構成なので、ある程度の明かされない謎は許容してしまっている。もしかしたら、OVAでワンチャン説明があるかも知れない。

おわりに

ギャグ、泣かせの要素をバランスよく取り込み、SF的なフレーバーが程よく効いて、哲学的な部分や世界についての考察まで楽しめる、短尺ながら盛りだくさんの贅沢な作品だったと思います。

ここのところ、ショートアニメという短尺の作品もいろんな試行錯誤がされていて、本作で言えば登場人物は基本二人(一人とロボット一体)という思い切った切り捨てのお陰で、丁寧にドラマを作り込む事ができたのではないかと想像します。これからも、ショートアニメならではの尖った作品が出て来てくれると良いな、と思いました。