たいやき姫のひとり旅

アニメ感想など…

ぬるぺた 1話~5話

ネタバレ全開につき、閲覧ご注意ください。

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はじめに

ぬるぺたは、1本6分弱のショートアニメです。

本作は、天才美少女ぬるが、事故で亡くしたぺた姉をロボットとして復活させるところから始まります。そんな、ぬるとぺたロボのドタバタコメディと、ちょっとだけ泣けるお話。

今のところ最新5話まで視聴したところですが、なかなかの良作です。

その魅力について、より多くの人に知って欲しい気持ちから、ブログを書きます。

現在、Abemaで1話から最新話まで無料視聴可能です。(2019.11.8現在) 未視聴の方は、是非、下記でご覧ください。

考察・感想

ショートアニメというフォーマット

本作の長さは、1本6分弱。何故か話数によって異なる。OPは60秒で、EDは無く、本編は5分弱。

話数 タイトル 長さ
第1話 お姉ちゃん完成! 5分25秒
第2話 お姉ちゃんの完全栄養食! 5分22秒
第3話 お姉ちゃん学校行かなきゃダメ? 5分56秒
第4話 お姉ちゃん宇宙行かなきゃダメ? 5分21秒
第5話 お姉ちゃんイズデッド!? 5分50秒

従来のショートアニメは、各話連結させず1話完結で、ナンセンスなギャグで笑わせる、というパターンが多かったと思う。(個人の感想です)

しかし、本作は、1話から5話まで、途中で抜く事の出来ないようなプロットをキッチリ組んでいて、ストーリー構成がしっかりしている。だから、最初はただのハチャメチャに感じていたものが、次第にその奥にある設定に気付いてゆく。そうした、深みを楽しめる作品だと思う。

ショートアニメは尺の短さゆえに、テンポが速すぎてインパクト強い映像になりがち。本作も、1話、2話はそうしたワチャワチャした雰囲気であったが、3話、5話は泣きのドラマを丁寧に描いてきた。もしかしたら、3話、5話の尺が若干長いのも、そのせいかも知れない。

この手応えを感じているので、全12話を使ってぬるの心情に迫る、ドラマチックな物語が来ることを直感している。

ハチャメチャなギャグと、泣きのドラマのバランス

本作の基本はギャグだが、たまに泣けるドラマの展開を見せる。この姉妹愛のドラマがなかなか良い。この辺りのドラマについては、後述のキャラクターの考察で詳しく記載する。

ギャグは、小さな事からエスカレートしていくタイプだったり、見るからに毒々しい炒飯を食べさせられそうになったり、少し懐かしさ覚える昭和テイスト。

このギャグ展開の本質も、妹思いの姉の行動と、それを嫌がる妹の行動のシンプルだ動機である。

本作は、基本的にぬるとぺたロボの二人だけしか登場人物が居ない、二人芝居である。もっと言えば、ペたロボは機械なので、一人芝居である。だからこそ、ショートアニメなのに姉妹のドラマに集中できるのだと思う。

ギャグとドラマの、一粒で二度美味しい作品。

少し懐かしめのキャラとメカのデザインと、外連味ある動きの作画

ぬるとぺた姉は美少女キャラである。いわゆる「萌え」だが、最近、萌え萌えしい美少女キャラが少なくなってきているような気もするので、若干の懐かしみも感じる。

ぬるは、天才発明家で色んなものを作り出すが、その作品であるぺたロボや、2話で登場する四足歩行メカなどのテイストは昭和の懐かしさ。

作画はなかなか綺麗で、動きはいい感じでコマ数を落として小気味よい感じで、ギャグテイストに合っている。ぬるぬる動かないのが逆に良い。ちなみに、パンツ見せはありません。その辺りは、流石、シンエイ動画、という感じ。

キャラクター

ぬる

ぬるは、天才的な頭脳を持つ美少女小学生。一人暮らしで不登校。食事はウィダーインゼリー。そして、倉庫で何やら怪しい発明品を作っている。つまり、生活力に著しく乏しい。

ぬるは家族も、友達も居ない、独りぼっちの存在。だから、ぬるは、事故死したぺた姉を、下記の材料でロボットとして再生しようとした。

  • くせ毛を1本。お姉ちゃんは奇麗な髪
  • チューベローズを7輪。お姉ちゃんはいい匂い
  • ぬいぐるみを1個。お姉ちゃんは柔らかい肌
  • その他諸々(写真、設計図、お菓子、鉛筆、消しゴム…)

そしてぺたロボが生まれた。

ペたロボの機能は、ぬるが設計したものであるが、ぺた姉の特徴(綺麗な髪、いい匂い、柔らかい)は、ぬるが好きで似ていると思ったものを使って再現しているのだと思われる。

ぬるは、ぺたロボの容姿が想定外であったたこと、想定外の機能(ドリルなど)を持っていた事から、失敗作だったと思ったフシがある。

しかし、その性格は、お節介で、世話焼きで、料理下手で、ぺた姉そのものであった。以下、各話のぺたロボのお節介を列挙する。

  • 1話で、学校に送り届けるため飛行形態で飛ぶ
  • 2話で、毒タケノコ炒飯を食べさせる
  • 3話で、お風呂に一緒に入って楽しく会話する
  • 4話で、学校に行かせるためランドセルロケットを仕込む、忘れ物のブルマを宇宙まで届ける

ペたロボは基本的に、ぬるのためを思ってする事に対し、ぬるが嫌がり、それでドタバタコメディを繰り広げてしまう。

ぬるが学校に行かない理由は3話で判明する。ぬるが天才過ぎる故に、高度な理系の話を楽しくしたいのに、周囲がぬるの事を変人のような目で見てしまい、誰も友達になってくれなかったから。ぬるは、食事やお風呂は譲れても、学校に行かない事だけは譲れない。

しかし、ぺたロボは、そこで無理強いするのではなく、ぬるの好きな理系の話で聞いて、ぬるの話し相手になる。その夜、寝る時に、お伽話の様に、理系の本を読み聞かせる。

ぺたロボは、ぬるの孤独を知り、ぬるの孤独を埋めた。この時のぬるの笑顔が忘れられない。ぬるは、この幸せを手に入れるために、ペたロボを作ったのだろう。

泣きのドラマが入るのは、5話のペたロボのバッテリー切れの話である。

宇宙ステーションの電源からペたロボを充電して再起動する事は可能だったが、それまで稼働した記憶(データ)をバックアップできる環境が宇宙ステーションに無いために、ペたロボのデータが消失する、という問題が発生した。

つまり、ぬるがペたロボのコンセントを繋ぐ事で、1話から4話まで一緒に暮らしたペたロボ(ペた姉)の記憶が消える。そして、何なら、ついでに、ぬるが嫌がる事をしないように、鬱陶しくない様に、ペたロボのプログラムを修正して、無意味なドタバタコメディをしなくて済むようにすればいい、という気持ちも生じる。でも、それをしてしまうと、口うるさくて優しいペた姉では無くなってしまう。

この部分、混乱しがちなので、自分なりにぬるの選択肢を整理してみたが、間違っているかもしれない。

  • (a) ぺたロボを宇宙で充電する?
    • (a-1) Yes, →〇地球に帰れる、×ペたロボのデータ(1話からの記憶)が消える
    • (a-2) No, →×地球に帰れない、〇ペたロボのデータが残る
  • (b) ペたロボのプログラムを(鬱陶しくないように)修正するか?

私は、(a-1)(b-2)の選択肢もあったと思うのだが、劇中は、(a-1)(b-1)と(a-2)(b-2)の二択になっていたように思う。充電する=ぺた姉のアイデンティティ消失のイメージで。とりあえず、その前提で話を進める。

あの日、ぬるは、体育の授業が嫌でわざとブルマを忘れたのに、ぺた姉は、空気を読まずに登校途中のぬるにブルマを届ける。周囲の生徒たちは笑ってて、ぬるは大恥をかいて泣く。だけど、うざいところも含めて、ぺた姉の存在が好きだったのだと。

ペたロボは只の機械である。しかし、ぬるは一度ぺた姉を失っているから、もう二度とペた姉を失いたくない。その気持ちから、ぬるはペたロボの充電を泣きながらためらったのだと想像している。

結果的に、ぺたロボは衝撃で充電せずに再稼働し、今まで通りのペたロボと家に帰った。

本作の肝は、ぬるの孤独と、亡きぺた姉への愛である、と思う。

ここからは妄想。

ぬるの両親が居ない理由は分からない。ペた姉が生きていた時に、あれだけぬるの世話を焼いていたのであれば、以前は、ペた姉との二人暮らしだったのだろう。もとより、ぬるに友達は居ない。3話の雰囲気では、ぺた姉だけがコミュニケーションが取れる相手だったのだろう。唯一の話し相手を失って、本当に独りぼっちになってしまった。天涯孤独。それでも、途方に暮れることなく、趣味の発明に明け暮れた。

ぺた姉に逢いたい気持ちから、ぺたロボを作った。そして、5話で、うざいの込みでペた姉の優しさが好きだった事を再認識した。科学では説明できない、ぺたロボに宿るぺた姉の心を大切だと思った。時に拒絶しながらも、本質ではぺた姉を欲した。その裏腹な気持ちが、ぬるのドラマなのだと思う。

しかし、ぺたロボは機械であり、本当のぺた姉はもうこの世に居ない。現状のぬるとぺたロボの関係は偽りの関係であり、いつまでも続けられない、とも言える。すなわち、ぬるはぺた姉(ぺたロボ)依存から脱却しなければならない。そのためにも、ぺたロボ以外にコミュニケーションが取れる友だちや仲間を作る必要があり、1話から繰り返しネタとして使われている、学校に行く必要がある。これが出来てこそ、ペた姉(ぺたロボ)は成仏できる。

私は、物語のクライマックスは、ここに向かっていると予想している。

実際には、ギャグ作品らしく、なんだかんだで学校にも行って友だちもできて、ぺたロボとも末永く暮らすのかも知れない。まだ小学生なのだから、普通に甘えさせてやればいいじゃない、とも反面思う。

本作は、物語はカチッと作っている印象なので、どうやって終わるか、今から楽しみ。

ぺた姉とぺたロボ

5話で、ぺた姉がぬるの忘れ物のブルマを手渡しで届けたシーンがあった。周りの登校中の生徒は笑っていたが、そんな事はおかまいなしに、ぬるのために行動する。その行動がぬるにしてみたらお節介だったとしても、気にしない。ぬるの事しか見えておらず、過保護だと言ってもいい。

それくらい、ぺた姉はぬるの事を溺愛していた。

ぺた姉は事故死との事だが、その詳細は不明である。これほどまでに、ぬるの事を溺愛しているのであれば、事故の原因がぬるを助けるためだったとしても驚かないし、どこかでその事に触れるのかも知れない。

3話では、ぺたロボが、ぬると対等に高度な理系話をしていたが、ぬるの違和感なく会話していた様子から察するに、生前のぺた姉も、ぬる同様に天才だったのだと想像している。天才姉妹。

ただ、料理は安定してド下手。

でも、ロケットランドセルや、2話の目覚まし後、自動で身支度してしまう機械は、ぺたロボが作ったとも考えられるので、器用なのか、不器用なのか、よくわからない。

公式HPのブログ

ちなみに、本作のインタビュー記事や、設定資料が、ブログに掲載されている。

尺が短く、説明が少ない本編だが、この辺りで情報を摂取できるの。インタビュー記事を読むと、「ドタバタコメディなのに泣かせる展開も!?」などとなっていてスタッフのディレクションが伺えるなど、短いながらなかなか面白いので、是非ご覧いただきたい。

おわりに

私は、昔はショートアニメは好まなかったのですが、最近は、ショートアニメもストーリー仕立てにしていたり、短さゆえの高密度感が癖になる作品があったりで、なかなか奥が深いと思うようになりました。

しかも、ショートアニメは注目されていない事が多いので、埋もれし名作に光を与えるべく、今回のブログを書きました。

本作は、ぬるが明るくて可愛い点が気に入っていますが、同時にぬるが天涯孤独である事がドラマの肝になっています。その笑いと泣きのバランスが良いのが本作の美点に思います。

本作は、まだまだ何かネタがありそうなので、全12話最後まで、楽しみです。