たいやき姫のひとり旅

アニメ感想など…

2023年春期アニメ感想総括

はじめに

いつもの、2023年春期のアニメ感想総括です。今期の視聴は下記の6本。

  • 【推しの子】
  • スキップとローファー
  • 私の百合はお仕事です!
  • この素晴らしき世界に爆焔を!
  • 山田くんとLv999の恋をする
  • ウマ娘 プリティーダービー ROAD TO THE TOP

最近は、チェックしやすいのはネトフリ配信されているもので、この中でも4作品がネトフリ視聴でした。そのせいか、未視聴の話題作も結構あるなぁ、とは思っています。

ところでネトフリでも「僕とロボコ」の1話から16話まで配信されており、視聴したらメチャ面白かったです。ネタが繋がっているのでブツ切りで観るより配信のように一気にみた方が楽しい。TVシリーズは放送終了しているので、残りもその内に配信に来ると思います。「僕とロボコ」はまたその時に書こうと思います。

感想・考察

【推しの子】

  • rating
    • ★★★★★
  • pros
  • cons
    • 特になし

原作赤坂アカ先生、作画横槍メンゴ先生による原作漫画をアニメ化。製作は動画工房、監督は平牧大輔とくれば、「私に天使が舞い降りた!」「恋する小惑星」の拘り過ぎな職人気質とも言える作品を世に出してきた。シリーズ構成・全話脚本はエモさに定評のある田中仁。キャラクターデザインは平山寛菜と隙のない強力な布陣である。

1期の構成をザックリ整理すると下記の4パートになる。それぞれが、原作漫画1巻分となる。

概要 ポイント 備考
1話 プロローグ「幼年期」 星野アイの転生双子出産
星野アイ死亡
90分枠
劇場で先行公開
2話~4話 第2章「芸能界」 新星B小町にルビーとかな
5話~7話 第3章「恋愛リアリティショー編」 あかねのアイ憑依演技
8話~11話 第4章「ファーストステージ編」 新星B小町にMEMちょ
新星B小町デビュー  

本作を語るにあたり、まず、本作の看板とも言える星野アイについて触れておきたい。

16歳で未婚の母として双子を出産し、20歳で自宅で変質者に刺殺されて生涯を終えた星野アイ。身寄りがなく愛された事のないアイが、嘘の愛をファンに注ぐことで、いつか本当の愛を手に入れるという希望を求めていた。アイドルとしてのカリスマ的な人気をさらに神格化してゆくアイであったが、その作り物の笑顔を指摘され凹むこともあった。しかし、わが子のアクアとルビーに対する笑顔が自然な笑顔なのだとの気付きがあり、その光と闇の両端を「愛」で繋いで嘘を本当にしてゆく。それほどまでして、アイドルとしての生き方と、人間としての幸せの両方を強欲に求めた。芸能界には光と闇があるが、ここで描かれているアイには闇がなく聖母のような清らかさだけを感じさせる。そこに闇があったか否かの真実は本人が墓場に持って行ってしまった。

YOASHOBIのOP曲「アイドル」は1話の星野アイをテーマにしたものだが、アイドル曲としての明るさと、神秘的な恐ろしさを併せ持つ多面性のある楽曲で、星野アイというキャラの複雑さを良く表現していた。それはキャラデザインにも言える事で、両目に大きく描かれる巨大な星マークの輝きが、ただならぬカリスマ性を表現する。紫色を基調としたビジュアルも徹底している。紫色というと私はそこはかとなく狂気を連想するのだが、ネットで紫色を調べたところ、気品、ロマンス、神秘、神聖、エキゾチックとどれも星野アイを連想させるものである。SNSでも、星野アイのファンアートもこの瞳の巨大な星マークと紫色を踏襲して拡散されてゆく。兎にも角にも星野アイは本作の象徴的存在となる。

2話以降は、双子の長男アクアが星野アイ殺害事件の復讐のために父親を探すという、ミステリー小説的なテイストの物語が縦軸となる。並行して、双子の長女ルビーが憧れのアイドルを目指して新星B小町で活躍してゆく奮闘劇も描かれる。そして3話毎に漫画原作1巻分で完結する芸能界の光と影をテーマにしたサスペンスドラマ形式の物語が横軸として紡がれてゆく。

さて、アニメーション的な感想についてだが、緻密で描き込まれた作画の強さ、ハッタリの効いた演出とレイアウトの強さが印象的であり、流石は動画工房という感じのリッチな映像である。作画カロリーの高いアイドルのステージシーンもあるが、他のアイドルアニメと比べても見劣りするところもない。

「転生」を設定に取り込んだり、エピローグの原作1巻分を1話90分で構成するなど、目新しい要素が多い。また、推理小説的な謎解きをベースとしているから、妙に細かな数字や芸能界のうんちくをネタとして差し込んできて、ルポルタージュを思わせる情報が巧みに開示されてゆく。そのうえ、各キャラの感情を激しく描くドラマが強い。毎回「ドヤッ!」と決めてくる演出力の高めのシーンにED曲を重ねてくる「引き」の強さもある。視聴者はアクアの正義感に寄り添いながら、不遇な扱いを受けるストレスフルなヒロインを救済する物語に、古の「火曜サスペンス劇場」を見ているような感覚になる。私も食事中に視聴して、画面に釘付けになり、すっかり箸が止まってしまっていた事が何度もあった。こうした作風のTVアニメは今まで在りそうで無かったと思う。

逆に、本作には日常エッセイのような繊細で慈悲深い味わいは苦手だとか、各章はアクア探偵がストレスフルなヒロインを救済する勧善懲悪的な物語のテンプレになりやすいとか、縦軸となるアクアの父親捜しの物語の進捗が牛歩だとか、視聴者の好みが分かれてしまう要素も無くはない。

しかしながら、その原作漫画の面白さを損なうことなくTVアニメ化する事は前人未到の挑戦であり、このビッグバジェット感あるタイトルを期待以上に仕上げてきたことについて、アニメスタッフには感謝と脱帽しかない。

スキップとローファー

  • rating
    • ★★★★★
  • pros
    • 軽快なルックと緻密なドラマが心地よい青春群像劇
    • 美津未ちゃん可愛い
  • cons
    • 特になし

カジュアルで軽快なルックが印象的でありながら、重すぎず軽すぎない絶妙なドラマが心に沁みる、心地よさのある青春群像劇。

原作は月刊アフタヌーンにて好評連載中の高松美咲先生のマンガ。制作はP.A.WORKS。監督とシリーズ構成は出合小都美で「夏目友人帳」「ローリング☆ガールズ」で監督を務めていた。脚本は米内山陽子、篠塚智子、日高勝郎の3名体制。米内山は「パリピ孔明」などでP.A.WORKSとの仕事の繋がりがある。

本作のポイントは2点あると考えている。1つは、美津未のある種の破天荒さがもたらす痛快な友情ドラマ。もう1つは、美津未の初恋の初々しい恋愛ドラマ。

美津未は石川県能登半島の突端のド田舎から東京に転校してきた女子高生。見た目はモブっぽくて主人公らしくない、という第一印象から入る事になる。田舎育ちで、温かい家庭環境と友達に恵まれ、心は健全。頭脳は明晰で将来の夢は政治家。超一流のT大合格を目指して高校から東京の進学校に入学。入学式当日に迷子になり遅刻、答辞を読んだ後でゲロるという最悪の第一印象からのスタート。ここまで来て、これはドカベンのいわきだと思った。いわゆる破天荒な大物タイプで、女性版いわきとでも言うか。しかし、これは半分当たっていたが、半分はいい意味で裏切られる。

美津未の級友たちは東京育ちで人間関係に疲れて擦れている。しかし、人口少ない田舎育ちの美津未は人間の悪意にまったく気付かない。鈍感と言ってもいい。結果的に極度のお人好しになっている。だから、ミカの下心や裏のある行動も気にならない。人の悪い所は見えず、人の良い所だけを記憶する。男友達の志摩でさえ、こんな純真な娘だと、これからの人生付け込まれて辛くならないかと余計な心配をしてしまう。しかし、美津未と付き合いを続けてゆくと、美津未の行動がキッカケとなって、喉に刺さった魚の骨が取れたみたいにスッキリとして気持ちが軽くなる。結月と誠は美女とダサ女のお互いのコンプレックスは解消するし、ミカはネガばかり見ていて気にしている自分の小者さに気付いてしまう。

ここで大切なのは美津未は、誰の欠点も否定せず美点だけを肯定し、周囲の人間は自分のダメなところに気付いて勝手に反省して人生を前向きに改善してゆく点にある。つまり、美津未は説教せずに他人を変える。多くの視聴者はリアルな生活で説教されていると思うので、エンタメ内での説教はもうゴメン、という気持ちなのかもしれない。この否定しないけど前向きに周囲の人が改善されてゆく作風が気持ちいい。美津未がいわきと違ったのは、図々しさや迷惑さはなく、周囲に気を使える健気な女子であったところである。

級友の中でもラスボス的な存在だったのは男友達の志摩だったと思う。子役時代から他人の期待に器用に応えつつ、芸能界のスキャンダルに巻き込まれて誹謗中傷もされ、心がボロボロに傷ついてしまったからこそ、他人とは深く関わらず表層だけの付き合いで流してきた。他者に傷つけられないように近づかず距離を取る、これは自衛手段である。そんな中で美津未だけは、下心のない真っすぐな気持ちで志摩の心に浸透してくる。無遠慮という訳でもなく、邪心のない素朴さで。はじめは面白いと思っていただけだったが、志摩はふと気付いてしまう。負債だけを背負って後ろ向きに生きるだけが人生ではない。他人を肯定し、後ろを向かずに前進し、楽しい希望を見続ける人生を美津未は実践しているのだと。12話文化祭で義弟との遠慮しがちだった距離を縮め、兼近先輩の芝居に嫉妬(≒向上心)を自覚し、過去に閉じ込められずに未来を歩みたいと梨々花に直談判し、痛くても辛くても前進して喜びたいと願った。いつもは美津未が言う「また明日」を、志摩から言えたことが、彼の前進する未来を暗示しつつ1クールの物語を〆る。上出来である。

もう1つの恋愛ドラマだが、これは美津未と志摩の6話の階段のやりとりのエモさに尽きる。イイ感じに友達関係にあった美津未と志摩だが、志摩のずる休みの話題で気まずい雰囲気になる。翌日放課後には仲直りする。美津未が導いた本心は「志摩君が居ないとつまんないから登校して」であり、ここでも否定ではなく肯定で返す。これを受けて志摩は恥ずかしさで走り去ろうとする美津未を引き留め、志摩の本心の「美津未は噂話を聞かないで(=ネガに染まらないで)」を返す。和解により緊張の糸がほぐれ急に大笑いする志摩にキュンとなって赤面し下校する美津未。急に恋愛を意識してしまう美津未が可愛い。私はこの志摩が美津未を引き留めるシーンが好きで、人に干渉したくないはずの志摩が、美津未への愛しさが爆発しての反射的な引き留めであり、女子を抱きしめたい男心を感じさせる良き演出だったと思う。

もう1つ大好きなのは、10話の体育館横で志摩と美津未が演劇のダンスを踊るシーン。美津未は浅野との宿題をすっぽかしてし空回りしていたところを志摩が気を利かせて気分転換させる。美津未も志摩の大人な対応を察して、志摩の前で泣いてしまう。美津未は演劇の脚本についても悲劇と決めつけずポジティブな結末の可能性残したものと捉えていた。その打たれ強さ立ち直りの速さに志摩も一目を置いてしまう。これは12話の志摩の変化に繋がる重要なポイントであると思う。その後に二人のダンスのシーンになるのだが美津未の赤面っぷりが相変わらず可愛い。

本作は美津未が無自覚に他人を改善してゆくだけでなく、美津未自身も気を使って悩みながら青春を謳歌していくことで、美津未を好きになれる構造になっている。

最後にアニメーションとしての総括だが、本作の脚本と演出は非常に密度が高くテンポが良い。心情の変化をマンガ的な1カットで確実に繋ぎ、台詞もワザとらしくなく日常感に溢れている。その精密さが本作の真骨頂であろう。それには、キャラの作画、背景、色彩設計、レイアウトなどの絵作りの気持ち良さが相当効いていると思う。ストレスなく見られる気楽さとエモい感動を両立していて、幅広い視聴層におススメできる作品となっている。

この素晴らしき世界に爆焔を!

  • rating
    • ★★★★☆
  • pros
    • めぐみんとゆんゆんが大人の世界に一歩踏み出すまでの、おバカで緩めの青春コメディ
  • cons
    • アニメーションとしては非リッチであり、ギャグやテンポの切れ味や、作画などのクオリティはもう一声欲しい

この素晴らしい世界に祝福を!」のスピンオフ。今回の主役は紅魔族のめぐみんとゆんゆん。めぐみんがカズマ達とパーティを組むまでの前日譚となっている。

ちなみに、私は今まで「このすば」は未履修であり、本シリーズに触れるのは本作がはじめてとなる。それゆえに、感想に過去作との比較やバイアスは含まれない点をご承知おきいただきたい。

作画、絵コンテのテンポ感、演出の盛り上げなどなど、本作はアニメーションとしてはリッチとは言えないと思う。勿論リッチな方が視聴者としては有難いが、敢えて映像表現のコストを押さえて、原作小説の持ち味である会話劇を中心に魅せてゆくというディレクションと考えれば、これはこれでありだろう。

物語としては、めぐみんが紅魔の里で魔法学園で同級生と過ごし、里を離れて半人前の魔法使いとして働き出し、カズマ達のパーティに入るまでの前期譚となっている。この流れの中で親友であるゆんゆんとの緩めのコメディとドラマが持ち味である。

本作を一言で表現するのは難しい。

めぐみんが爆裂魔法だけに固執して他の魔法を覚えない理由は、幼少期に目撃した爆裂魔法の圧倒的なパワーに魅せられ強い憧れを抱いたから。そして、めぐみんの家は家族愛には恵まれつつも貧乏で、両親は仕事で不在がち。家では可愛い妹の面倒をみながら慎ましく暮らす。魔法学校でのめぐみんは、成績は優秀ながら少々中二病的な変人の側面を見せつつ、学級内にも馴染みながら、自分のスタイルにブレずに生きてきた。

そんなめぐみんに対し、相方となるゆんゆんがいい味出していた。ひねくれ過ぎるめぐみんに対し、お人好しすぎる真面目な優等生のゆんゆん。腐れ縁の幼馴染であり、口を開けばどうでもいい事で口論になるが、お互いに心の底では相手を気遣い心配する。二人の口喧嘩は子供のじゃれ合いのようなモノなのだが、子供だからこそ許容される。

繰り返しになるが、めぐみんというキャラはひねくれていて、極端な行動にでる突飛なタイプゆえ、感情移入しにくいところがある。爆裂魔法一択という極端さ、冒険(=爆裂魔法の魔法使いの人)への憧れの強さ、そこを理解しないとめぐみんには共感しにくい。周囲の大人たちも極端な馬鹿が多いため、相対的にめぐみんなりのロジカルさも垣間見せてるのだが、いつも詰めが甘くてそこもギャグになる。

ゆんゆんは、めぐみんに常識的な立場でツッコミを入れる相方役であるため、一般的な視聴者はゆんゆんに感情移入しやすい。しかし、ゆんゆん自体もまだ子供で甘々なので、めぐみんから見ても放っておけない存在として描かれる。二人は半人前で互いの拙さを庇い合う関係にあると言えるだろう。

私は、紅魔の里の魔法学校=高校生活、クエストをこなして報酬を得る=社会人生活という感覚で捉えていた。だから、これはめぐみんとゆんゆんの高校時代と、卒業後に本格的にギルドに就職するまでのアルバイター的な半社会人生活を、馬鹿やって過ごした青春モノとして捉えている。二人で、幼馴染の馴れ合いで依存してきた人生に、一旦区切りをつけてそれぞれの道に一歩を踏み出す。それは、少しの戻れない郷愁と、大きな未来への希望(≒野望)という成長を描いていたと感じた。このザワザワする思春期の不安定感を描けていたことが、本作の文芸面の味わいになっていると思う。

ちなみに、こうは書いたが、カズマ達のギルドに入ったときのめぐみんは13歳との事。JK卒業しているくらいの感覚だったのだが、現役JCの年齢という事で、想像以上に若かった。ただし、現代日本社会とは異なるファンタジー社会なので、この辺は設定次第であろう。

総じて、本作を好きになれるか否かは、めぐみん、ゆんゆんというキャラが好きになれるかにかかっていると思う。私は、この二人の緩くて甘々な関係が好きだし、ゆんゆんの優しくもポンコツな所に惚れていた。最終回ではちょっとした寂しさを覚えつつも、独特の味わいを楽しめた作品であった。

私の百合はお仕事です!

  • rating
    • ★★★☆☆
  • pros
    • 複雑にからむ女女感情の百合ドラマを、各キャラにフォーカスしながら紐解いてゆく、シリアス多めの作風。
    • キャラに絶妙にマッチしているキャスト陣の声と芝居
  • cons
    • 物語の流れに合わせた女女感情をロジカルに整理するだけに終わってしまった感があり、エモさ、爆発力不足に感じた文芸。

舞台は架空の百合百合しい女学園をテーマにしたイメージ喫茶店。制服姿の女学院の生徒たちがホールで給仕をするが、百合姉妹などの設定もあり小芝居込みの接客で喫茶店の客をもてなす。もちろん、実際には普通の高校に通うJKアルバイトなので、キッチンでは素のJK、ホールでの接客中はリーベ女学院の生徒を役として演じているというのがポイントである。

また、主人公の陽芽は「外面」という人当たりの良いキャラを日常的に演じ続けているという設定があり、舞台設定と共に「本音」と「建て前」の二面性の中でのすれ違いが本作の醍醐味である。それゆえ、4人の主要人物の女女感情が複雑で分かりにくいため、人間相関図にポイントを整理しつつ、各キャラについて深掘りしてまとめる。

陽芽は小柄で金髪ロングが特徴。愛想のいい「外面」(=嘘)の天才であるが、その本質は臆病者で他人から攻撃されたくないという自衛の心理が働いている。反面、周囲から孤立してしまった者を庇いつつ、心を開く優しさも持ち合わせる。これまで外面を外して本音を話したのは、小学生の時の美月、中学生のときの果乃子の二人だけ。この二人は外面を外して本音で付き合える親友と呼べる関係だった。結果的に、この二人から重めの愛情を受ける事になるのだが、陽芽自身は友情としか思っていないので愛情に気付く事も愛情を返すこともない。それが本作の物語のすべての駆動力になっている。

美月は高身長の黒髪ロングと巨乳が特徴。姉役として陽芽とシュヴェスターを組む。美月は本質的に頑固で周囲と衝突しがちである。小学生の時にそれでクラスで孤立していたところ、陽芽が心を開いて親友となった。しかし、ある日、陽芽が自分に嘘をついていたと勘違いして、陽芽が嘘つきと言いふらして絶交した。美月は天性のツンで攻撃力が高い。そして、リーベ女学園の新人アルバイトが陽芽である事にいち早く気付き、鈍感で無神経な陽芽に辛く当たる。結局6話で、小学生の時の事件は誤解である事を理解し、陽芽と和解して、再びシュヴェスターとして再出発する。もともと陽芽への大好きが突き抜けて反転し大嫌いになった形なのでデレツンと言える状況だったのだが、ここに来てやっとツンデレとなった。この6話は、唯一捻じれが解消されるカタルシスある回であり、本作の中では秀逸なエピソードだったと思う。

果乃子は大人しそうな青髪の眼鏡女子。思った事を他人に言えずに飲み込んでしまう弱気な性格であり、そのせいで頼まれごとを断れない。中学生のとき、そんな果乃子を見て不憫に思った陽芽が親友になってくれた。陽芽の外面は二人だけの秘密である。唯一の親友であり理解者であるという気持ちが、果乃子の陽芽への愛情を膨らませてゆく。しかし、ヤンデレになって恋愛の告白をしてしまえば、ドン引きされ、現状の尊い関係が壊れてしまうというリスクは理解している。果乃子が他人に意見を言えないのは、今に始まった事ではない。むしろ、この状態が永久に続けばいいと考えていた。陽芽と同じ高校に進学し、陽芽を追いかける形でリーベ女学園のアルバイトに入る。そこで陽芽と美月の仲直りにより、陽芽の唯一の親友というポジションが危ぶまれ心がチクチク痛む。その上、果乃子→陽芽の恋心について純加が妙にからんでくる。あまりのしつこさに泣きながら陽芽の外面の秘密を純加に漏らしてしまい、陽芽に対する恋心と現状維持が望みであり、邪魔しないでと頼む。純加が秘密を知ってしまったことから共犯者的な関係となり、最終的には純加とシュヴェスターを組む。

純加はサロンでは眼鏡をかけてインテリ風に見えるが普段はヤンキー。過去にシュヴェスターの妹が他のサロン係にガチ百合で寝取られサロンが崩壊したという事件があり、サロンに恋愛を持ち込む事に批判的である。別の言い方をするなら、恋愛に疎く、恋愛に溺れ狂ってしまう人には共感できない。果乃子→陽芽の恋愛に気付き、果乃子にサロン内での恋愛を辞めさせようとするが、本人は片想いで見ているだけだから放っておいてと拒絶される。この時点で議論がかみ合っていないのだが、そうこうしているうちに、果乃子の恋愛の必死さ息苦しさに同情し、彼女を苦しみから救いたいと考えるようになる。最終的には、果乃子とシュヴェスターと組むが、果乃子としてはあくまで利害一致という打算的な関係であり、純加への好きは存在しないところに切なさがある。

以上が各キャラのドラマのポイントだが、原作漫画は連載中であり、物語はまだ続いているため、更なる変化があるのであろう。1クール12話の中では、前半を陽芽⇔美月、後半を果乃子⇔純加で推理小説的に各キャラの心情を紐解いていく形式で構成されており見応えがあった。全体的にトーンは重めな作風だが、12話だけはコメディー回となっており、本作の本来のコメディ色を強調したお口直し回となっていた。

と、ここまで書いてやっと感想に入る。本作は物語の流れにのせるためのキャラクターの性格やすれ違いのロジックが凝っているのは理解するが、そのせいでキャラのエモさや分かりやすさが損なわれていて爆発力に欠ける印象を持った。言い方を変えるとロジック好きな私でさえも、ロジックを追うだけで手一杯となり観ていて疲れてしまう。これは、脚本と演出の両方の問題だと思う。原作漫画は未読だが、おそらくもう少しコメディ色が強くて楽しさのある漫画なのではないかと想像する。

キャストはベテランから中堅まで手堅く揃えており、各キャラとも声の相性は抜群に良い。とくに主人公の陽芽役の毒づいた本音シーンなどは、絵柄のギャップ同様にコミカルで、小倉唯さんの快演が光る。

作画面、演出面は尖ったところはなく、平均点レベルという感じ。キャラクターデザインは原作漫画のコミカルで勢いのある絵柄を上手く落とし込んでいると思う。

本作の肝となる文芸面は、6話のみが陽芽⇔美月のすれ違いの解消のカタルシスがあるものの、全編を通してすれ違いの息苦しさが溢れていて爽快感はない。百合的な深みがあったかと言えば、最低限のロジカルさを担保するのに精いっぱいで、エモさは余り感じされず期待外れだった、というのが正直なところである。

山田くんとLv999の恋をする

  • rating
    • ★★★☆☆
  • pros
    • 女性視点のふわふわ感ある王道のゆったりしたラブストーリー
    • コミカルなデフォルメと、心情描写多めのシリアスなシーンの緩急のメリハリ
  • cons
    • 好みの問題でしかないが、私には多少甘すぎたかも。

制作はマッドハウス、監督は浅香守生とくれば「カードキャプターさくら」「ちょびっツ」がすぐに思い浮かぶが、2015年には「俺物語!!」もあり、切ないラブストーリーに強い監督というイメージであり、本作で手腕を振るっている。シリーズ構成・全話脚本は中西やすひろが押さえる。

物語は、最近失恋した美人女子大生の茜と不愛想なイケメン高校生の山田が、ネットゲームとリアルでの交流しつつ、互いに意識し合いながらも奥手(?)ゆえに進展しないラブストーリー寄りのラブコメという感じである。

映像面では、リアルワールドの美男美女の描写と、時折見せるデフォルメキャラやバックで花がくるくる回るコミカルさのギャップが楽しい。しかし、恋愛描写寄りのシリアスなシーンになってくると映像的にもキラキラしたイメージで描かれ、レイアウトや台詞の間も大胆に変えて少女漫画的な演出をアニメに大きく取り込んでいる。昨今は詰め詰めのアニメが多いので、こうしたゆったりしたディレクションもたまには良いなと思わせる。

茜の方は男に尽くしがちなイメージだが、妙に隙が多くて大丈夫かと思う反面、親しくなったら徹底的に優しい。個人的にはダメ女と言うほどでもない美女だから茜は普通にモテるだろうとしか思えなかった。

山田の方は恋愛感情が分らず、恋愛で寄ってきた女子の気持ちを返せずに悲しませてきた経緯があり、周囲も諦めている。この山田がいかに茜に惚れてカップルになるか?というのがポイントになる。

途中でルリ姫と山田の恋人関係疑惑や、山田のクラスメイトの橘が登場して山田に振られるのイベントはあるが、中盤で視聴者には相思相愛を確信させており、自分から告白できない茜の恋愛心情のフワフワ感を楽しむ作風なのかと感じた。

総じて、王道のラブストーリーを女性視点でふわふわ見せる事に注力した作風であり、浅香守生監督のディレクションは適切に効いてたと思う。物語に意外性は少ないが、茜役の水瀬いのりはハマり役だったと思う。

好みが分かれる題材だとは思うが、私はヤキモキしながらも、このタイミングで橘攻めてくるかー、などと言いつつ緩く楽しんだ。

ウマ娘 プリティーダービー ROAD TO THE TOP

  • rating
    • ★★★★☆
  • pros
    • 臨場感たっぷりで迫力満点で盛り上がるレースシン
    • 全4話というコンパクトさゆえの、明確なテーマとスッキリしたストーリー構成
  • cons
    • 特になし

今となってはCygamesの大人気ソシャゲであるウマ娘のアニメで、全4話構成でYouTube配信された点が新しい。制作はCygamesPicture、監督は廖程芝、シリーズ構成・シリーズディレクターは小針哲也。なお、制作スタジオKAI、監督及川啓ウマ娘のTVアニメとは別系統で制作されている。

ちなみに、私はTVアニメのウマ娘1期2期は未視聴であり、これが初ウマ娘である。

本作では三強と呼ばれた、トプロ(ナリタトップロード)、アヤベ(アドマイヤベガ)、オペラー(テイエムオペラオー)の1999年クラッシック三冠レースにかける熱い戦いの物語である。それぞれのウマ娘が勝利の喜びのために、自らを削り、ライバルと共にレースを戦う。

本作の見どころは何と言ってもレースシーンであろう。TVアニメ1期から培ってきたレース演出と作画に磨きがかかる。作画は綺麗で勢いがある。演出は出走前の緊張感から、序盤の各馬状況解説を経て、クライマックスの盛り上がりを実況と共に臨場感たっぷりに伝えてくる。レース終盤では鬼の形相での疾走シーンとなるが、美少女(ウマ娘)にここまで必死な顔をさせるのは思い切りがいい。レース毎にレース作画のテイストも若干異なるのだが、トプロのドラマに合わせたテイストになっている、と感じた。文芸もクラッシック三冠を全4話でコンパクトな事もあり、よりレースというテーマの根源に近づけたドラマになっている。

なお、全4話の構成とレース結果は下記の通りである。

  • 1話:皐月賞 →1位オペラオー、2位トプロ、6位アヤベ
  • 2話:日本ダービー →1位アヤベ、2位トプロ、3位オペラオー
  • 3話:(練習のみ)
  • 4話:菊花賞 →1位トプロ、3位オペラオー、6位アヤベ

トプロは、皐月賞日本ダービーも外からさされて僅差で2位に甘んじているので、菊花賞の1位は悲願。勝負は水物である。特に日本ダービーでのトプロのコンディションは好調で、全力を出し切ったのに負けた悔しさ。人気があったので余計に期待に応えなければならないとプレッシャー(=自分自身)との戦いで、練習も気負い過ぎて悪循環となる。そんな中、トレーナーや商店街ファンとの交流の中、勝ちだけに拘るのではなく、自分のスタイルを貫き、再び全力を出し切る方向に意識を戻してゆく。明るくて元気で真っすぐなトプロが個人的にも一番人気である。CV中村カンナさんの声質と芝居がトプロに非常にマッチしていて良かった。

アヤベは、死産してしまった双子の妹への贖罪の意識で勝負していた。右足の不調もその罪の報いとして受け入れて無理をして走っていた。日本ダービーを制したら妹への罪の報いになるかとおもいきや、自分一人だけ勝ちを喜んだとさらに罪の意識を深めさせる。しかし、菊花賞のレース中に、妹のためでなく自分のために走って、と妹からのお告げがあり右足の故障と自らかした呪いから解放される。史実ではこれが最後のレースだが、本作ではアヤベに対する救済があって良かった。

オペラオーは、故障からの復帰でがむしゃらにレースをこなしてきていたが、トプロやアヤベに比べてメンタルは健康で、自分の強さはライバルあっての強さである事を理解していた。 全体的に重くなりがちな空気を、芝居めいた台詞で明るい舞台に導いてくれた。

本作はやはり、前4話でコンパクトな作りにしたことの意味が大きいと思う。ギャグ要素などの賑やかしはその分減ったが、シリアスな勝負に賭ける厳しさ辛さ喜びを凝縮している点が良い。各キャラとも清々しさのある結末で、最後でウイニングライブで気持ち良く〆てくれた。

おわりに

一応、レビューの並びが私的ランキングの並びにもなっています。

今期は迷いましたが、推しの子がやっぱり凄いと思いました。「火曜サスペンス劇場」アニメという所はありますが、ネタの斬新さ、画面に釘付けにさせる脚本と演出の強さが良かった。何より、従来のアニメの文法を覆す、挑戦的な作風だった事を考慮すると、2023年春期の中で最も輝いていた作品だと思います。

スキローは、作り込みの精密度と私好みのテイストで、普段だったらトップになってた作品です。実際に、作品の完成度で言ったら推しの子よりもスキローが上だと思います。まぁ、この2強だったと言ってもいい。

変化球としては、このすば爆焔が緩くて楽しめました。リッチなアニメーションでなくても、こう若いからこその自由さを、なんとなく感じさせてくれました。最近は本当に高齢者向けアニメが多いので、たまにはこうした自由な作品があるといいです。